在庫率とは何か

2021年12月5日更新

在庫率とは「{棚卸資産(期末)/売上高}×100」で計算される指標で、法人企業統計調査などの経済指標として使われます。その意味するところは、×100を消すとわかりやすいのですが、期末時点の在庫がおおよそ何年で回転する可能性があるかを見ることができます。つまり、年間の売上に対して在庫を何年分持っているかを示す値に100を掛けたものです。統計では、在庫回転期間(棚卸資産回転期間)のほうがよく使われるかもしれません。

在庫回転期間を年で表したもの、とも言えます。景況判断等に使われることがありますが、在庫管理の実務ではおおざっぱすぎる指標であるため使うことはあまりありません。全業種で傾向を見たり、業種別や業界別にどのように影響を受けているのか他の経済指標との連動を考察する等の使われ方もします。

在庫回転期間そのものは本来在庫がすべて入れ替わるのにかかる月数や日数等を示す期間であるため、数字が小さいほど製品が売れ残ったり滞留したりせずに販売されているということを示しています。つまりより効率的な在庫運用がなされており、CCC(キャッシュコンバージョンサイクル)も短くなるので、仕入れてから販売するまでのサイクルが効率的になるということを意味します。

例えばここ5年間の金融業・保険業を除く全産業(製造業+非製造業)の在庫率は下表の通りです。月間に換算するとわかりやすいですが、在庫の回転に1か月はかかっていない、1カ月以上の在庫は持っていないということになります。

なお、在庫率と在庫回転期間を換算するための計算方法は下記となります。

  • 在庫回転期間(年)=在庫率 ÷ 100
  • 在庫回転期間(月)=在庫回転期間(年)×12
 
在庫率と在庫回転期間の対応一覧表
年度 在庫率 在庫回転期間(年) 在庫回転期間(月)
2015 7.6 0.076 0.912
2016 7.5 0.075 0.9
2017 7.7 0.077 0.924
2018 8.1 0.081 0.972
2019 8.1 0.081 0.972

全業種合算しているので傾向が見えづらいですが、2018年、2019年は在庫が滞留してきている傾向が見て取れます。在庫をどれくらい持つかというのは企業規模によっても異なる傾向があり、詳しくは在庫回転期間の業種別目安と計算方法で、全業種と規模によって分類した表をご参照ください。

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