在庫金利の考え方と計算方法とは

2021年11月21日更新

在庫金利とは在庫を保有することで発生するコストを「金利」に置き換えた理論上の指標を意味しています。ただし「在庫保有にかかるコストすべて」と定義している場合と「在庫購入から現金化までに必要な資金調達の金利」と定義している場合の2つの考え方があります。以下にその内容と計算方法をご紹介していきます。

ただこの指標は会社によりかなり温度差があり、在庫の金利つまり在庫コストを、単に「倉庫の場所代・管理費」と「在庫購入に必要な資金を借入する際の金利」と捉えている会社もあれば、在庫にかかるコストをトータルに試算して盛り込んだ金利としている会社もあるということになります。ここでは資金調達にかかる金利として在庫金利という用語を使う場合と、在庫コスト全体(在庫保有にかかるコスト)を表わす場合とで使い分けて説明していきます。

在庫最適化や在庫低減、投資判断に必要な指標

在庫金利という考え方は、経営上、在庫が多いことを課題と捉えている企業では導入されていることがありますが、計算方法は各社で工夫されているため、原則は同じでもそもそも同列に比較できない難しさがあります。また経理部門が策定していたとしても、実際に在庫管理を行う生産管理や物流部門が知らないという事例もあります。

在庫は資産でもあるため、在庫を持つことでどれだけのコストが発生しているかというのはなかなか分かりにくいため、こうした指標を使うと以下のようなことに活用できます。

  • 在庫金額のうち、何%が在庫保有にかかるコストなのか比率で見ることができる。
  • 在庫コストを加味した利益の算出(本来、損益計算書における利益の概念には在庫コストは入ってこない)。
  • 製品1個あたりの売上のうち、在庫コストがどれくらいか見えるようになる(結果として在庫の持ち方をどう変えないと利益が増えないか可視化できる)。
  • 月末や期末の在庫金額だけでなく日々かかっている在庫コストのみえる化(毎月末慌てて在庫を絞り込めばそれでよいという考え方が蔓延しているケースが多いが、実は日々在庫コストはかかっている)。
  • 複数の生産場所からどこで生産するか検討する際、利益の比較を行うがその時に生産場所(調達先)ごとの「在庫金利」が出ていれば、利益率(売上総利益率)にこれら在庫金利を加味してどこで生産するのが(どこから購入するのが)最も利益に貢献できるか比較検証できる。
  • 調達部門や営業部門をはじめ、「利益」を評価の軸に動く部署は、在庫増加や在庫廃却のコストを加味する必要がないため、在庫にしわ寄せが行きがち。例えば、より安く仕入れることができるのであれば在庫が増えても致し方ない、在庫が増える前提であっても、安く仕入れられるほうを優先する。結果として、利益を上げるために行っていたことが、在庫の大量廃却によって損失が発生。ただし損失を見る部署は往々にしてこれら利益を見ている部署ではなく、在庫管理を行う生産管理や物流部門となるため、因果関係が見えず(単に在庫管理が下手とされてしまう)、損失が出続ける。

サプライチェーンにおける在庫コストが明確に

計算方法にもよりますが、在庫が陳腐化したりモデルチェンジや型落ちで値下げ必須になったり、売れなくなって在庫の価値を下げる評価減となったり損失として計上する評価損となるコストや常時大量在庫が運用に必要で需要変動に伴い在庫廃却となるコストも盛り込むと、力技にはなりますが、本来同じ土俵での比較が難しい「在庫」と「利益」を並べて検討することができます。

そもそもの出発点は、「在庫が増えても利益にたいして影響しない」という誤った考えが蔓延しており、在庫と利益が同じ土俵で議論が困難な科目であることが一因です。

たしかに在庫増の影響は分かりにくく、まとめて購入すれば単価が下がって購入金額が10%安くなるということと引き換えに、在庫が1000万円増えることのどちらが会社にとって利益になるか、という問いに即答できるかという問題です。この辺り、在庫金利の考え方を導入していない会社の場合、回答できません。このような片方をとると片方が成り立たなくなるトレードオフの状況では、社内政治的な力関係で、在庫低減を優先するか、原価低減を優先するかが決められることが往々にしてあります。

在庫は棚卸資産のうち、流動資産に分類されるので現金化するのに時間がかからないものとなっていますが、実情はそうでもありません。在庫のうち一定割合は販売されることなく廃却されたり、ほとんど売れなくなって大量に倉庫に膠着しているという事例は珍しくないと思います。さらにいえば、在庫が売れれば売掛金となり、これが実際に入金されるまでは金利がかかり続けるという点にも留意が必要です。

在庫金利=在庫コストの概念無しでサプライチェーンを構築・運用すると、例えば以下のようなことが繰り返し発生します。

  • なるべく原価を下げるため、まとめて原材料は発注する。あるいは輸入品であるなら輸送費を下げるため需要に関係なく1回の発注で必ず海上コンテナに満載して発注する。
  • あるいは製品の浮き沈みが激しく在庫がすぐに使えなくなるため、一定数は使えないことを見越して在庫管理している。
  • 必要な在庫数ではなく、上記の基準で発注を繰り返すと在庫購入金額(現金が減る、借入金が増える)や在庫保管費用が増える。
  • 在庫が大幅に増えて、キャッシュフローが悪くなる。
  • 在庫が消化しきれずに売れなくなり、評価減・評価損扱いで、損失に計上。その後、廃却。

発端は、原価を下げるためのまとめ発注であったり、そもそも大量に在庫を持たないと運用できない製品であったにもかかわらず、最終的には在庫管理部門の責任で廃却となります。問題は、この費用が損益計算書では「製品の原価」には入らないので、実際には製品1個当たりの売上の中に含まれている在庫コストが見えません。

財務諸表でも在庫はB/S、利益はP/Lといった具合に割れてしまっていますが、在庫金利=在庫コストを利益と同じ土俵で検討することは在庫の最適化・在庫の低減を進めてROAを高めるには必要不可欠なこととも言えます。

在庫金利=在庫コストの中身

在庫にかかるコストは大まかに言えば下記のようになります。

  • 1.在庫を購入する資金を調達するコスト
  • 2.倉庫を借りて運用するコスト(外部契約倉庫:保管費、入出庫費用 倉庫からの輸送費 自社倉庫:光熱費・建設費の償却費、運用にかかる人件費、横持ち費用)
  • 3.在庫価値の低下(評価減、評価損)のコスト:紛失、品質劣化、返品、販売見込みがなくなる、販売価格の低下、廃却

1.在庫を購入する資金を調達するコスト

これにはいくつかの方法があり、銀行の借入などの負債資本コストを使って計算する方法、株式調達による資金調達のコストを使って計算する方法、その両方を加重平均する方法などがあります。

どれを選ぶかでかなり差が出てきます。銀行の長期借入金利は1%代になりますが、例えば株式調達による資金調達のみという場合でROAの目標値をそのまま使った場合、例えば3%目標であれば、こちらのほうが断然コストがかかることになります。

この両者の間をとる形となる加重平均資本コスト(WACC=Weighted Average Cost of Capital) という方法についてご紹介します。これは資金調達にかかるコストがいくらかを計算する手法のうち、銀行からの借入にかかるコストと、株式調達によって資金調達するコストの割合を加重平均して出されるものです。

この考え方の底流にあるのは在庫の購入にあてる資金の出所が必ずしも銀行からの借入だけではないという点です。株式調達によるものも相当数あるので、両方をバランスよく平均して使いましょうという発想です。

WACCの計算式

  • {負債 /(負債+株式時価総額)}×負債コスト×(1−税率)+{株式時価総額/(負債+株式時価総額)}×株主資本コスト

この計算式の意味は、その会社の資金調達のうち借入が何%で、株主からのものが何%になっているかによって実質的に必要となる「金利」を加重平均して割り出すというものです。

例えば、資金調達の60%を負債(借入)、40%を株主資本に依存している企業があるとした場合、この企業の(平均)負債コストが5%(銀行・社債等の借入金利)、株主資本コストが1.9%、法人税率が23%とすると、WACCは上記の計算式にあてはめると以下となります。

  • WACC=60%×5%×(1−0.23)+40%×1.9%=2.56
負債コストと株主資本コストの意味
負債コスト 債権者より調達した負債に対するコストのことであるため、社債や銀行等からの借入のコストのことです。借入金利等をあてはめて計算することになります。
株主資本コスト 企業が株式を発行して調達する資金(=株主資本金)にかかるコストのことで、CAPM(Capital Asset Pricing Model)と呼ばれる計算方法が使われます。方法には諸説あるため、これといって唯一無二の方法があるわけではない為、各社統一されていないのが難しい点です。

株主資本コストの計算式の例を挙げると下記となります。

  • 株主資本コスト(rE)=リスクフリー・レート(R(f))+ベータ(β)×マーケット・リスク・プレミアム(R(p))
株主資本コストの計算項目の意味
リスクフリー・レート(R(f)) 10年物国債利回りのレートです。
ベータ(β) TOPIXなどに対する感応度のことです。いいかえると、対象となる会社(自分の会社なら自社)が証券市場全体の動きに対してどの程度敏感に反応するかです。この値は証券会社等で公開されています。
マーケット・リスク・プレミアム TOPIX等から国債利回り等を差し引いたもので、国債よりどれくらい高い利回りが出せるかを示すものです。
株主資本コストの計算事例
0.084%+1.1 ×1.9%=2.174%(株主資本コスト)
  • 0.084%=国債10年利回り
  • 1.1 = β 各社によって異なる。証券会社等が公開。
  • 1.9%=1.9(TOPIX平均利回り:毎月変動)−0.084≒1.9

WACCによる率は、企業が最低上げなければならない期待収益率と同じ意味を持ちます。

面倒な場合、単に日銀の短期プライムレートを使って計算する方法もありますが、企業は銀行からの借入のみで資金を調達しているわけではない為、こうした計算方法が用いられます。

在庫金額に、ここで仮に算出した在庫金利(資金調達部分だけの意味)をかけると、在庫を購入するのに必要となる資金調達に必要な金利を出すことができます。

例えば、1つ500円で仕入れる在庫品が1万個あり、売上債権(売掛金)のうち仕入相当額が100万円分あるとしたら500万円+100万円に金利が必要となるため、600万×2.56%=15.4万円が在庫購入にあてる資金を調達にするのに必要な金額となります。

これを日割りにするため365で割ると、≒422円/日となります。つまりこの製品の在庫と販売をこの水準で維持した場合、日当たり422円、資金調達にかかる金利だけでかかっているということになります。ここに、後述する倉庫管理・運用・保管費用と、在庫価値の低下費用が加算されて「在庫コスト」になっていきます。

在庫を保有するコストは在庫金額に対してどれくらいの比率になるかを出したほうが、個品でも全体でも使いやすいので、そうした場合はWACCで出した%をそのまま使います。後述する2と3で出した%に加算して最終的な在庫コスト(在庫金額のうち何%が在庫保有のコストになるか)を割り出すことができます。

注意すべきはこれはあくまで理論上の金利ということです。

2.倉庫を借りて運用するコスト

これは自社倉庫と外部倉庫(倉庫業者、物流業者)と契約する場合とで少々中身が異なります。最終的に在庫金額に対して、在庫の管理費・運用費の割合がどれくらいかを割り出すことになります。横持ち費用を物流費に入れて在庫保有コストから除外するかどうかは悩ましいところです。一般には物流費は別で集計するので、在庫移動にかかるものを別集計するのはなかなか骨が折れる作業にはなります。

自社倉庫と外部倉庫のコスト
自社倉庫 外部倉庫
  • 光熱費
  • 建設費の減価償却
  • 人件費(現場、事務)
  • 税金
  • 保険料
  • 運用に必要な費用の借入金利
  • 保管料(パレット単位、面積など)
  • 入出庫料(パレット単位、箱単位、時間単位など))
  • 他在庫管理に伴う特殊費用(在庫表作成、棚卸など)

外部倉庫の場合は、倉庫のスペースを丸ごと借りてその運用コストを都度支払うパターンや、パレット単位で保管料や入出庫、オプションの作業費を支払うパターンなど物流会社・倉庫会社によって異なります。

在庫保有コスト全体を計算する際には、在庫金額に対する割合で見たほうが、上述の在庫金利とも合算できます。

在庫金額 ÷ 倉庫のすべての運用コスト で計算できますので、例えば30億円の在庫があり、その運用に自社倉庫+外部倉庫の費用のすべてを合算すると年1億円ということであれば、3.3%が管理費率ということになります。

個々の製品ごとにかかっている管理コストは以下のように計算できるため、取引先との個品ごとの補償等の際はこうした数字が使われることもあります。いったん上記のように3.3%と出してしまえば、例えば在庫1個分であっても、その3.3%が管理費であるということがすぐに計算できますので便利です。

個品ごとに計算する場合、仮に1箱20個入りの製品があったと、1パレット45箱なら、1パレットで900個となります。

1パレット1か月で2500円の保管料と、入出庫に1回500円月に4回入庫と出庫がそれぞれあるとした場合、2500円+500円×8回=6500円/パレットとなります。1個あたりに換算した年間のコストは、6500円÷900円×12か月=86.67円/個となります。

ここで注意が必要なのは、不動在庫化したものは多くの会社が通常出荷のあるものとは倉庫や場所を分けて管理する傾向があるということです。つまり、倉庫を移動させるので、出荷が減ってしまった製品は、在庫管理費以外にこうした余分な輸送費がかかるということになります。いわゆる在庫の横持ちが発生するということになります。

3.在庫価値の低下(評価減、評価損)のコスト

上述した通り、在庫は量産が打ち切りとなりモデルチェンジ等で補修用途だけになったり、きわめて少ない個数しか売れなくなったり、価格が大幅に下がったりした場合、評価減や評価損の処理をする必要が出てきます。

一般に、棚卸資産廃却損、棚卸資産評価損といった科目で計上されることになります。

例えば1000万円の価値のある在庫が、100万円に下がるというようなことや、販売見込みがまったくなくなったので在庫を1000万円分廃却するというようなことが実際に発生します。

在庫を廃却や評価減するのは以下の3パターンあるとされます。

  • 物理的な劣化
  • 経済的な劣化
  • 市場の需給変化

物理的な劣化とは、傷・汚れ・錆・品質劣化など、在庫品の保管中に何らかの品質低下が起きて本来の用途で使うことができなくなった物理的欠陥のことです。基本、廃却することになります。

経済的な劣化とは、上記の物理的な劣化や欠損がなくても、モデルチェンジや流行遅れ、新製品の販売開始による型落ちなどによって、在庫の価値が経済的に陳腐化して価値が低下することを指しています。つまり、従来の価格では売れないので価値を下げることになります。

市場の需給変化に起因するというのは、いわゆる販売見込みが打ち切り等により無くなったり、補修専用品になったりといったことを指しています。

このコストの見積もり方にはいくつかの方法がありますが、例えば、不動在庫化した金額・在庫が年間でどれくらいあるか、品質劣化や販売見込みがなくなったこと等で廃棄した金額がどれくらいかといったものを合計し、過去の実績と照らし合わせ、年平均の棚卸資産廃却損、棚卸資産評価損を割り出す、という方法があります。この時の処分コストも合算すれば、より精度の高いものになります。

計算例として、30億円の在庫があるとして毎年3億円の不動在庫が発生し、1億円の在庫を廃却している場合(処理コスト含む)、在庫価値の低下のコストは年4億円ということになります。在庫金額に対する割合に変換すると13.3%になります。ここで重要となるのは「不動在庫」の定義です。どのような場合に「評価損」「評価減」とするのか社内でルールを決めておく必要があり、このルール如何でかなり在庫コストが変わります。6か月間流動がなかったら不動在庫となるのか、1年間なのかによって対象となる製品の数が大きく変わるためです。

在庫保有コストの合計を在庫金額の比率で見る

以上の1、2、3事例から在庫保有コストのすべてを合算すると、次の式が成り立ちます。上記の各項でご紹介した例でそのまま計算してみます。

  • 在庫金利(資金調達の金利、WACC使用)+在庫金額に対する管理費率+不動在庫・廃却在庫の比率 = 在庫保有コスト
  • 2.56% + 3.3% + 13.3% = 19.16%

この例でいえば、30億の在庫があったとして、その保有コストは19.16%になるため、5.7億円ということになります。

このように比率で出しておくと、個品や品目・品番単位での判断も容易です。

例えば、ある製品で100万円の在庫を持つ場合、その保有コストは19.16%をかけて約19万円ということになります。

この在庫コストは品目別や輸入品・国内品、生産工場別に出して比較検討することも可能です。例えば、原価が安くなる自社の海外工場で作り日本側が輸入したほうが得なのか、原価は高いが国内工場で作ったほうが得なのかということも計算できます。本来、在庫コストはパーセントの形では見えませんが、このように計算すれば比較が可能となります。

輸入品の在庫コストは日本側では25%で、これが国内で生産した場合は15%となる場合、差分の10%を超える利益が輸入品で出ないようであれば国内で生産したほうが利益が高くなるということになります。

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