CCCの計算式とは
CCCとはキャッシュコンバージョンサイクルのことで、この計算式は「在庫回転期間+売上債権回転期間−仕入債務回転期間」となります。大まかに言うと、仕入れてから客先へ販売し現金を回収するまでにかかる日数を示しています。日数が短いほど会社の運転資金が少なくて済む、つまり資金繰りがよい効率のよい経営をしていることになります。この計算方法について以下に詳しくみていきます。CCCを向上させる活動は、各社でどの程度取り組むかは方針の違いもあり温度差はあるものの、CR(コスト低減)と並ぶ柱の一つと言えます。
- CCCの計算式とは|目次
単位はあくまで「日」
まずCCCの単位は日です。CCC=60となった場合は、60日間ということになります。この計算では「仕入れてから販売されるまでにかかる日数」と「販売してから入金されるまでの日数」を足し、その合計から「仕入れてから支払いするまでの日数」を引いています。
- CCC(日数)=在庫回転期間+売上債権回転期間−仕入債務回転期間
計算例:
- 商品を仕入れた。支払いは当月末締めの翌月末払いで、入荷して30日後に銀行振り込みすることになっている。
- 商品は入荷してから20日間は在庫として倉庫で保管されたのち、販売された。
- 販売されてから60日後に銀行振り込みで客先より代金を受け取った。
上記の場合、計算式に当てはめると次のようになります。
- CCC(日数)=在庫回転期間(20日)+売上債権回転期間(60日)−仕入債務回転期間(30日)=50日
日数が少ないほど資金が高回転・高効率ということになり、仕入れたものがすぐに売れてすぐに現金の入金があるということになりますが、中には、CCCがマイナスになるということもあります。これは仕入れる前や製造する前からすでに販売しているということです。客先が入金してから仕入れに着手、あるいは製造に着手ということができているということで、極論すると元手がなくても資金を回すことができます。これができるのは限られた業態や販売チャネルとはいえ、同じ業種でも実現できる会社とそうではない会社に分かれてきます。
CCCの計算に必要な各項目の日数の出し方
以下に、実際の計算に必要な項目を決算書などを参考に計算する方法をご紹介します。
在庫回転期間
在庫回転期間は棚卸回転期間ともいいます。
- 計算式:
- (棚卸資産÷売上原価)×365=在庫回転期間(日数)
- 今運用している在庫が何日分相当あるかを示したものです。言い換えると、在庫が何日でいったん捌けて入れ替わるかということでもあります。
- 数字が低いほど、CCCも下がり、より効率的な資金繰りになりますので、回転期間をなるべく低く抑えることが在庫管理活動のポイントになります。
売上債権回転期間
自社が販売した製品や商品が、実際に売れてからお客様から入金されるまでの期間ということになります。より具体的に言えば、自社で売上計上されてから、顧客からその金額を回収するまでにかかる日数ということになります。
この数字も低いほどに、売れてから支払いされるまでの期間が短くすむので、効率的な経営をしているということになります。売れてから入金までが短いとそれだけ会社の運営・維持に必要な資金も少なくてすみます。
売上計上は、出荷日で売上を上げることにしている会社であれば、客先からの注文に基づいて製品を出荷した日になります。金額回収というのは、昨今は銀行振り込みなどの電信送金が主体ですが、手形ということもあり得ます。
売上債権の意味するところは、売掛金と受取手形、割引手形のことになります。未収入金等の勘定科目を加算する場合もあります。さらに、前受金がある場合はそれらから差し引いたものが売上債権の総額ということになります。
- 計算式:
- (売上債権÷売上高)×365=売上債権回転期間(日数)
- 売上債権=受取手形+割引手形+売掛金−前受金
仕入債務回転期間
これは買入債務回転期間ともいいます。自社で販売するものやその製造等に使う原材料や部品含め、他社から購入したものについて、支払いまでにかかる日数のことを意味しています。この数字だけは上の2つと違い、数字が大きいほうが、自社の支払いに猶予があるということになるので、CCCが低くなり、経営効率に寄与することになります。
平たく言えば、仕入先に対しては、支払をなるべく遅くする、ということです。逆言うと、客先からの支払い条件が変更できなくとも、仕入先との取引で支払いを遅らせることができれば、CCCの日数は下がり、資金効率はよりよくなるということになります。
ただしこれは仕入先のCCCを悪化させることでもあり、下請法によってこうしたことに制限がかかる取引もあります。
- 計算方法
- (仕入債務÷売上原価)×365=仕入債務回転期間(日数)
- 仕入債務 = 支払手形+買掛金−前払金
仕入債務も売上債権と同様に、支払手形と買掛金を足したものですが、前払金がある場合はそれを差し引いておきます。
CCCとCRの競合問題
企業の収益改善を行う二大手法としては、CCC活動(よりキャッシュコンバージョンサイクルを短くしていく)と、CR活動(コスト低減、原価低減活動)があります。
在庫が絡む問題でこのCCCとCRの活動が競合してしまうことがあります。例えば、以下のようなケースです。
- 輸入を行っており、20ftコンテナで普段は輸入している。需要に合わせて、必要な分だけを海上輸送で購入する為、コンテナを満載にしないこともある。
- これをCR活動のため、40ftコンテナに海上コンテナの大きさを格上げし、輸送時にはコンテナを必ず満載にすると、製品1個あたりにかかる輸送費が大きく落ち、CRの効果が出る。
- ところがこれと引き換えに、在庫はかなり増加してしまい、現金化されるまでの期間が延び、CCCの日数が悪くなってしまう。
類似の問題は、リードタイムが長いが価格が安い仕入先から製品を購入する、あるいはまとめて購入すると値引きされるので必要在庫の何倍もの数量を一気に購入するといった際にも発生します。戦略的に購買を行い原価を下げるというのは一つの手法ではありますが、これをやるとCCCの側面からは悪影響しかありません。
こうしたとき、会社方針としてCRを優先するのか、CCCを優先するのか明確な方針がないと実務を行うメンバーは混乱してしまいます。
実はこの方針策定には、在庫のコストを把握することで簡便にできる可能性があります。「在庫金利の考え方と計算方法とは」で簡単にご紹介していますが、在庫のコストが製品の何パーセントを占めているか、在庫金額の何パーセントを占めているかが分かると、具体的なコスト削減効果が見えるCRと比較検証することができます。
例えば、製品価格のうち5%が在庫コストということが分かれば、それをCRが上回るかどうかを比較することができれば、CCCを優先すべきかCRを優先すべきかすぐにわかるという具合です。
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