在庫管理の定義

2021年11月27日更新

在庫管理の定義をJISでは「必要な資材を、必要なときに、必要な量を、必要な場所へ供給できるように、各種品目の在庫を好ましい水準に維持するための諸活動」としています。

このことから、この管理は「数量管理」がメインになることがうかがえますが、必要なときに必要なだけ供給できるようにということであれば、保管状態を気にして品質維持に努めることや、常に在庫の出し入れと記録が正しくなされて在庫数量が正しい状態で確認できる「現物管理」にかかわる業務の必要性も出てきます。

というのも、この好ましい水準は、目的にかなった適正な在庫ということになりますが、数量管理がメインになるにしても、錆の発生や転倒などで在庫を使えなくしてしまっては数量の水準を維持できませんので、こうした業務も範囲としては入ってきます。

さらにいえば、この適正在庫の水準を保つには、現物在庫が帳簿上の理論在庫と常に一致する、つまり在庫が合わないといったことが起きないことが前提です。「1000個あると思っていたら倉庫になかった」では必要なときに供給ができいませんので、こうした在庫を正しくカウント・記録する、つまり受け払いや入出庫の現物管理ができている必要があり、これらも業務の基盤としては必須のものとなります。

在庫管理における諸活動

JISの定義通りにとらえるのであれば、在庫管理の諸活動と業務内容は下表のようになります。

在庫管理の分野別の仕事
在庫数量の管理 現物在庫の管理
  • 品目ごとの基準在庫設定
  • 出荷予測数、予測分析、営業部門や客先から内示情報の収集
  • 在庫補充のための発注業務
  • 発注単位の見直しによる効率化
  • 在庫確認・金額集計・在庫報告
  • 在庫増減予測情報の物流部門・倉庫部門との共有
  • 在庫分析
  • 在庫低減活動
  • 在庫(膠着、不動)の廃却数検討
  • 棚卸(実地棚卸)
  • 入出庫業務(受け払い業務)事務作業
  • 入出庫業務(受け払い業務)リフト等での現物出し入れ
  • 在庫表作成
  • 置き場の設計・構築
  • パレタイズ・デパレタイズ
  • 梱包・開梱・詰め替え
  • 受入(受領確認)・伝票と現物の照合・検収(検品)
  • 荷材の調達(梱包業務がある場合)
  • 防錆対策などの保管上の品質対策・処理
  • 温度・湿度管理
  • 安全管理
  • 現物廃却業務
  • 異品混入・品違い出荷などの物流品質対策

安全在庫を決めたり、減った在庫を補充発注したりする在庫の数量にかかわる業務と、実際の入出庫作業や適切な状態での保管運用といった物流品質にもかかわる現物の在庫管理の二つの領域を総称して「在庫管理」となりますが、使用状況によっては前者の数量管理の部分だけが在庫管理の定義として採用されることもあります。

「在庫管理とはいったいどこまでの範囲なのか」という問題は同じ社内でも管轄部門が分かれることが多いので、論争や責任の擦り付け合いといった不毛なやり取りに発展することがあります。在庫が増えすぎて困るというような問題を、現物管理を行う部署に文句を言われても対処の使用がないのですが、組織が多くなるとそもそもどの部署がどの部分まで管轄し、どこが統括しているのかということが社内でも見えなくなっていることがあります。物流やロジスティックスの部門は名称からも在庫を扱っているだろうということで在庫低減の責任を押し付けられるという事例もあります。在庫品が運搬中に落下して使えなくなった、保管中に錆が出て使えなくなった、受け払いの記録が間違っており在庫数量があわない、といった問題であれば現物管理を行う部署に相談するのが正しい姿とも言えますが、売れない在庫が増えているといった問題は数量管理を行う部隊の仕事です。

部署により役割分担されているケース

より直接的に定義づけるとするなら以下のように在庫をめぐる仕事が2領域にまたがり、分離してしまっている点にも言及したうえで説明すべきかもしれません。

部署による在庫管理の役割の違い
実施部署 分野 仕事内容
生産管理 在庫の数量管理 必要な在庫の基準を決め過不足なく維持管理
物流 在庫の現物管理 品質の維持管理、数量を正しく把握管理
   

この両者の連携は不可分な関係にあり、ここがうまく協力できていないと在庫管理は成立しませんので、責任と権限がはっきりしない場合、まず社内での役割分担と協力体制を構築するのが先決となります。

また上表の例では、物流の部分では倉庫のマネジメントや納入便によるリードタイム短縮、倉庫内でのステーションダイヤ(どの納入便がいつ入ってきて何時か何時まで積み下ろしして倉庫を出発するか)、レーンの割り振りといった部分も間接的に在庫管理に影響してきます。いわば在庫を好ましい水準に維持するための土台になる部分です。

生産管理の部分では、工場や仕入先への発注と納入条件、ロット・リードタイムの短縮、出荷数量や需要予測の正確でタイムリーな入手という部分が隣接分野として大きく影響する業務です。

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