内示とは|発注や注文における内示情報を製造で活用

2021年5月4日更新

発注や注文における「内示」とは、確定注文ではないものの、あらかじめ直近の数カ月先の発注数量予測を仕入先へ伝える意味合いがあり、生産や調達にリードタイムがかかる部材の安定調達を実現するための手法の一つです。

自動車業界、自動車部品を製造する業界にとっては、原材料の調達から生産計画の立案、人員の手配、輸送便の本数に至るまで製造・出荷に関わるすべては「内示」に基づいて準備されるといえるほど重要な情報源となります。また、売り上げ予測の立案にも使われます。

サプライヤーは内示をもとに事前に製造している

業界では、完成車を生産している自動車メーカー(いわゆるブランドを持つカーメーカー)のことをOEMといいますが、このOEM各社から出される内示の数量をもとに各サプライヤーは生産準備を進めていき、実際の納入はOEMの発注に基づいて日々あるいは週間で行うという方法が一般的です。

ただし現実的には、出荷の当日に発注が飛んできてそこから生産したのでは間に合いませんので、内示に基づいてあらかじめ作っておくということになります。

内示の期間とタイミング

どの自動車メーカーも共通しているのは、3か月先の内示までは通常提供しているという点です。3カ月内示、あるいは三発内示と呼称されています。メーカーによっては4か月分の内示であったり、6か月分の内示を提供するところもあります。

例えば、当月が5月としたら、5月の終わりに、6月、7月、8月の各月での発注予測数となる内示情報が各社のシステム等から配信されることになります。この5月の終わり、というのは自動車メーカーごとに違い、月末から6稼働日前であったり、5稼働日前であったり、4稼働日前であったりとまちまちです。

支給先納入やTier1同士の取引は時期・数量がずれる

さらにいえば、多くのサプライヤーは自動車メーカーへ直接納入する取引だけでなく、有償支給取引扱いで、OEMから指定された別の部品メーカーへ納入するタイプの取引も活発に行われています。

この場合、自動車メーカーの車両生産計画(台数であらわされる実際の車の生産数)よりも当然前に納入せねばならず、内示は別のものになることが一般的です。また内示情報が出される日にちも、カーメーカーからの情報をもとに自分たちの生産計画を立案してから内示を出すことになるため、若干遅くなります。こうしたことから、納入先がボディメーカーなのか、パーツメーカーなのかによって分けて管理する必要があります。

また、内示は車両台数ベースで出されることもあれば、部品を製造しているサプライヤー向けに部品の個数単位で出されることもあります。1台の車両に4つ使用する部品であれば、車両計画数の4倍の部品を準備しておく必要がありますが、この計算を内示作成する側で行っている場合は、正味必要な部品の数に換算されています。

内示をこれだけ活用しているということは、裏を返せば内示情報抜きでは生産が困難になるということでもあります。というのも、大量生産を旨とする工場では材料や人員の手配もすぐに、というわけにはいきません。また部品を製造しているメーカーにしても複数の材料や部品をさらに別のメーカー・商社から供給を受けています。それらをさかのぼっていくとサプライチェーンはかなり長いものになり、「明日必要になったから納入よろしく」と言われても必要な材料すら調達することができなくなります。

受注から出荷までのリードタイムは製品の種類によりまちまちですが、おおもとの材料自体が例えば鉄鋼材料であった場合、所定のリートダイムが必ずかかり、これは在庫でもしない限り短縮不能です。

部品のサプライヤー各社は、内示情報の入手時期になると大忙しで仕入発注やその調整を行うことになります。長いものだと3か月以上先の内示情報をあらかじめ供給側に提示しておき、材料の確保を依頼する部材もあります。

内示の受信方法

自動車メーカーとそこへ直納するティア1と呼ばれる部品メーカーとの間は、FAXや紙ベースで注文や内示のやり取りをしていることは稀で、ほぼ電子的なやり取りとなります。具体的にはOEMが提供している各社専用の受注・内示システムを使っています。多くのティア1はこれらシステムからの情報を自社システムへ連携させる仕組みを持っています。というのも、形は若干違えど自社内の業務基幹システムに取り込み、それを使って受注や内示を自分たちのサプライヤーにも展開するための仕組みを持つためです。

部品点数が多すぎてすべてを手動にて受発注を行っていると業務が回らなくなるため、このようなシステムが導入されています。

内示の法的な効力

冒頭より内示に基づいて準備を進める、と述べた通りですが実際に内示通りに発注が入ることもあれば、内示と全く異なる数量になることもあります。内示には発注と同じ効果はなく、内示はあくまで内示であり、突然0になることもあれば、何倍にも増えることもあり得ます。法的には以下のようになります。

  • サプライヤー側に内示分の供給義務はない
  • 発注側も内示分を発注しなければならない義務はない

ただし下請法で保護される対象メーカーとの取引の場合は、内示分を準備していたにもかかわらず全く発注しないというのはグレーな部分があり、内示を発注に準じたものとして扱うことも多々あります。

内示ブレの問題|実際には内示と確定注文には差

内示と確定注文に差があることを「内示ブレ」「内示振れ」「内示確定差がある」と表現されますが、業界の慣習上、おおむね±20〜30%前後の内示―確定差はあまり大きな問題とはされず、誤差の範囲とみなされる傾向があります。

調達リードタイムの長いものや部材調達が困難、臨機応変な対応が難しい分野では20%の差異でもかなりの負担となりますが、おおむねどのOEMでもこのレベルだと大きな振れがあるとはみなされない傾向があります。

内示と確定の差が小さい、日々の発注数が平準化されている程度で見るのであれば、トヨタがダントツとなりますが、これは生産方式とその思想も大きく影響しますので、自動車メーカーがすべて同じように発注をかけるわけではないのが実情です。トヨタは発注をeかんばんを用いて行いますので、当日に納入するオーダーが当日入ってきますが、そのかわり内示と確定注文との差があまりありません。一方、ホンダであれば発注は2週間先のオーダーが1週間分まとめて確定で入ります。他、毎日確定注文が入るデイリーオーダータイプと、週間で入るウィークリータイプや、旬で手配や内示が入るタイプもあります。

内示の精度が期待できない場合、サプライヤー側では製品在庫や材料在庫を確保したり、生産(調達)リードタイムの短縮方法を検討したり、特便などを駆使して輸送リードタイム短縮といった方法で対応することになります。どのメーカーにも内示動向に詳しい専門スタッフがいますので、この製品が納入されるどこそこの工場は手配が乱高下する傾向があるといった情報をキャッチして対応していくことになります。

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