在庫におけるDOHの意味とは|DOHは英語で何の略語か

2022年1月23日更新

DoHは在庫管理の分野ではDays of Inventory on Handの略で英語で在庫回転期間(棚卸資産回転期間ともいいます)を日数で表したものを意味しています。直訳すると、手持ち在庫の日数、在庫日数ということになります。DoHが少ないと在庫の回転率が高いことと同じことを意味するので、経営上は少なければ少ないほどよい、ということになります。

ただし、遅延や欠品、緊急対応等がなければという前提の話です。適正な在庫日数を持つことは、サプライチェーンを安定させ、ひいては企業経営の改善にもつながります。業種別の在庫回転期間や企業規模によって日数にどのような違いがあるかについては在庫回転期間の業種別目安と計算方法にも詳細を掲載していますのでご参照ください。

計算方法

DoHの計算方法を英語で表記すると、下記となります。

Days of Inventory on Hand = Average Inventory for the year ÷(Cost of goods sold for the year ÷ 365)

【日本語訳】

在庫回転期間(日)=平均在庫金額 ÷(年間出荷金額÷365)

※年間出荷金額は売上原価を使用。

もっと簡便に、翌月や当月の出荷予測(売上予測)に対して何日分の在庫を持っているか、という使い方が現場では一般的です。例えば、当月10000個の出荷予測に対して、20日稼働で計算すると、10000÷20 = 日当たり500個必要となります。在庫が1000個あるなら、在庫日数は1000÷500=2日間という計算です。

絶対数で、この製品は1000個の在庫は必ず維持するというような持ち方もできますが、市場での需要が常に変動しているわけですから、それに対してリードタイムや変動率を加味して最低在庫として需要予測の何日分持っていれば欠品なくまわるという考え方が効率的な方法です。多くの業種業界で同様の考え方で適正在庫が設定され、その在庫レベルを維持するよう在庫管理担当は補充発注を行います。

この方法だと、例えば需要が1000個から20000個に増えても、設定した在庫日数が同じであれば持つべき在庫数も需要に連動して増加します。決まった値でしか在庫を持っていないと、変動に対しては応えるのが難しくなります。

適正在庫を維持管理するのに役立つ指標

在庫の増減は企業経営においては、顧客に対して納入品の欠品や遅延を防いで信用を維持するともに、販売の機会損失を減らす目的で持ちますが、一方で在庫が多すぎることで以下のような問題が発生します。

DoHの増加による影響
影響内容 詳細
会社のRoAが悪化する RoAはどれだけ少ない資本(資産)でどれだけ利益を生み出しているかを見る指標であり、同じ利益なら資産=在庫が増えてしまうと悪化する。
資金の流動性が悪化する 仕入れてから客先へ販売して入金があるまでをCCCで計算しますが、在庫が増えると出ていった現金が再び売り上げとなって手元に返ってくるのに時間がかかり、回転効率が悪くなることでより多くの資金が必要になります。
販管費の増加 倉庫の場所代や人員や工数といった管理コスト、物流コストが増加する
特別損失の増加 過多になった在庫がそのまま売れ残り処分する場合、特別損失で計上されることがある
純利益が減る 営業利益から特別損失を減じて計算する為、捨てる在庫が多いと減ってしまう。

このため、DoHといった指標を最小の在庫管理単位(SKU)で見ていき、どの品目の製品や材料が過多になっているか、過少になっているかという点を明らかにして適正な在庫を維持するということは、会社の利益にも直結してくる内容になってきます。

DoHを見ていない取引先とのトラブル

諸外国の在庫管理担当とやり取りして思うのは、同じ領域の職種であるため、意図していることは同じでもその文化や精度の面ではかなり違いがあるという点です。生産管理に属する日本の在庫管理担当の多くは、精度が高いのはあたりまえという風潮があり、在庫差異をはじめトラブルのある現場があっても、総じて設定した在庫基準を満たすよう、在庫回転期間や在庫日数の管理をしっかりやっていることが多いように見受けられます。

一方で海外企業の中でもレベルの高いところはあれど、総じて日本のような「細かさ」には少々不得手な文化やお国柄の地域があるのは事実で、かなりアバウトな在庫管理を行っていることがあります。こうした場合、輸出品であれば海外企業からの購入数が乱高下したり、緊急発注がきたり等でてんやわんやすることがある一方、輸入品であれば材料在庫が足りなくなったので遅延するというような連絡を突然もらうという事態もあります。

こうしたことに遭遇した場合、少し相手方の在庫に立ち入って問い合わせしてみるのも手です。グループ会社や自社がバイヤーの立場なら尚更言いやすいと思うので、一度DoHの設定方法や持ち方、補充方法や間隔について質問し問題があるようなら改善提案してみるのもよいでしょう。

DoH管理は日別推移で真価を発揮

実はDoHをしっかり管理している諸外国の企業でも、これを週単位や月単位で管理している場合があります。変動や受注のタイミング、補充のタイミング等が業界や業種で異なるので一概には言えませんが、在庫日数を管理する単位は間隔があくほど急変動や不測の事態に対応しづらくなります。

例えば在庫数と日数が週間でしかわからない在庫表を使用しているにもかかわらず、その倉庫からの出荷は週単位ではなく、毎日出荷があるというような場合、どこかの日で手配が増えた場合、在庫日数が削られていることに週の終わりまで気づきません。

確かに管理上は、週間や月間など間隔を広くとるほど手間や工数が減りますので楽ですが、途中の変動に耐えられなくなるので在庫を余計に持たざるを得なくなります。ただしその余計に持った在庫でもよほど需要予測に自信がない限り対応できなくなるリスクも常に抱えることになります。日別での在庫日数を管理する方法は、在庫管理でのエクセルテンプレートにも詳細を記載しています。

したがって、DoHを使った在庫管理の肝ともいえるのは、以下の2点となります。

  • 日別で管理する
  • 品番や型番など最小単位で管理する(SKUで管理する)

海外取引先のアバウトな在庫管理で困っている場合、DoHを日別で管理する方法を紹介するのも改善の一つの方法です。

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