プラスチックの種類と用途、物性について

2022年6月5日更新

プラスチックには大きく分けると熱可塑性のものと、熱硬化性のものがあります。平たく言えば、熱可塑性とは、熱を加えると溶けるタイプのもので、チョコレートにも例えられます。反対に、熱硬化性とは熱をかけることで硬くなるタイプのプラスチックで、言うなればクッキーのようなタイプです。

数多くの種類を持つプラスチックも、上記のいずれか二つに分類することが出来ます。

より専門的に見ると、以下のような違いがあります。

プラスチックの類型
種類 分子構造 特性
熱可塑性プラスチック 線状高分子、一次元高分子 分子構造は非結晶性のものと、結晶性のものがある。基本的に、紐のような形状をした構造。この紐の構造が規則正しく並んでいるのが結晶性のもので、熱可塑性の中でも耐熱性に比較的優れたプラスチック。加熱や冷却することで流動状態と固体状態を行き来する。
熱硬化性プラスチック 網状高分子、三次元高分子 立体網目状といわれる。加熱すると重合や架橋して高分子となって固化。熱による化学反応で硬化する。この状態から加熱しても流動状態には戻らない。硬化したあとは、耐熱性や耐薬品性に優れたものになる。

開発された当初、プラスチックは軽い素材ではありましたが、強度に難があり、現在ほどに使われている素材ではありませんでしたが、現在の多くの産業では必要不可欠な素材になっています。その一つの理由は、多種多様なプラスチック材料の中にフィラー(充填材)を入れることで、さらに機械的強度や導電性をはじめとする物性を変えることができるようになったからです。

したがってプラスチックの性質、物性を見る上では下記の点により左右されることに留意する必要があります。

  • モノマーの化学構造(高分子の重合度、分子の結合度にも影響。主としてどのような熱、化学反応を経ているか)
  • 添加されている物質の種類(フィラー、着色剤、光安定化剤、可塑剤など)

JISで規定されたプラスチック(樹脂)の記号一覧表

プラスチックの種類(記号)と用途の一覧

プラスチック記号、用途の一覧表
分類 プラスチック名称 記号 主な用途
熱可塑性プラスチック 非晶性 塩化ビニル樹脂 PVC パイプ、波板、電線、レガー、フィルム、重合材料
酢酸ビニル樹脂 PVAC 接着剤、塗料バインダー、紙加工剤、繊維仕上げ
ポリビニルアルコール PVAL 製紙加工、接着剤、バインダー、フィルム
ポリカーボネート PC 電気電子部品、医療・食品用部品、雑貨、フィルム
ポリビニルブチラール PVB 安全ガラス中間膜用、プリント配線用、接着剤
ポリスチレン PS 射出成形品、雑貨、弱電機器、共重合用、シート
ABS樹脂 ABS 電気器具、雑貨、車両、機械部品
ポリメタクリル酸メチル(メタクリル樹脂) PMMA シート、看板用、照明カバー、建材、共重合用機械部品、雑貨
ポリフェニレンオキシド(ノリル樹脂) PPO 自動車部品、耐熱性製品、電気電子部品、事務部品、給水部品
ポリウレタン PUR フォーム、自動車内装、機械部品、合成木材。硬いものと軟らかいものがある。
アイオノマー樹脂(サーリンA) ionomer IO 射出成形品、容器、パイプ
結晶性 セルロース系プラスチック - 塗料、フィルム、成形用
ポリエチレン(高密度) PE(HD) 射出成形材料、雑貨、工業部品、発泡材、パイプ、ブロー成形品
ポリエチレン(低密度) PE(LD) フィルム、塗料、酢酸ビニルとの共重合材料、積層品
ポリプロピレン PP 射出成形品、フィルム、袋、容器
ポリアミド(ナイロン) PA 機械部品、電気通信部品、輸送機械部品、事務機械・スポーツ用品
ポリアセタール(ポリオキシメチレン) POM 射出成形品、機械部品、しゅう動部材料、パイプ、シート、雑貨
ポリフェニレンサルファイド PPS 耐熱・耐薬品材料、しゅう動部材料
塩化ビニリデン樹脂 PVDC 繊維、ろ過布、網、フィルム、ラテックス
ポリエチレンテレフタレート PETP 射出成形、押出し成形、電線被覆、パイプ、発泡材
フッ素樹脂(四フッ化エチレン) PTFE 化学装置用部品、電気材料、しゅう動部品、塗装用、シール材
熱硬化性プラスチック フェノール樹脂(フィラーが木粉の場合) PF 電気機器、化粧板、一般電気絶縁材料、接着剤、シェルモールド
ユリア樹脂(フィラーがα−セルロースの場合) UF 接着剤、繊維加工、食器、機械部品、キャップ、雑貨
メラミン樹脂(フィラーがα−セルロースの場合) MF 化粧板、塗料、繊維加工、成形材料、紙加工
不飽和ポリエステル樹脂 UP FRP成形品、塗料、ボタン、化粧板、平波板、注型
ジアリルフタレート樹脂(フィラーがガラス繊維の場合 PDAP 化粧板、成形材料、積層品、変性用
エポキシ樹脂 EP 接着剤、塗料、電気絶縁材料、構造用材
ケイ素樹脂(フィラーがガラス繊維の場合) SI 電気・エレクトロニクス部品、コーティング材料
アルキド樹脂 ALK 塗料、難燃成形材料
ポリイミド PI 耐熱フィルム、ワニス、接着剤
ポリアミノビスマレイミド PABI しゅう動部材料、機械、電子部品
カゼイン樹脂 - 接着剤
フラン樹脂 - 耐食用ライニング、積層成形品
ウレタン樹脂 PUR フォーム

プラスチックの分類

汎用樹脂(熱可塑性)

汎用エンジニアリング樹脂(エンプラ、熱可塑性)

   

スーパーエンジニアリング樹脂(スーパーエンプラ)

その他(熱可塑性)

  • フッ素樹脂:上記のスーパーエンプラである「ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)」、「ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)」を参照。
  • 超高分子ポリエチレン(UHMWPE)
  • ポリメチルテルペン(PMP)
  • 熱可塑性エラストマー
  • 生分解性プラスチック
    • ポリ乳酸(PLA)
    • ポリブチレンサクシネート(PBS)
    • ポリカプロラクトン(PCL)
    • ポリグリコール酸(PGA)
    • ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)
  • ポリアクリロニトリル
  • 繊維素系プラスチック

熱硬化性樹脂

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