PEEK樹脂(ポリエーテルエーテルケトン)の物性と用途、特性について
PEEK樹脂は、正式名称をポリエーテルエーテルケトン樹脂といい、結晶性のプラスチックの一つで英語ではPolyether ether ketoneの表記となります。以下に耐熱温度や物性などの特徴を見ていきます。高コストであるという欠点があるため、用途についてはポイントを選んで使うなどの工夫が必要です。炭素繊維で強化したFRPとして使われるPEEK板は、軽く強度、耐熱に優れた素材であるため、軍事用途でも使用されます。一時は輸出貿易管理令で規制対象ともなっていました。ガラス繊維で強化すると300℃近い耐熱温度を発揮するといわれています。イギリスのICI社で1980年代に開発されたものです。
難燃性、耐熱性に優れたPEEK
PEEK樹脂は、プラスチックの中でも、耐熱性、強度に特に優れているスーパーエンプラ(SEP、スーパーエンジニアリングプラスチック)の一つです。
結晶性のプラスチックで、融点が334℃と高く耐熱温度に優れるだけでなく、機械的性質にも優れ、UL温度指数も240℃と高いパラメータを持ちます。熱安定性に優れ、高温での流動性もよいので射出成形にも適しているため、大量生産にも向きます。
薬品への耐性についても、濃硫酸、硝酸と一部の有機酸以外には優れた耐性を持つほか、耐熱水性にも優れます。
難燃剤を添加しなくとも、難燃性の材料であり、発煙もPESより少ないプラスチック材料です。
機械的性質については、耐摩擦、摺動特性にも優れ、トライボマテリアルとしても単体や複合体の形で使われることがあります。またPEEKのフィラーとして炭素繊維を添加した強化プラスチックが、航空機構造部材に検討されたことでも話題となりました。
引張強度では97から224MPaまで出ると言われています。
耐薬品と耐摩耗、耐熱性、機械的強度で突出した性能を持つスーパーエンプラで、ポリアミドイミドにも匹敵する素材です。
| 物理的性質 | 密度(g・cm^-3) | 1.3 | |
|---|---|---|---|
| 融点(℃) | 結晶性 | 334 | |
| 非晶性 | − | ||
| 透明度 | − | ||
| 吸水率(%)3mm、24h | − | ||
| 成形特性 | 成形温度範囲(℃) | − | |
| 成形圧力範囲(kgf・cm^-2) | − | ||
| 成形収縮率(%) | 4.7 | ||
| 機械的性質 | 引張強さ(kgf・mm^-2) | 100 | |
| 最大伸び率(%) | 60 | ||
| 圧縮強さ(破壊、降伏)(kgf・mm^-2) | − | ||
| 曲げ強さ(破壊、降伏)(kgf・mm^-2) | 170 | ||
| 引張弾性率(kgf・mm^-2) | − | ||
| 圧縮弾性率(kgf・mm^-2) | - | ||
| 曲げ弾性率(kgf・mm^-2) | − | ||
| アイゾット衝撃値(kgf・cm・cm^-1) | − | ||
| 硬度(硬さ) | ロックウェル | − | |
| ショア | - | ||
| 熱的性質 | 熱伝導率(10^-4cal・s^-1cm^-2)(K・cm^-1)^-1 | − | |
| 比熱(cal・K^-1g^-1) | − | ||
| 線熱膨張率(10^-5K^-1) | 7 | ||
| 熱変形温度(℃) 18.6kgf・cm^-2 4.6kgf・cm^-2  | 
156 | ||
| 電気的性質 | 体積抵抗率(Ω・cm)(23℃、50%RH相対湿度) | − | |
| 絶縁強さ(短時間法)(3.18mm)/kV・mm-1 | − | ||
| 比誘電率(εγ) | 60Hz | − | |
| MHz | − | ||
| 誘電正接(tanδ) | 60Hz | − | |
| MHz | − | ||
| 化学的性質、耐薬品性 | 燃焼性、速度(mm・min-1) | − | |
| 日光の影響 | − | ||
| 弱酸の影響 | − | ||
| 強酸の影響 | − | ||
| 弱アルカリの影響 | − | ||
| 強アルカリの影響 | − | ||
| 有機溶剤の影響 | − | ||
スポンサーリンク
>このページ「PEEK樹脂(ポリエーテルエーテルケトン)の物性と用途、特性について」の先頭へ
- 加工材料の性質と特徴(目次)へ戻る
 - 「プラスチックの種類と用途、物性について」へ戻る
 - プラスチック(樹脂)の種類と記号一覧表
 - プラスチックリサイクルマークの数字の意味と種類
 - 4大プラスチックとは
 - バイオプラスチックの種類と原料|デメリットや課題はどこにあるか
 - PFOAの使用と含有製品はいつから規制か|フライパンから繊維、撥水剤、泡消火剤まで
 - プラスチックの人体への影響|プラスチックは安全なのか
 - プラスチックの比重、密度の一覧表
 - プラスチックの融点、耐熱温度の一覧表
 - プラスチックの熱変形温度の一覧表
 - プラスチックの難燃性|UL規格と酸素指数から見る難燃性の度合い
 - プラスチックの引張強さの一覧表
 - プラスチックの比熱の一覧表
 - プラスチックの熱膨張係数、熱膨張率の一覧
 - プラスチックの熱伝導率の一覧
 - アロイ化とは
 - 熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の違い
 - フェノール樹脂(PF)
 - ユリア樹脂(UF)
 - メラミン樹脂(MF)
 - 不飽和ポリエステル樹脂(UP)
 - ポリウレタン(PU)
 - ジアリルフタレート樹脂(PDAP)、アリル樹脂
 - シリコン樹脂(SI)
 - アルキド樹脂
 - エポキシ樹脂(EP)
 - フラン樹脂
 - ナイロン6(PA6):ポリアミド(PA)の一種
 - ナイロン66(PA66):ポリアミド(PA)の一種
 - ナイロン12(PA12):ポリアミド(PA)の一種
 - ポリアミドイミド
 - ポリアセタール(POM)
 - ポリカーボネート(PC)
 - 変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)
 - ポリブチレンテレフタラート(PBT)
 - GF強化ポリエチレンテレフタラート(GF-PET)
 - 超高分子量ポリエチレン(UHPE)
 - ポリフェニレンスルフィド(PPS)
 - ポリイミド(PI)
 - ポリエーテルイミド(PEI)
 - ポリアリレート(PAR)
 - ポリスルホン(PSF)
 - ポリエーテルスルホン(PES)
 - ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)
 - 液晶ポリマー(LCP)
 - ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、いわゆるフッ素樹脂
 - ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、いわゆるフッ素樹脂
 - ポリエチレン(PE)
 - ポリプロピレン(PP)
 - ポリスチレン(PS)
 - アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS樹脂)
 - アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)
 - ポリ塩化ビニル(PVC)
 - メタクリル樹脂(PMMA)
 - ポリエチレンテレフタラート(PET)
 - ポリビニルアルコール(PVA)
 - 酢酸セルロース(CA)
 - プロピオン酸セルロース(CP)
 - 硝酸セルロース(CN)
 - ポリ乳酸(PLA)
 - フラン-ホルムアルデヒド樹脂(FF)
 - エチルセルロース(EC)
 - フェノール-ホルムアルデヒド樹脂(フェノール樹脂)(PF)
 - ポリスルホン、ポリスルフォン(PSU)
 - ポリ塩化ビニリデン(PVDC)
 - ポリフッ化ビニリデン(PVDF)
 - アイオノマー樹脂
 - FRP(繊維強化プラスチック)
 - 炭素繊維メーカーの一覧
 - プラスチックの黄ばみ除去について