ビニールはウイルスを透過するか

2021年1月31日更新

ビニールは果たしてウイルスを透過させるのでしょうか。穴がなければ一見、水を通しませんが、ミクロの世界で見ていくと水蒸気は通しますし、空気も通す。また「におい」も通します。いずれも細かい粒子、分子レベルの話ですが、ウイルスや細菌も非常に小さいものであり、ナノレベルの大きさになるため、ビニールを透過してしまうようにも見えます。水蒸気や酸素の直径と、ウイルスや細菌の大きさを比較してみる必要があります。

ビニールとは各種プラスチックで作られた透明フィルムであり、それを袋状・シート状などに加工したものの総称ですが、そのほとんどは空気(酸素や窒素など)を通し、水蒸気も通します。では細菌よりもさらに小さいナノレベルのウイルスは透過するのでしょうか。結論からいえば、ビニールが破れていたり穴があいていない限りウイルスを通すことはありません。分子レベルの空気や水蒸気は通しても、ウイルスが透過できないその理由を見ていきます。ただしビニールに付着した微生物は、抗菌加工でもされていない限り、しばらくの期間生存していますので、触れないよう注意は必要です。

ビニールにも様々な種類|通しにくさは種類によって違う

ビニール、つまりプラスチックフィルムは身近なところでは買い物の際の持ち運び用からゴミ袋として、昨今は職場でウイルス除けの衝立てとして、あるいは食品や製品を梱包するための「包装材」として、用途によっては極限まで酸素をはじめとする各種のガス透過度を少なくしたい、透過しないようにしたい、あるいは湿気らないようにしたい、水蒸気を通さないようにしたいというニーズに応えてこれらに近づける素材が開発されています。

細菌やカビなどの微生物はその増殖に水分を必要とすることから、これら生物が必要とする最低限の水分となる「最低水分活性=Aw」以下になるよう包装を工夫するよう設計がなされているものもあり、食品の乾燥状態を保って細菌の増殖を防ぐこともできます。

ビニールは穴があいていない限り、一見すると水も水蒸気も通さず、空気も通さないのではと考えられがちですが、完全に口をヒートシール等で溶着して密閉状態を保っていたはずの袋の中から空気が抜けてしまっている、あるいは湿気が入ってしまっている、という経験はないでしょうか。

ビニールが空気や水蒸気を透過してしまう理由

空気を通し、水蒸気も通すのは、ビニールには直径1nmに満たない極微細な孔(あな)が無数にできているためです。これはプラスチックが高分子からできているため、高分子材料が作られる際の熱運動により避けられない宿命的なものです。

とはいえ、1nmの「あな」というとイメージが付きにくいですが、その1000倍あるいは5000倍の大きさである1000nm〜5000nmの孔であっても、水を通すことはできません。どのような小さな水滴でもこれよりも大きなサイズを持っているためです。

気体や水蒸気であれば、直径が0.3〜0.5nmとなるため透過することができます。ただこれだけ小さい穴だと、ふるいにかけるように素通りという具合には透過していかず、溶解と拡散現象がビニール表面で生じて透過します。

例えば気体である酸素の例をとれば、酸素がまずビニール表面について内部に収着して凝縮されていきます。凝縮された酸素分子は、濃度勾配を利用してビニールを構成する薄いフィルムの内部に拡散していき、反対側から蒸発、脱着していくという仕組みです。

したがって、薄いビニールほど通しやすくなりますが、通す物質の大きさ以外の要素も関係してきます。

また、この通しやすさはビニールの素材、つまりプラスチックフィルムの種類によっても異なります。

ビニールの種類ごとでの水蒸気、気体の通しにくさ

完全遮断をしたいのであれば、アルミ箔などの金属箔やガラスなどが気体も水蒸気も完全に通しませんが、これでは中身を見ることができません。透明である、単一の素材である、という条件をつけての空気や水蒸気の遮断性能の高いものは、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)となります。これは古くからサランラップの素材としてよく知られています。

包装用に開発された延伸ポリプロピレン(OPP)にこのPVDCを1μmほどコーティングしたKコートフィルムと呼ばれる透明フィルムがありますが、こちらも気体を通しにくい(ガスバリア性能が高い)、水蒸気と通しにくいという性能を持ちます。

参考までに下表がその透過度の一覧です。各項目の数字が大きいほどその物質をより多く通すということになります。よくいわれるビニール袋というのは、ポリエチレンが使われているケースが多いといえます。

プラスチックフィルムの水蒸気透過度、酸素、窒素、二酸化炭素等のガス透過度の一覧
種類 記号 ガス透過度(ml/m2・d・MPa)
20℃、65%RH環境下
水蒸気透過度
(g/m2・d)
二酸化炭素
(CO2
酸素
(O2
窒素
(N2
低密度ポリエチレン LDPE 185000 46000 14000 20
高密度ポリエチレン HDPE 30000 6000 2200 10
無延伸ポリプロピレン CPP 38000 8600 2000 11
延伸ポリプロピレン OPP 16800 5500 1000 6
ポリエチレンテレフタレート PET 4200 600 250 27
無延伸ナイロン CNy 2530 600 160 300
延伸ナイロン ONy 790 200 60 145
延伸ポリスチレン OPS 24000 50000 8000 160
ポリカーボネート PC 12250 2000 350 80
ポリ塩化ビニル(硬質) PVC 4420 1500 560 40
ポリ塩化ビニリデン PVDC 700 <150 22 1.5から5
ポリビニルアルコール PVA 100 70 - 大きい
エチレンビニルアルコール共重合体 EVOH - 20 - 50
Kコート品(OPP) KOP 150 50から100 15 4から5
普通セロハン PT - 100から10000 - 大きい
防湿セロハン Kセロ - 200 - 10

ビニールはウイルスをなぜ通さないか

以上からビニールにあいている小さな無数の孔は1nmにも満たない大きさであるため、ウイルスがこれより小さくなければ透過の心配はないということになります。空気や水蒸気は通しても、ウイルスは通さないのはこれが理由です。

もっともビニールは空気はわずかに通しても人が呼吸するのに必要な量は当然通しませんので、ウイルス除けに使う場合は、衝立のようにして使うか、かぶる場合は呼吸の孔を別途設けなくてはならず、そこからの侵入は防げません。

代表的なウイルスの直径は下表の通りです。最少の大きさをもつパルボウイルスでも20nmはあります。

ウイルスの直径の大きさの例
ウイルスの種類 直径
インフルエンザウイルス 直径約100nm
パルボウイルス 直径約20〜25nm
コロナウイルス 直径約100nm
エボラ出血熱ウイルス 幅約80nm、長さ約800nm
アデノウイルス 直径約90〜100nm
ノロウイルス 直径約30〜40nm
 

ちなみに、PM2.5は直径は2.5μm(2500nm)以下、花粉は直径30μm(30000nm)前後、細菌はウイルスの10〜100倍近い大きさがありますので、いずれもビニールの孔(あな)を通ることはできません。酸素にしても水蒸気にしても、直径が1nm以下の粒子だからこそ、ビニールを透過するということです。

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