ガスバリア性のあるコーティングや包装フィルムの種類と比較

2020年9月13日更新

酸素や窒素、二酸化炭素などの気体全般に対するバリア性、すなわちガスバリア性は、ある種の包装材料にとっては重要な要素となり、様々な種類の包装用のプラスチックフィルムや金属製のバリアフィルム、そのフィルムへのコーティング材や蒸着フィルムが開発されてきています。

こうしたガスバリア性能をフィルムの選択の一つの指標として見た場合に、どのような性能を持つ包装材となるのか、その種類と性能比較について一覧にまとめていきます。

プラスチックフィルムにコーティングしたものが主流

近年は基材となるプラスチックフィルムに蒸着などの方法で別のガス遮断性能の高いコーティング(塗工)を施したものが多く、目的に応じて様々な遮断性能が実現できることから、多くの種類・組み合わせのものが上市されています。

食品や医薬品、あるいは工業製品の中にも酸素を遮断したい、あるいは特定の気体と製品を接触させないようにしたい、内部に不活性ガスのような充填したガスが漏れないような包装にしたいという需要はかなり存在します。また最近増えている緩衝材も、プラスチックフィルム状の中にガスが充填されたものです。

例えば酸素であれば、水蒸気とともに錆の要因や酸化、変色、成分や風味の劣化、微生物が生育しやすくなる、といった種々の品質劣化を引き起こします。食品であれば、賞味期限や品質保持期限はいかに酸素から遠ざけるかという点でもあるため、包装材料の性能も保持期限に影響してきます。

逆に、青果物のように鮮度を維持するために酸素や水蒸気を適度に通すことが求められる用途もあります。

包装フィルムを気体、ガスが透過してしまう理由

そもそもフィルムがなぜ気体を通してしまうのでしょうか。透明なビニール袋をとってみても、空気を入れて口を縛ってしまえば、一見空気が漏れず、口を熱などでシールして完全に密閉すれば空気はまったく漏れないように見えます。

気体がフィルムを透過してしまうのは、フィルムの表面に存在するきわめて小さな孔を介して、溶解と拡散現象が表面で発生するからと言われています。まず気体がフィルムの表面につくと、そのまま内部に収着、凝縮されます。気体は濃度勾配を利用し、それを駆動力としてフィルムの内部に拡散していきます。これが続くと気体が収着、凝縮されたフィルムの反対側から蒸発、脱着していくというメカニズムです。溶解と拡散によって透過していくため、素材が薄いほどにさらに通しやすくなります。

ポリマーであるプラスチックフィルムや樹脂フィルムには穴がある

ビニール製とも表現されるプラスチックフィルムはいくつか種類がありますが、いずれもポリマーの熱運動で、直径1nmにも満たない極小の孔ができてしまいます。

一般に、1μmや5μmの孔では液体としての水、つまり水滴を通すことはできませんが、気体や水蒸気の大きさが0.3nmから0.5nm程度であるため、1nm以下であっても微細な孔があれば、この溶解と拡散の原理で透過してしまいます。ビニール袋として包装材料としてはよく見るポリエチレンであれば、40℃の環境で1 cm3あたりに、4 x 1021個もの孔が存在するといわれています。空気を入れて密閉しておいてもいずれは萎んでしまうのは、フィルムそのものからも気体が透過し、漏れていくからです。

フィルムに穴や孔がなければこの現象は起きないため、完全に気体を遮断するガスバリア性能を持つ、ということになります。金属缶やガラス瓶、アルミニウム箔などがこれに相当します。とはいえ、こうした材料だけでは用途によっては包装が困難です。

プラスチックフィルムは透明で軽く、コストも低いうえ形状変化にも優れるため、包装材料としては極めて優秀な素材であり、このため、この素材にガスバリア性を持たせたい、ということからガスバリア性能の高いフィルムの開発が進められています。

ガスバリア性能のある包装フィルムの種類と性能比較の一覧

酸素を通さない、通しにくいということがガスバリア性能の代表的な指標となりますが、他にも殺菌も主眼としたものや特定の気体に強いものなど種々のものが目的にあわせて存在します。

金属やガラスは完全にガスや水蒸気を遮断します。プラスチックフィルムの中には吸水(高湿度環境)によってガス遮断性能が著しく低下するものがあります。PVAやEVOHがこれに該当します。ナイロン系は吸水だけでなく、酸やアルカリによる加水分解でもガス遮断性能が低下します。

ガスバリア性能のある包装フィルムの種類と性能比較の一覧
包装フィルム、包装材料 酸素透過性
(ml/m2・d・MPa)
水蒸気透過性
(g/m2・d)
金属箔 アルミニウム箔(AL箔) 0 0(40℃、90%RH)
スチール箔 0 0(40℃、90%RH)
ガラス瓶 0 0(40℃、90%RH)
金属缶 0 0(40℃、90%RH)
アルミニウム蒸着(PETベース) 8から10 0.8から1.4(40℃、90%RH)
透明蒸着フィルム アルミナ蒸着(PETベース) 15 1.5(40℃、90%RH)
シリカ蒸着(PETベース) 6から12 0.8から1.0(40℃、90%RH)
ナイロン(Ny)、ポリアミド(PA) 750(25℃、90%RH) 25(40℃、90%RH)
ポリビニルアルコール(PVA) 3から60(0から92%RH) 134(40℃、90%RH)
エチレンビニルアルコール共重合(EVOH) 3から80(20℃、0から85%RH) 30(40℃、90%RH)
ポリ塩化ビニリデン(PVDC) 12(25℃) 2.1(40℃)
ナイロンMXD6 90(20℃、90%RH) 42(40℃、90%RH)
積層フィルム PT#300/PE(40μm) 50から100 15.0
Kセロハン(23μm,Kコート3μm)/PE(40μm) 60 8.0
Kセロハン(32μm,Kコート12μm)/PE(40μm) 15 2.5
OPP(20μm)/CPP(30μm) 10000 6.0
K-OPP(23μm,Kコート3μm)/PE(40μm) 120 5.0
K-PVA(15μm, Kコート3μm)/PE(70μm) 20 5.0
K-PET(15μm, Kコート3μm)/CPP(50μm) 120 8.0
K-PET(23μm,Kコート12μm)/EVA(60μm) 15 2.0
ONy(15μm)/PE(40μm) 600 15.0
K-ONy(18μm, Kコート3μm)/EVA(50μm) 120 13.0
ONy(15μm)/EVOH(15μm)/EVA(50μm) 20 14.0
OPP(20μm)/EVOH(15μm)/PE(40μm) 20 5.0
PET(12μm)/ALVM-CPP(30μm) 100 1.0
ALVM-PET(12μm)/PE(40μm) 20 1.0
PET(12μm)/ALVM-PE(30μm) 100 1.0
PET(12μm)/AL箔(9μm)/CPP(70μm) 0 0
PET(12μm)/PE(15μm)/CPP(25μm) 1000 10.0
OPP(20μm)/延伸HDPE/PE(30μm) 10000 1.0

ポリ塩化ビニリデン(PVDC)コート(Kコートフィルム)

Kコートフィルムともいわれます。基材延伸ポリプロピレン(OPP)にポリ塩化ビニリデンを1μmほど両面コーティングしたものです。OPPのほか、PETフィルムにコーティングすることもあります。K-PETの名称や、K-OP、K-OPP、K−PVA、K-ONy、K-セロハンの名称で上市されているものは、PVDCによるKコートされたフィルムです。

ガスバリア性、防湿性に優れるバリアフィルムです。PVDC自体が廃棄の際の燃焼時にダイオキシンを発生させる問題から一時期下火になりましたが、コーティング量が少ないことから影響も見直され、使用される傾向があります。

アルミニウム箔(AL箔)

箔とは金属を薄く伸ばしたもので、アルミ箔は日常的にもよく使われる素材です。ラミネート包装などの用途では、軟質で7μm程度(あるいは9μm)の薄さのものが使われますので、一般的に家庭用のアルミホイルである12μmよりも薄くなります。完全なガスバリア性能を持つため、気体を通さず、防湿性も完全です。光もブロックする遮光性も備えますが、透明ではないため、中身が見えません。また袋状にして使うのは難があります。

アルミ蒸着フィルム(ALVM)

プラスチックフィルムである延伸ポリプロピレン(OPP)やPET、無延伸ポリプロピレン(CPP)に成膜コーティングの技法である蒸着でアルミをつけたものです。蒸着は、アルミを分子レベルに分解したものをフィルムに付着させる方法であるため、アルミ部分が箔よりもさらに極薄となります。美麗な膜が作れる反面、アルミ箔と違い、完全なガスバリア性能は持ちません。

透明蒸着フィルム

シリカやアルミナを蒸着にて分子レベルでフィルム表面にコーティングしているフィルム。アルミナとシリカを二種コーティングした二元蒸着品もあります。もとになる基材フィルムはPETが一般的に使われますが、他に、延伸ポリプロピレン(OPP)や延伸ナイロン(ONy)も使われます。シリカやアルミナはいわゆるセラミックスで、光学レンズの表面のコーティングにも使われることから透明でありながら極薄の成膜が可能です。レトルト殺菌といった用途を持つものもあります。

ポリビニルアルコール(PVA)

OPPフィルムに、PVAをコーティングしたものです。Kコート品の代用として使われることがあります。OPPにポリ塩化ビニリデンをコーティングしたKコート品に比べて、高い湿度の環境下で用いると酸素のガスバリア性能が落ちることが知られています。このため、水物やボイル用途の包装には向かないとされます。なお、PVA単体には防湿性はありません。

エチレンとビニルアルコールの共重合体(EVOH)

こちらもPVAと同様に、高湿度の環境ではガスバリア性能が低下することが知られており、ともに、何層ものフィルム(包装用は通常3層)から構成される積層フィルムにおいて、中間層に挟み込んで使用されます。KOP/EVOH/CPPといった三層構造の積層フィルムや、PE/EVOH/PE、OPP/EVOH/OPPといった構成での中間層用として多用されます。

バリアナイロン(MXD)

こちらもKコート品であるKOPの代用として使われることがあります。防湿性はあまりよくありませんが、酸素を遮断するバリア性能から、延伸ナイロンに挟み込む形のONy/MXD/ONyといった使われ方をします。あるいは、PET、PP、PEと組み合わせて共射出成形や共押出成形により包装材料向けの多層の容器、ボトル、シートとしても使われます。三菱ガス化学のナイロンMXD6が、MXナイロンの名称でよく知られます。メタキシレンジアミン(MXDA)とアジピン酸との重縮合反応から得られる結晶性のポリアミドです。

上記のほか、有機成分と無機成分を分子レベルで混合したコーティングをOPPに施したハイブリッド品や、アクリル酸系の樹脂をプラスチックフィルムにコーティングしたもの、特殊無機化合物と有機高分子との微細構造混合物をコーティングしたナノコンポジットコートなどもあります。

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