PLA樹脂(ポリ乳酸)の融点、比重などの物性|欠点から用途、合成方法まで

2021年5月16日更新

PLAの特徴

PLA樹脂はポリ乳酸とも呼ばれる生分解性プラスチック(グリーンプラ)で、バイオプラスチックに分類されるエコ素材として近年注目が集まっています。最終的に微生物に分解され土に還っていく素材です。PLAは英語ではPolylactic acidといいます。融点(融解温度)は170℃〜175℃、ガラス転移温度は60℃となります。比重はポリ乳酸(PLA)の比率や混合物によって決まりますが、99.5%のPLAで1.25程度とされます。グレードによって異なりますが、一般に、PLAの比重は1.24〜1.25となります。

乳酸はL体と、D体、DL体の三種が存在しますが、LとDを混合したSC-PLA(ステレオコンプレックスPLA)は融解温度が230℃にもなります。高温環境での使用や高強度での用途は他の材料とアロイ化したグレードもあります。PCやPBTとのアロイ化も可能です。他、耐熱、耐久、難燃、耐衝撃、高剛性などのグレードが存在します。

乳酸は人の体内でも生成されることから生体適合性があります。これを原料としたプラスチックであるため、環境親和性だけでなく生体適合性が要求される用途でも使用されてきました。

ポリ乳酸はどうやって合成されるか

PLAは微生物発酵によって得られる乳酸を原料としており、合成方法としては化学重合法によって生成されているポリエステルとなります。

乳酸は、イモ類やとうもろこしといった植物から取り出したデンプンを発酵させることで作られた乳酸(モノマー)です。これを重合してポリマーとしたものがポリ乳酸です。

低分子量のPLAの合成方法の歴史は古く、1932年にカロザースによって発表されたこと端に発しています。その後、高分子量のPLAの合成については、乳酸の環状二量体であるラクチドの開環重合法が開発されたことで道が開けます。

乳酸を加熱脱水重合したあとに作られる低分子量の乳酸をさらに減圧環境下で加熱分解します。こうするとラクチドが生成され、これに対して金属塩の触媒を用いて重合します。触媒はオクタン酸スズやアルミニウム、亜鉛の塩やイソプロポキシドが知られています。

ジフェニルエーテルなどの溶媒中で乳酸を減圧下加熱し、水を取り除きながら重合させる直接重合法も存在します。

ポリ乳酸の欠点|加水分解のメカニズム

PLAの欠点としては、他のプラスチックに比べると結晶化速度が遅く加水分解しやすい点があげられますが、改良が進められています。そもそも生分解しないとこのプラのエコ性は発揮されないので、悩ましいところです。

生分解反応における一次分解反応は、エステル結合の加水分解反応になります。最終的には、たんぱく質を分解する加水分解酵素であるプロテアーゼによって、乳酸にまで分解されます。土壌中の微生物にも、PLAを乳酸にまで分解させることができるものがあることが報告されています。

ただし、加水分解される他の生分解性プラスチックに比べると分解速度が遅いことが知られています。この観点からだと、バイオプラスチックとしては「自然にかえる」のにより時間を要するということになり、欠点ともいえます。生分解度が60%以上あれば、生分解性プラスチックとして認証されるので、そのカテゴリーとしては分解性能は十分ということにはなります。

ポリ乳酸の用途

開発当初は、乳酸という人体でも生成される物質であり生体適合性の高い素材を原料としていることから、縫合糸や組織再生用の足場材料や支持材料としての使用がメインでしたが、現在は医療用だけでなく、ガラス転移温度が60℃と室温より高いことから、PET樹脂やPS樹脂のように硬質系プラスチック材料として幅広く利用されています。

PLAは結晶性プラスチックに分類されますが透明性をもつ非晶性材料から結晶性をもつ半透明性のあるものまで、加工条件を変えることで作り分けることができる点も大きな特徴です。透明性を活かすのであれば、フィルムやシート類としての用途があり、結晶性の耐熱性能や強度を活かした硬質プラとして使うのであれば自動車の内装材や家電製品の筐体、繊維、包装容器などの用途があります。

ポリ乳酸(PLA)のメーカー

世界的な脱プラスチックの動きに合わせて、従来の環境負荷の高いプラスチック・樹脂材料の代替材として各国での生産能力、設備増強の動きがあります。また材料特性の改質により、用途も拡がってきています。

ポリ乳酸(PLA)のメーカー一覧の例
商標ブランド名 メーカー 備考
Ingeo 米国 NatureWorks LLC社 世界最大のPLA生産設備を保有する
Luminy オランダ Total Corbion PLA社 タイにて7.5万トンの生産能力
REVODE 中国 浙江海正生物材料 -
Pure PLA オーストリア weforyou -
Futerro PLA ベルギー Futerro -

PLAの物性|比重、融点、引張強度、伸び、衝撃強さ等

ポリ乳酸には複数のグレードがあるため、それぞれで物性に違いがあります。以下は射出成形グレードの一例です。

PLA(射出成形用グレード)の物性|比重、融点、引張強度、伸び、衝撃強さ等
L乳酸含有量(% w/w) Min 99%
水分含有量(ppm) Max 250
比重 1.24
ガラス転移温度 52〜60℃
融点 145℃〜175℃
破断強さ(MPa) 55
引張降伏強さ(MPa) 60
引張弾性率(MPa) 3500
破断伸び(%)  6.0
アイゾット衝撃強さ(kJ/m2 3.5
曲げ降伏強さ(MPa)  90

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