S58C(機械構造用炭素鋼)の機械的性質や成分の一覧

2010年8月14日更新

機械構造用炭素鋼のなかでは最も炭素の含有比率の高い炭素鋼です。硬度が高い反面、同種の炭素鋼では粘りが少なくなります。これ以上の炭素量になると、工具鋼となります。炭素の量により硬さを追求していくと、鉄鋼材料のもつ大きな特徴の一つである「粘り」が損なわれていく傾向があります。ガラスなどの硬脆材料は硬いですが、靭性がないため、破壊されやすい側面を持ちますが、鉄鋼はこの粘りと硬度、硬さのバランスに特徴のある素材です。どの炭素量のものが最適か、成分だけでなく、後の熱処理も勘案しつつ選んでいくことが肝要です。

S58Cの化学成分(代表値)
材料記号 C Si Mn P S
S58C 0.55〜0.61 0.15〜0.35 0.60〜0.90 0.030以下 0.035以下
S58Cの熱処理温度(焼ならし、焼なまし、焼入れ、焼戻し)
種類 変態温度
(℃)
熱処理温度
(℃)
Ac Ar 焼ならし 焼なまし 焼入れ 焼戻し
S58C 720〜760 730〜680 800〜850空冷 約790炉冷 800から850水冷 550〜650急冷
S58Cの機械的性質(降伏点、引張強さ、伸び、絞り、硬度)
種類 機械的性質
熱処理 降伏点
N/mm2
引張強さ
N/mm2
伸び
%
絞り
%
衝撃値
(シャルピー)
J/cm2
硬度
HBW
S58C 焼きならし 390以上 650以上 15以上 - - 183〜255
焼きなまし - - - - - 149〜192
焼入れ・焼戻し 590以上 780以上 14以上 35以上 59以上 229〜285

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