鉄と鋼は何が違うのですか

2012年7月23日更新

状況によっては両者は混同して用いられる用語ですが、工業において鉄と鋼(鉄鋼)は区別されています。

鉄にもいろいろあり、銑鉄(せんてつ)を意味する場合や、純鉄(じゅんてつ)を意味する場合があるため、共通する部分について述べていきます。

「鉄」や「鉄鋼」は産業の米といわれたほど多くの分野で使われる材料の一つです。意外に思われるかもしれませんが、鉄は工業材料の中ではそんなに硬くはなく、強度にも優れた物質ではありません。

「鉄のように硬い」あるいは「鉄拳制裁」などの言葉に示すように非常に硬いイメージが付きまといますが、いわゆる鉄がそのままの状態で使われるのは限られた分野です。構造材料として、例えば建物や橋、歩道橋や塔、ビルなどの構造物の一部に使われる場合は、鉄では強度が足りません。

鉄は高炉から出された状態だと、炭素の含有する量が多いため、硬くてもろい状態になっています。前述の建物や、機械部品などに求められる強度とは、硬さだけでなく、もろく折れたりしないことも重要となります。

そこで、鉄のもつ炭素の量を調整しつつ、その他の元素を添加することで目的の強度や硬さ、靭性を持つ「鋼」として使うことが出来るようになります。

こうして鋼が出来るわけですが、鋼の性質はその成分だけでなく、熱処理によっても様々に変化します。鉄鋼材料には「生まれ」と「育ち」があるという人もいますが、まさにその通りで、生まれとは鋼が作られた際に持っている成分のこと、育ちとは、熱処理のことです。熱処理とは、焼入れ、焼きなまし、焼き戻しなどで鉄鋼の組織を変えることで、これにより鉄鋼材料はさらに硬度を高めたり、磨耗性が強くなったりします。

代表的な鋼としては、以下のものがよく知られています。

多くの工業材料は、硬さと強度を両立させるのが難しく、これらのバランスをいかに取るのかによってそれこそ数多くの材料が存在します。鉄鋼もその例外ではなく、S45CやSS400などのよく使われるものから、特殊な用途専用のものまで多様な鋼材があります。

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