薄膜とバルクの特性に違いはあるか

2012年4月7日更新

バルクとは、固体あるいは塊状のものをいい、薄膜とはその名の通り極薄の膜を指しています。

薄膜の面白いところでもあり、難しい点ともなっている理由のひとつが、このバルク特性との違いです。例えば、ある酸化物を粉で購入し、特性を計測します。これがいわゆるバルク特性になります。この値と、この酸化物を薄膜にした場合とで、特性が大きく異なることがあります。

一般に、専門書などではバルクの特性が書かれているため、薄膜にした場合どうなるのかというのは非常に重要な検討項目といえます。冷戦時代より、薄膜の研究は米国、旧ソ連、ヨーロッパなどを中心に行われ、中でもこうした薄膜になった場合の材料の特性に関する基礎研究も行われてきています。ただし、中には安全上の理由から一体どうやって検証したのかわからないようなデータもあり、実際のところ、この薄膜の特性データを取るためだけに成膜などを行う企業もあります。ある成膜条件である材料を薄膜にしたら、こんな特性になったという情報は意外に貴重なもので、学術研究目的以外ではあまり出回っていない情報の一つです。というのも、薄膜の特性は微妙な条件が絡むものも多く、因果関係がはっきりしていない(推測の域を出ていない)条件と結果の関係もあり、事例は多いほどよいのですが、各企業の持つ成膜技術とも関係の深いノウハウ的な部分でもあるからです。

企業によっては学術論文で検証されている特性値よりも高いレベルでの成膜を実用化している場合もあれば、その逆もあります。

薄膜の特性を網羅した大著としては、"Handbook of optical constants of solids"があります。n値やk値、透過率、吸収端などの光学特性だけでなく、化学的な特性や物理的な特性も調べる場合にはこれだけでは不十分ですが、数多くの物質の薄膜特性を網羅しています。

【参考情報】バルク材と薄膜の機械的特性の違い
材料 成膜温度 膜厚(μ) 最終平均応力(kg/cm) 熱膨張係数(℃-1 ヤング率(psf)
薄膜 バルク 薄膜 バルク
SiO2 230 0.48 -1500 0.70x10-6 0.55x10-6 3.1x106 10.6x106
ThF4 200 1.40 1200 2.9x10-6 -2.5x10-6 2.0x106 -
MgF2 230 1.00 2300 30x10-6 13.7x10-6 0.28x106 20x106
MgO 230 0.40 -14000 28x10-6 10.5x10-6 0.38x106 51x106
HfO2 200 0.75 3500 1.4x10-6 3.8x10-6 11x106 -
ZrO2 200 0.60 3200 1.1x10-6 4.2x10-6 17x106 33x106
TiO2 150 0.55 2250 2.1x10-6 7.9x10-6 13x106 -
LaF3 250 0.85 1000 1.9x10-6 4.6x10-5 7.8x106 -

上記の表からもわかる通り、機械的特性のうち、ヤング率と熱膨張係数だけを見ても、薄膜とバルクとでは違いがあることがわかります。実証実験が必要となる所以です。

薄膜の特性【参考】

主として光学膜や機能膜として用いられる薄膜の代表的な特性、物性について紹介します。

酸化物の薄膜

フッ化物の薄膜

窒化膜

炭化膜

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