MgF2（フッ化マグネシウム）の特性
MgF2(フッ化マグネシウム）は深紫外から近赤外までを透過波長域に持つSiO2と並ぶ代表的な低屈折率材料の一つです。基板を加熱することで、膜の硬さ、密着性が向上します。なお、設計の際はこの材料が強い引張応力を持っていることに留意する必要があります。
MgF2は元来成膜している最中に起きるスプラッシュ（突沸）が問題となりやすい材料の一つで、スプラッシュの程度によっては基板にブツ・ボツといった膜欠陥を引き起こす原因となります。スプラッシュに影響を及ぼす要因は、多数の要素が関係していますが、蒸着材料の形状や成膜時の蒸着レート、溶かし込みの度合い、電子ビームの出力、蒸着プログラム、蒸着材料内部の不純物、空孔、電子ビーム照射時の掘れ方、真空度などが深く関わっているとされます。
MgF2（フッ化マグネシウム）は半透明の溶融結晶タイプを砕いた顆粒状のものが一般的ですが、ペレットやタブレット型のものもあります。
| 屈折率 | 1.38 ～ 1.4（550 nm近辺） |
|---|---|
| 使用波長域 | 0.22 ～ 2μｍ |
| 蒸発方法 | EB（電子ビーム）、抵抗加熱 |
| 蒸発源材料 | モリブデン、タンタル |
| 蒸発タイプ | 溶融蒸発型 |
| 膜質 | 結晶質、加熱基板上では硬くなる |
| 応力 | 強い引っ張り |
| 主な用途 | 反射防止膜、多層膜、単層膜 |
| 理論密度 | 3.2g/cm3 |
|---|---|
| 融点 | 1248℃ |
| 沸点 | 2260℃ |
| 性質 | 水溶性：難溶 可溶（NHO3)※１ |
| 結晶構造 | 正方晶系 |
| 抵抗率ρ/10^-8Ωm | - |
| 誘電率、比誘電率εγ | ε11=ε22 5.50 温度/℃:27 周波数/Hz:10^3 ε33 4.83 ※２ |
| 熱膨張係数 | - |
| 熱伝導率（cal/cm/sec/℃） | - |
| 比熱(cal/℃/mole) | - |
| 外観 | 白色、白色透明 |
| CAS-NO | 7783-40-6 |
| 輸送情報 | 輸出貿易管理令（リスト規制非該当） |
参照文献
- ※１：［日本化学会編，“化学便覧 基礎編 改訂5版”，丸善（2005），p.Ⅰ-246］
- ※２：［日本化学会編，“化学便覧 基礎編 改訂5版”，丸善（2005），p.Ⅱ-624］
専門誌等で発表されているMgF2の薄膜に関する研究論文
| 掲載誌 | APPLIED OPTICS Vol.45, No.28 / 1 October 2006 |
|---|---|
| タイトル | "Microstructure of magnesium fluoride films deposited by boat evaporation at 193nm" |
| 著者 | Ming-Chung Liu, Cheng-Chung Lee, Masaaki Kaneko, Kazuhide Nakahira, and Yuuichi Takano |
| 概要 | 溶融石英基板上に抵抗加熱で成膜されたMgF2の単層膜について、蒸着条件（基板温度、蒸着レート）を変えた場合の193nm波長における膜質（微細構造）の変化、光学的損失、レーザー損傷閾値（LIDT）、応力、屈折率、消衰係数の変化について調査した研究論文 |
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