TiO2(二酸化チタン)の特性

2011年5月8日更新

TiO2は可視光域や近赤外域での代表的な高屈折率材料の一つで、低屈折率材料であるSiO2などと組み合わせて積層させたり、単層膜で使われたりします。この物質は特に成膜レート、酸素導入、基板温度に敏感で酸素を失いやすい傾向があります。TiO2膜は、出発原料が変わると応力も変わります。

TiO2は三種類の結晶系があり、ルチル、アナターゼ、ブルッカイトの形態をとっています。薄膜の状態ではブルッカイトが観察されることは稀で、ルチルの状態では複屈折し、アナターゼの状態で屈折率は2.6程度とされます。

光学損失や膜構造、膜質などを決めるのに成膜条件が大きく左右します。電子ビームが一般的に使われますが、TiOやTi3O5からTiO2膜が作られることもあります。イオンビームやプラズアシスト等を蒸着中に用いることで、より膜質が非晶質に使いものになるとされます。

膜特性(TiO2 二酸化チタン)
屈折率 2.3 〜 2.55(550 nm近辺)
使用波長域 0.4 〜 3μm
蒸発方法 EB(電子ビーム)
蒸発源材料 タングステン、タンタル
蒸発タイプ 溶融蒸発
膜質 状況により非晶質、結晶質
応力 引っ張り
主な用途 光学膜全般
TiO2の材料特性(一般的なバルクの物性値)
理論密度 4.26g/cm3
融点 1850℃
沸点 3000℃
性質 水溶性:不溶
耐薬品性(酸、アルカリ):硫酸、アルカリに可溶 ※1
結晶構造 ルチル:正方晶系 ※2
アナタース:正方晶系 TiO6八面体が四つの稜を共有して三次元構造を形成する ※2
抵抗率ρ/10^-8Ωm 1.2 x 10^10 温度(θ/℃)80 ※4
誘電率、比誘電率εγ ルチル ε11=ε22 86 温度/℃:27 ε33=170 ※3
熱膨張係数 -
熱伝導率(cal/cm/sec/℃) -
比熱(cal/℃/mole) -
外観 白色
CAS-NO 13463-67-7
輸送情報 輸出貿易管理令(リスト規制非該当)

参照文献

  • ※1:[日本化学会編,“化学便覧 基礎編 改訂5版”,丸善(2005),p.T-343]
  • ※2:[日本化学会編,“化学便覧 基礎編 改訂5版”,丸善(2005),p.U-838]
  • ※3:前掲 p.U-625
  • ※4:前掲 p.U-612

専門誌等で発表されているTiO2の薄膜に関する研究論文

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