5S活動の意味を英語で説明

2020年12月29日更新

5S(ゴエス、ごえす)とは、英語では「five S」「5S methodology」とも言いますが、もともと日本で誕生した概念であることから日系企業になじみのない海外の場合、英語での説明なしでは何を意味しているか通じないことがあります。5Sとは日々の業務の基礎にある考え方の一種であり、実践すべき習慣でもあります。

5Sとは何か|2S、3S、4Sとの違い

職場環境を改善するための運動として広まってきたもので、簡単に言えば、整理(せいり)、整頓(せいとん)、清掃(せいそう)、清潔(せいけつ)、躾(しつけ)を実践することであり、この5つの用語それぞれをローマ字にすると頭文字がSからはじまるため、5Sと呼ばれます。

整理・整頓だけを意味する2Sや整理・整頓・清掃を意味する3S、整理、整頓、清掃、清潔を意味する4Sという形でも使われます。どの企業でも、5Sまでは指定している項目に違いはありません(解釈は異なることがありますが)。表にまとめると次のようになります。

2S、3S、4S、5Sの違い
標語 内容
2S 整理、整頓
3S 整理、整頓、清掃
4S 整理、整頓、清掃、清潔
5S 整理、整頓、清掃、清潔、躾

製造業ではじまったもので、トヨタ生産方式でも取り入れられていることからも広く世に知られることになり、サービス業や医療分野、教育分野でも取り入れられているケースもあります。

5S運動や3S活動、2S点検のように、会社内では定着させるための啓蒙運動がよく行われ、製造現場では標語としてもよく使われますが、それはこれを実践することで現場に存在する様々なムダの要因を断ち、業務効率化につながるというメリットがあるためです。

整理・整頓ができているということは、現場の状況、例えば使用する道具や用具がどこにあるか決まっており、探す手間なくすぐにいつでも取り出せるということです。また不要なものがないということでもあり、これだけでもモノを製造するという側面における「ムダ」「ロス」の多くをなくすことができます。

使用する道具や部品、材料が見つからず探すということは、生産活動に費やすことができる時間が減ることであり、ムダ以外の何物でもありません。使用しない道具や部品が散乱しているのも、混乱を招く要因となり、望ましくありません。こうしたことから、2S〜5Sを実践することで単なる職場の美化運動にとどまらない効果を発揮することになります。

ホワイトカラーでも使われる5S

事務作業をはじめとするオフィスワークでも同様で、文房具がないとか、必要な書類が見つからないといったことで生じるムダをなくすことができます。特に多量の書類を扱うホワイトカラーでもファイリングしたものがどこにあるか分からないということは、それだけ探すことに余分な時間がかかってしまうことにつながります。

これは書類が電子化されていても同じで、例えば共有フォルダをはじめとするネットワーク上の共有ツールも、ファイルがばらばらに散乱していてはなかなか目的のものは見つかりませんので、2Sを実施する手順に則り、まずは不要なファイルを捨てる(整理)、どのようなファイルをどこへどのようにラベリングして保存するか決める(整頓)と、探す時間が大幅に短縮されます。特に単なる検索で見つけることが難しいタイプの書類には効果大です。

また、清潔と躾の部分は業務の「標準化」に通じるところのあり、多くの職場での困りごと筆頭格のひとつでもある、業務のノウハウが個人の頭の中にしかなく、標準や手順の類が不十分であるという悩みの解決にも一役買うこともあります。

もっともこうした2S、3S、4S、5Sというのは、やることがシンプルで簡単そうなわりに、これを徹底することはなかなか難しく、どこまでどのレベルまでやるかというのは組織ごとに差があります。企業文化と一体化している側面もあるため、その会社の企業理念や行動指針が織り込まれていることもあります。

例えば、整頓を行うためには、一定の場所や運用ルールの作成と定着が必須となるため、分野によってはかなりの工数やコストを伴うことがあります。ただし5Sは企業ごと、あるいは職場ごとに「どの程度まで」というのをかなり弾力的に決めて運用できますので、手軽な改善手法として使うこともできます。何もはじめから完璧にすべてこなせずとも、できる部分から整理・整頓・清掃していこうということです。

6S、7S、8S、10S以上あるケースも

5Sまでの項目はどの会社でも変わらないと書きましたが、6S以降を設定、提唱したり、社内の標語や行動指針として取り入れている企業では、実践すべき項目が各企業ごとに異なりまさに企業文化が色濃く表れているところも散見されます。

6Sとして5Sに「作法」を加えている日本電産の例や、5Sにセーフティ(安全)を加えて6Sにしている例もあります。東芝のように7Sとして5Sに「しっかり」「しつこく」を足す例のほか、「習慣」「しっかり」「しつこく」「信頼」「スパイラルアップ」を足して10Sとしているセガのような例もあります。あるいは5Sに「作法」「測定」「スマイル」を足して8Sとしているケースもあります。

現在では標語の頭文字Sにこだわらずに、5S〇〇のように行動指針として守ってほしい事柄を追加するケースもあるため、〜Sの形は5Sの部分だけということも珍しくありません。この辺りは社風とも言え、企業文化づくりに生かしているところもあります。

5Sを英語で説明する

上記のように5Sは日本企業発祥のものであるため、馴染みのない相手に対しては5S methodologyといっても何かは通じませんので英語での説明が必要です。

5S is a workplace organization method aim to improve space efficiency and effectiveness by identifying and storing the items used, maintaining the area and items, and sustaining the new order.
5Sとは、職場の業務管理手法で、場所の有効・効率的な利用を進めるためのものです。使用する物がどこにどう保管されるか、場所や物の管理のルールを維持することで実現可能になります。
5S stands for "sorting", "set in order", "shine", "standardize", and "sustaining".
5Sは、整理、整頓、清掃、清潔、躾からきています。
Make sure that all employees understand the 5S's.
すべての従業員が5Sを理解するよう念押しください。
Make sure to check 5S implementation at your work place.
各自の職場にて5Sが実践されているか確認してください。

また、5Sは各項目のローマ字の頭文字がSからはじまっていることに起因する用語ですが、英語に訳すときには、直訳するとSからはじまらない単語になってしまいます。このため、下表のように、Sではじまる英単語にあわせて訳すと説明が容易になります。

5Sの整理、整頓、清掃、清潔、躾を英訳
日本語 英語訳の例 内容と意味
整理 sorting 不要なものを廃棄する
整頓 set in order (organizing) 決められた場所に物を置く、いつでも取り出せるようにしておく
清掃 shine (cleaning) 整理・整頓ができるよう常に掃除をする
清潔 standardize (sanitizing) 整理、整頓、清掃を実施し職場の衛生を保つ
sustaining 決められたルール・手順を守り維持する
 

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