ボンド(結合材)の種類
メタル、レジン、ビト、電着

2009年8月1日更新

砥石でいうボンドとは、砥粒を固定する結合剤を表します。砥石の大部分はこのボンドと切れ刃となる砥粒から成り立っています。砥石は主として「砥粒」「ボンド」「フィラー」「気孔」の4つの要素から成り立っています。

ボンドの役割

ボンドは砥粒を固着させておく役割を持つと同時に、研削が進むにつれ、適度に損耗した砥粒を切り離し、新しく鋭い切れ刃を持つ砥粒の頭を出していく役割(自生作用)も持ちます。また切れ刃である砥粒を突き出し、ワークへのあたりの強さを決める「ばね」の役割も持ちます。回転するホイールの表面から出ている切れ刃は、圧力がかかるため、切れ刃を支えるボンドの硬さによって表面に出る刃の量、いわゆる砥粒の突き出し量が変わってきます。

この「ボンド」の種類が、切れ刃となる砥粒の保持度合いに強く影響するため、ダイヤモンドホイールを使う際には同じワークを削るのでもボンドによって切れ味や寿命が変わってきます。

砥粒は「刃」として、ワークを削りますが、ボンドはそのワークから削られた「切りくず」によって削られていきます。ワークの切りくずによってボンドが削られ、砥粒は新しいものに生えかわっていきます。研削は、「砥石がワークを削る」という側面と、「ワークが砥石を削る」という二つの側面から成り立っています。

砥石を選択する際に、ボンドがとても重要になってくるのは、「ワークの切りくずによってどれだけ削れるのか」という点がその砥石の性質を大きく左右するからです。砥石の切れ味は、切れ刃となる砥粒が常に生えかわっていくことで維持されます。

粒度の細かい砥石を使えば、ワークの「切りくず」も小さなものになるため、砥石のボンドを削る力も弱くなり、他の条件が同じならば砥石がより「硬い」と感じられます。一方で、このワークの切りくずが大きければ、砥石のボンドも大きく削られるため、砥粒が早く顔を出し、切れ味を維持します。ワークの切りくずによって削られるボンドがあまりに大きかったり、ボンドの結合力がワークとあわなかったりすることで、砥粒が十分に効果を発揮する前に脱落する「目こぼれ」が起き、異常な損耗の原因ともなります。

ワークからの切りくずのほか、ワークの材質と、ボンドの材質の相性も見る必要があります。ワークの材質がやわらかいもので、ボンドを削る力が弱ければ、新しい砥粒の頭が出ず、切りくずが砥石の表面に詰まり、切れ味を著しく損ないます。砥石の気孔の大きさが不十分であったり、ワークの材質が「粘っこい」「粘い」場合に「目づまり」を引き起こします。またボンドの結合力が強く、ワークが硬いものであると、砥粒の生えかわりが起きず、砥粒先端が摩滅していく「目つぶれ」が発生します。

スポンサーリンク

ボンドの種類

砥石のボンドは大きく分けると4種類あります。

  • ・メタルボンド(M)
  • ・レジンボンド(B)
  • ・ビトリファイドボンド(V)
  • ・電着(P)

メタルボンド(M)

合金をベースにした金属の結合剤です。硬いボンドで、形状維持性能が高く、だれてしまっては困る場合などに重宝されます。ボンドへの砥粒の埋まり込みも小さいため、目詰まりや目つぶれを起こさなければ、切れ刃となる砥粒の突出量は比較的大きいです。弾性が少ないため、クッション性があまりなく、ワークへあたる砥粒の刃の数は少なくなり、一つあたりの砥粒にかかる力が大きくなるため、切り込み深さも大きくなります。それに応じて、面粗度は粗くなる傾向があります。

>メタルボンド砥石のご紹介(ダイヤモンドホイール、CBNホイール)

レジンボンド(B)

樹脂をベースにした結合剤です。メタルやビトに比べてクッション性に富み、やわらかいので、ワークに接触する長さが大きく、砥粒がワークに接触する数が多くなります。

メタルボンドが、空気が限界まで入ったタイヤとするなら、この空気があまり入っていないのがレジンボンドです。多くの砥粒がワークに接触するため、一つの砥粒にかかる力は弱くなります。生け花で用いる剣山と同じ原理で、剣山の上に手を置いても、力は分散されて刺さりませんが、これが一本の針ならば刺さります。この一つの砥粒にかかる力の大きさはワークへの切り込み深さとも関係します。メタルボンドと比較して表面粗さが小さくなるのはこのためです。

>レジンボンド砥石のご紹介(ダイヤモンドホイール、CBNホイール)

ビトリファイドボンド(V)

セラミックス質(ガラス質)の結合剤です。ボンドそのものが硬く、弾性係数もメタルほどではないですが大きいため、ワークへの砥粒の接触数はレジンに比べると少なくなります。自生作用が活発に起きる特徴を持ち、ドレッシングの回数を減らすことも可能です。PCD(ダイヤモンド焼結体)など特に硬い材質との相性がよいです。難削材への切り込みが深く、チップポケットの数や大きさも調整しやすいボンドです。

>ビトリファイドボンド砥石のご紹介(ダイヤモンドホイール、CBNホイール)

電着(P)

電解めっきを応用した方法で、砥層に相当する部分が台金やシャンクにコーティングされている状態です。さまざまな形状の台金につけられるという利点があります。また砥粒の突き出し量が他のボンドよりもはるかに多いため、切れ味に優れます。ただ砥層が薄い単層のことが多く、他のボンドタイプに比べると寿命に課題があります。

>電着工具のご紹介(ダイヤモンドホイール、CBNホイール)

砥石からはじまり、工業技術や工具、材料等の情報を掲載しています。製造、生産技術、設備技術、金型技術、試作、実験、製品開発、設計、環境管理、安全、品質管理、営業、貿易、購買調達、資材、生産管理、物流、経理など製造業に関わりのあるさまざまな仕事や調べものの一助になれば幸いです。

このサイトについて

研削・研磨に関わる情報から、被削材となる鉄鋼やセラミックス、樹脂に至るまで主として製造業における各分野の職種で必要とされる情報を集め、提供しています。「専門的でわかりにくい」といわれる砥石や工業の世界。わかりやすく役に立つ情報掲載を心がけています。砥石選びや研削研磨でお困りのときに役立てていただければ幸いですが、工業系の分野で「こんな情報がほしい」などのリクエストがありましたら検討致しますのでご連絡ください。toishi.info@管理人

ダイヤモンド砥石のリンク集

研磨や研削だけでなく、製造業やものづくりに広く関わりのあるリンクを集めています。工業分野で必要とされる加工技術や材料に関する知識、事業運営に必要な知識には驚くほど共通項があります。研削・切削液、研削盤、砥石メーカー各社のサイトから工業分野や消費財ごとのメーカーをリンクしてまとめています。

研磨、研削、砥石リンク集