ステンレス研磨用砥石(鏡面研磨仕上げ)

2009年9月20日更新

ステンレスの研磨は、数ある研磨素材の中でも難度の高い加工として知られます。なかでもステンレスの鏡面研磨となるとわずかなスクラッチやピンホールも許されず、前工程の研磨処理の一つ一つが緊張を強いられる難度の高い加工になります。

ステンレス(SUS)は鉄にCrやNiを混合し、その名が示すとおり錆びにくく、耐磨耗性や耐食性を付与した鋼です。この素材は、耐磨耗や防錆、耐食などの性質から想像がつくとおり、非常に加工しにくい素材です。

この優れた付加価値により鏡面のステンレス(SUS)が求められる状況も多く、いかにスクラッチやピンホールのないステンレス板を研磨により作り出すのかという点は、様々な試行錯誤の中で検討されてきています。

ステンレス鏡面研磨用の砥石の特徴と仕様

よく使われる工程

2B材から研磨し始める場合、#80〜#120の砥石を粗工程として、#1500〜#3000までを仕上げ工程として使えます。ステンレスを鏡面研磨するための砥石として性能を発揮します。求める面粗度が足りない場合、この砥石で研磨したあとに遊離砥粒を用いた研磨剤もお使いいただけます。

使い方は、回転するタイプの研磨機(バーチカル)のフランジ等に貼り付け、砥石を寝かせてその端面を使うタイプのものと、平面研削盤で外周部を使うタイプ、液状の遊離砥粒を用いたラップタイプなどが知られています。

粗工程 中仕上げ 仕上げ

砥石の標準仕様

粒度 ボンド
各社仕様による。#60〜#10000 レジン系、PVA系

WAやGC砥粒を使ったステンレス研磨用の砥石

ステンレスと相性のよい砥粒としては、WA(ホワイトアランダム)やGC(グリーンカーボナイト)が知られています。ステンレスの研磨に用いる場合、GC系(緑色炭化ケイ素)とWA系のどちらがよいかは議論の分かれるところですが、砥石の観点から違いを述べるとするならば砥粒の形状と破砕の様相が異なります。

ステンレスには粘りのある砥石は不向きといわれますが、これは表面がガラスや超硬などに比べてやわらかいこととも関係しています。ナンバー8と言われる鏡面仕上げを、ステンレス板などに行なう場合には、通常砥石の選択には研削条件の割り出しも含め、相当な時間がかかります。

砥石が目詰まりする場合、砥石に十分な圧力がかかっていないことが考えられます。切り込みの深さを確保するため、砥粒ひとつにかかる圧力を一定以上にあげていく必要があります。回転数、砥石にかかる圧力、研削液、送り速度などが砥石の仕様とともに、面粗さに影響していきますが、なかでも砥石の「切れ味」は加工硬化の問題をはじめ、研磨における各種問題を解決する糸口になることが多いです。

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ステンレス研磨の難易度が高い理由−不導態皮膜と加工硬化

加工硬化−力を加えすぎると硬化するステンレス

ステンレス(SUS)の表面に切削工具などで力を加えれば、加工硬化を起こします。これは金属に力を加えると、硬度が上がる現象で、切れ味があるうちは気にならないのですが、工具の切れ味の低下と共にステンレス表面に負荷がかかっていき、表面が硬化してしまう現象です。

ステンレスを研磨するときも、加工の時間が長くなれば同様の問題を起こします。

このステンレスが硬化していく性質は、加工現場とくに研磨を行なう現場ではさまざまなパターンが知られています。加工時の圧力によって発生する加工硬化のほか、後述の酸化被膜による硬化、金属硬化といわれる現象なども研磨や研削する上で障害となる現象です。

不導態皮膜−表面に膜を帯びているステンレス

ステンレス(SUS)が錆びないのは、その表面が酸化膜によって保護されているためで、これを不導態皮膜とも呼びます。研磨によってステンレスの表面を磨いていくと、この不導態皮膜が剥がれます。ところが、この膜は剥がれてすぐに酸素とステンレスが反応して、また新しい不動態皮膜を形成していきます。ステンレスが錆びない所以はこの不動態皮膜(酸化被膜)が一つの理由です。この酸化被膜が場合によっては研磨加工の障害ともなります。

ステンレスの種類

SUS304

ステンレス(SUS)の種類にはCrやNiの含有量により、特徴のあるさまざまなものが知られています。例えばSUS304は、Cr18、Ni8を含むステンレスですが、俗に18ステンレスとも言われる代表的なステンレスで、耐食性、磁性もあります。一般には、耐食性を確保できるギリギリのラインが、このSUS304といわれ、ステンレスの中では加工のしやすい部類です。

SUS316

SUS316は、Cr18、Ni12、Mo2.5を含んだステンレスで、SUS304よりも耐食性をさらにアップさせたもので、加工性、研磨のしやすさは大幅に変わります。これにカーボンを加えたSUS316Lはさらに削りにくく、付加価値の高いステンレスほど加工難度は上がっていく傾向にあります。

SUS430

一般に、SUSはCrを添加すると硬さが増し、NiやMoを添加すると延性や耐食性が増します。これらに苦労させられている皆様にとってはおなじみかと思います。SUS430は、酸化被膜が特に硬いことでも知られ、砥石屋泣かせの材料です。

その他のステンレスの特性については次のサイトに詳しいです。

【参考サイト】ステンレス鋼(SUS)の種類、機械的性質、成分や特徴について

ステンレス研磨とスクラッチ

またステンレス(SUS)を鏡面まで仕上げようと思うと、微細なスクラッチの問題も避けては通れません。このスクラッチはどの研磨工程で発生したのかきちんと調べる必要がありますが、ステンレス表面に残るさまざまな残留物や、切り屑自体でも発生することがあります。加工対象となるステンレスの性質と、砥石の仕様、加工条件がうまくマッチしてはじめてスムーズな鏡面加工が可能となります。

ステンレスの板を鏡面加工する際、仕入れたステンレス板は2B材などの圧延加工されたものや研磨ベルトで若干研磨されているステンレス板になるかと思いますが、これらは圧延ロールの関係上、表面はミクロレベルでは波打っていることが多いです。

ステンレス板の研磨をはじめる際の粒度の選択は、そのステンレス板の状態に拠るところが大きいです。一般に板厚が薄く、表面の精度が比較的良好でピンホールが見られない場合には、粗番手を飛ばし、ステンレス板が逆に厚く、ピンホールのある可能性が高い場合や表面が波打っている度合いが強い場合は、粗番手からしっかり研磨することで、鏡面仕上げにまで持っていくことができます。

スクラッチや傷の発生時には、加工状況や砥石の見直しをよく行ないますが、研磨を始める前の状態のステンレスにピンホールがないかという問題も一考に値します。

ステンレス研磨用の砥石メーカー

一口にステンレスを磨くといっても、平面を機械で磨くのか、手作業のバフ研磨なのか等、加工方法や加工対象の形状・寸法によって選ぶべき砥石(研磨材)は変わってきます。

ステンレス研磨、鏡面研磨加工、工業用、家庭用(DIY)
砥石メーカーのサイト

光陽社
一般的にステンレスを鏡面研磨すると言ったときは、ほとんどの場合、バフ研磨のことを指しています。クロムを主成分とする青粉(あおこ)をはじめ、パウダー状の研磨材を固形に練り固めたものを、回転するバフの熱で溶かしながら使います。工業用製品の「バフ研磨材のカテゴリーにステンレスに使える研磨材が掲載されています。またフラップバフ、布バフも製造販売しているメーカーさんです。バフのような最終仕上げに用いる研磨材としては、クロムかアルミナか意見が分かれるところですが、双方切れ味が異なりますので、少し表面を削るなどの研磨力が必要な時とそうでないときとで使い分けるとよいでしょう。
ハープ
ジュエリーやアクセサリー製作のための彫金工具を扱っている会社ですが、入り組んだ形状の金属素材を鏡面に仕上げるためのフラップバフも扱っています。写真付きでフラップバフがどういうものか紹介されています。ステンレスを仕上げるためのものもあります。
日本特殊研砥
弾性砥石で有名なメーカーですが、平面、特にステンレス鋼板やステンレスシートの表面を鏡面に仕上げるときには、バーチカル型(円形の外周ではなく、寝かせた端面を使って行う研磨方法)が高効率で一般に使われます。ステンレスの加工業界で一世を風靡したSUSラップ(サスラップ)をはじめ、ステンレス鏡面研磨用の砥石を製造販売しています。大形のステンレスシートや鋼板になってくると、ある程度の自動機でヘッドが複数ある大形機械を用いて加工することが多いのですが、こうした加工で威力を発揮します。
研削砥石メーカーリンク集
円筒研削盤や平面研削盤で、いわゆるストレート形状(1A1)の丸い砥石の外周部を使って行う場合は、研削砥石を用いてステンレスを鏡面まで持って行くことも可能です。研削砥石のバリエーションが豊富なところであれば、ステンレスによくあうものも扱っていると思います。ただ、最終仕上げについては遊離砥粒(バフ)を用いないと厳しいかと思いますので、ほとんどのケースでは、#1500〜#3000くらいまでは何とか固形の砥石で、それ以降の工程は遊離砥粒を用いて鏡面加工を行うのが一般的です。

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