電着砥石について

2010年1月27日更新

電着の原理は、メッキの原理を応用して工具の表面にメッキ層をつくり、そこにダイヤモンド砥粒やCBNを固着して作るタイプの工具です。ダイヤモンドやボンド材の粉を焼き固めて製造するメタルやレジン、ビトなどの砥石とは製法も異なります。

ダイヤモンド電着砥石、CBN電着砥石はそれぞれワークによって使い分けられています。

ダイヤモンド電着砥石
CBN電着砥石

電着砥石の特徴と仕様

研削でよく使われる工程

ダイヤモンド電着砥石・CBN電着砥石は、用途が多岐にわたり、形状の種類が多いため、粗工程から鏡面仕上げまで加工するものによって、それぞれ最適な工具があります。加工する対象によって、砥粒をダイヤモンドにするかCBNにするかが決まります。形状も市場に出回っている機械や加工の方法、ワークの種類の数だけあると言われるほど多彩なものがあります。ゴムの研削、ガラスの研磨、鉄系、非鉄金属系、レンズ、樹脂、セラミックス、石材、磁性材料など多くの業界で使われています。

粗工程 中仕上げ 仕上げ

ダイヤモンド電着・CBN電着・電着砥石の標準仕様

寸法 粒度 結合度 集中度 ボンド
各種 #16〜#8000程度
範囲外の粒度も稀に見ます
低密度
標準
高密度
電着

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ダイヤモンド電着・CBN電着砥石は、電着砥石の特性上、台金(シャンク)の表面にメッキ層をつくり、ダイヤモンドやCBNを固着するため、さまざまな形状のものを作ることが出来ます。寸法や形状に関しては、ホイール状のものから、ホーニングタイプ、カップ型、軸付砥石タイプ、小径電着、大径タイプなど数多くのものが存在します。穴あけ工具や切断砥石、形状をつくるための総形などにも電着工具はよく用いられます。使い終わった後の電着の張替えも盛んで、多くはこの張替えを商売にしています。たいていの場合、張替えの費用のほうが安くつくため、台金は傷がつかないように大切に管理し、電着層が減ってきたら、再電着して用います。

繰り返しの加工にはダイヤモンドやCBNの再電着が一般的に行なわれており、シャンク(電着層をつける台金)が傷んでいなければ、繰り返し使えます。

電着砥石を一から作るよりも低コストですむため、経済的です。

ダイヤモンド電着、CBN電着砥石の持つ性質

電着砥石の場合、ダイヤモンドやCBNが一層だけ、台金(シャンク)の表面についているのみで、これが減ってしまうと再電着などで砥層部分を張り替えてやる必要があります。

メタルボンドなどの砥層がある砥石とは異なり、ダイヤモンドなどが入った砥粒層が一層で終わってしまうため、寿命には課題があります。

また弱点としては、メッキ層と台金とが機械的に結合しているだけなので、密着力が十分に確保できない場合があります。またメッキ層の応力により、台金から丸ごと外れてしまうこともあります。砥粒が大きい、つまり粗番手ほどメッキ層が厚くなるため応力も大きくなり、密着力を確保することが課題となります。

密着力を向上させる方法としては、台金の材質を密着の強いもの(焼入れなしの45Cなど)に変更したり、メッキへ添加する物質を工夫したり、台金とメッキ層を機械的に接着させるため、メッキ部分を台金に引っ掛ける部分を作ったりと数々の方法があります。

電着砥石は砥粒の突き出しが高い

電着の研削、研磨工具の特徴としては、砥粒の突き出し高さが高いという点がまず挙げられます。この「突き出し高さ」は、砥石表面から切れ刃となる砥粒がどれくらい突き出しているかを示すもので、周速度、集中度、砥石のホイール径とともに「砥粒切り込み深さ」の度合いを決定します。メタルボンドのダイヤモンドホイールやCBNホイールの突き出し高さが、砥粒の粒径の約10%〜約30%程度であるのに対し、電着は砥粒の粒径の50%近くが突き出していることになります。電着砥石が切れ味に優れるといわれる所以です。

砥粒の突き出し高さは、同じ粒度であっても面粗さや切れ味に直結する要素のため、ボンドの選択は吟味する必要があります。

電着砥石は砥粒の高さを揃えやすい

電着砥石は、この突き出し高さを揃えることが比較的に簡単にできます。メタル、レジン、ビトなどのボンドは厚みのある砥層にダイヤモンドが何層にもわたって入っていますが、電着は原理的に一層のみで、ダイヤモンドやCBNも多少のずれはあっても、工具の表面に1層だけ張り付いているため、砥粒の突き出している高さを調整するのが容易です。

研磨対象によっては、電着砥石の表面から突き出している高さが一定のほうがよい場合もあり、高精度加工を実現します。

電着砥石は砥粒の密度が高い

砥粒の密度に関しては、他のボンドタイプに比べて非常に高いです。メッキ層の上にダイヤモンドやCBNがびっしり乗っていると考えればわかりやすいかもしれません。このため、磨耗による変形が少なくてすみ、加工精度が安定します。

電着砥石はさまざまな形状につけられる

また砥石は、そのほとんどが金型に粉をつめて焼き固める焼結工程を経る必要があるため、台金から砥層が落ちてしまわないようにすることも考えると、作ることが出来る形状がある程度限られてきます。この点、電着工具は、メッキさえ施すことができれば複雑な形状を持つものにも均等にダイヤモンド層やCBN層をつけることができます。ただ電着に向かない材質もあるので、台金の材質の選択には注意が必要です。

こうした理由から、レンズや鉄鋼を加工するときにも電着砥石はよく使われます。安く、こしが強いため、幅広い業界で使われるタイプのダイヤモンド砥石・CBN砥石の一つです。ただ電着タイプの難点としては、砥層を持つ通常の砥石に比べて寿命が短い点があげられます。特に硬い加工物に対しては課題があり、あまり損耗が激しいと砥石を付け替える手間もあり、別の砥石を使ったほうがよい場合もあります。

電着砥石の材質

電着のメッキ層は、通常はNi(ニッケル)メッキをベースにして、そこにさらにいろいろなものを添加して電着層を作っていきます。ニッケルは摩擦係数が高い、つまり滑りにくいので研削で発生した切り屑が溶着していくため、このようにニッケルに他の物質をまぜて、滑りにくさを改善しています。また電着層は容易に剥がれてしまっては、研削の仕事にならないため、剥がれにくくする処理も施されることがあります。

よく使われる研削対象

ダイヤモンド電着砥石
セラミック
ガラス
サファイア
フェライト・磁性材料
サーメット
ダイヤモンド焼結体
Si, Ge等半導体用
石英・水晶
石材・コンクリート
プラスチック・FRP
CBN電着砥石
炭素鋼,SK
高速度鋼,ハイス,SKH
合金工具鋼,SKC
ダイス鋼,SKD
クロム鋼,SKD
クロムモリブデン鋼,SCM
ニッケルクロム鋼,SNC

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