砥石のドレッシングについて
ダイヤモンドホイールのドレッシングとは?

2009年8月17日更新

砥石のドレッシングに馴染みのない方には意外かもしれませんが、ものを磨いたり削ったりする砥石そのものを研ぐ作業のことを「ドレッシング」と呼んでいます。「砥石を研ぐ」というのは不思議かもしれませんが、切れ味の優れたダイヤモンドホイールといえども、使っているうちに切れ味が落ちることがあります。適切なタイミングで、適切な方法を用いてドレッシングすることが、研削作業の効率を挙げるだけでなく、ダイヤモンドホイールの寿命も延ばしてくれます。

研削加工において、ドレッシングなしで使えるダイヤモンドホイールがあれば理想的ですが、レジンにしてもメタルにしても長く使い込むほどに砥石の切れ味が低下していくことは避けられません。通常の砥石、研削砥石などでは砥石の三要素「砥粒」「ボンド」「気孔」のうち、気孔の占める割合が多く、これが加工しているワークの切り屑を排出する「チップポケット」として作用することで、深刻な目詰まりを防ぎ、適度な自生作用を促進させます。

ダイヤモンドホイールの場合、気孔にとんだビトリファイドボンド以外では、気孔がほとんど見られない二元系の砥石となります。この場合、加工物の切り屑によって、ダイヤモンドホイールのボンドがうまく削られ、砥粒であるダイヤモンドが適度に破砕していくことで、良好な研削を続けることができますが、このバランスを常時保つのは困難です。切り屑がうまくボンドを削りだせないと、砥粒先端だけが磨耗していき、ダイヤモンド部分がつぶれてしまう「目つぶれ」、切り屑を排出する役割を持つチップポケットを切り屑自体が埋め尽くしてしまい、砥粒の先端が埋もれてしまう「目詰まり」を引き起こします。こうしたとき、無理に研削を続けても、加工物に負担がかかり、加工時間ばかりかかって仕上がりもうまく出ません。

ダイヤモンドホイールのドレッシングは、こうした現象を解消するために行なう砥石の手入れのひとつです。ダイヤモンドホイールのボンド部分だけを適度に削ってやり、ダイヤモンド砥粒の突き出し量を適度に出してやる作業になります。また目詰まりなどによってついてしまった切り屑も落とします。定期的にこうしたドレッシングをすることで、新品同様の切れ味を保つことが砥石を長持ちさせることができ、研削を効率的にすすめることができます。

ドレッシングは、ダイヤモンド砥粒の目を出す作業でもあることから、別名「目出し作業」「目立て作業」とも言われます。

ダイヤモンドホイールをドレッシングする方法

ダイヤモンドホイールやCBNホイールなど超砥粒を使った研削ホイールをドレッシングする方法は各種研究されており、さまざまな方法があります。下記のドレッシング方法はその一例です。

スティックによるドレッシング

WA(ホワイトアランダム、アルミナ系)、GC(グリーンカーボナイト、炭化ケイ素系)などを使った一般砥石のスティックを、回転するダイヤモンドホイールやCBNホイールにあてて行なうドレッシングです。スティックといっても、ブロック状の砥石を台においてその上を研削ホイールで研削していくパターンや、回転するホイールに、手で持ったスティックをあてていくパターンなどがあります。ダイヤモンドやCBNなどの砥粒を損傷することなく行なうことがきます。スティックは湿らせて用い、ダイヤモンドホイールよりも若干粗い粒度のものを用いるのが効果的です。

ドレッシング作業の目安としては、ダイヤモンドホイールがもし目詰まりしているならば、スティックをあてた際に弾かれる感触がありますが、あてた際にすっと入ってくるような感触になれば十分です。

生材によるドレッシング

生材(軟鋼)を使って行なうドレッシングです。浸炭処理や窒化処理などを施された金属や超硬などの特に硬い金属を研削する用途のダイヤモンドホイール、CBNホイールなどを、ドレッシングの際に生材を削らせて、目だしを行なっていく方法です。生材(軟鋼)は、研削すると研削ホイールの減りが早いですが、この特性を逆手にとってボンド部を削っていくドレッシング方法です。

単石ドレッサ、多石ドレッサによるドレッシング

単石ドレッサは、鉛筆状のシャンクの先端に文字通りダイヤモンドが埋め込んだドレッシング専用工具です。切れ味の優れた良質のダイヤモンドを結晶方位まで見て埋め込まれたもので、この単石ドレッサを回転するダイヤモンドホイールやCBNホイールに接触させ、軽く切り込みを入れてトラバースしつつ表面をドレッシングする方法です。インプリドレッサも同様の方法で使えます。

ダイヤモンドロータリドレッサ

ホイール状の形をしているドレッサで、ダイヤモンドホイールの砥層がついている部分に、均等にダイヤモンドが一定間隔で埋め込まれている高精度なドレッサです。その分、価格も高額になります。ダイヤモンドホイールの形状と対になった形状をした特殊なものもあり、このロータリドレッサの形状がそのままダイヤモンドホイールの形状を決めてしまいます。研削ホイールの形状が重要な工程では欠かせませんが、これはドレッシングだけではなく、ダイヤモンドホイールの形状を整える「ツルーイング」も同時に行なってしまう工具です。

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