高マンガン鋼鋳鋼品の種類と特徴、成分、用途|高マンガン鋼、ハイマンガン鋼の鋳造品規格

2013年7月8日更新

高マンガン鋳鋼品は水靭処理(水じん処理)を前提にされた鋼材規格です。耐摩耗性に優れた鋳物であり、なかでも衝撃磨耗に強い鋼材として知られます。ハッドフィールド鋼、もしくはハットフィールド鋼ともいいます(高マンガンオーステナイト鋼)。ハイマン、ハイマンガン鋼と称呼されることもあり、通常はマンガンを成分上、10〜11%以上含む鋼材となります。

元来の成分に加え、1000℃〜1100℃前後に加熱後、急冷するという水靭処理を行うことで靭性(ねばり)の向上がはかられています。これは焼入れとは異なり、硬度が上がるのではなく、粘り強さである靭性が向上します。この種類では、鋼種によって水靭処理の温度も定められていますが、おおむね1000℃〜1100℃前後での処理となります。これにより、鋼材内部の炭化物を固溶し、完全オーステナイト組織とすることができます。

また加工硬化性の強い材料であるため、これに起因する優れた耐磨耗性を持つ鋼材でもあります。 ハンマーなどで打撃を加えたり、ショットピーニングなどを行うことで、硬度はブリネル硬さでHB550程度まで硬化させることが可能です。打撃を受けるほど硬くなる性質を持ちます。

ねばりに優れていることと、力を加えるとその部分が硬くなっていく加工硬化が顕著に出てくる素材である為、比較的安価なコストの鋼材ではありますが、加工が非常に困難な鋼材としても知られます。穿孔なども難しく、また熱割れなどの問題もありますので、切削や精密な穴あけなどの加工が前提となる用途ではあまり目にしない鋼材です。

欠点としては、こうした加工のしにくさに加え、引張強度に比べて降伏点が低いため、変形のしやすい鋼材という点も上げられます。また水靭処理そのものによって変形を生じることがあるため、鋳物であるということもありますが、精度部品に使う場合には注意が必要です。

用途は、耐磨耗性と靭性が求められ、かつコストがあまりかけられない部材への適用が多く見受けられます。用途としては、比較的大物で精密用途ではないもの、粉砕や破砕等に使うものが多いと言えます。粉砕ミル用のミルライナー、インパクトクラッシャー用ライナー、チャージングシャフト、シュレッダー用スクリーン、アンビル、カッターバー、ブレーカープレート、インナーディフレクター、クラッシャーディスク、ローラーミル用のブルリング、鉱石を粉砕するクラッシャーの刃の部分、鉄道レールの分岐(クロッシング)、ライナー、バケットツースなどが用途として知られます。

またオーステナイト系ステンレスと並び、非磁性であることから(磁石につかない)、電磁気の部材に使われることもあります。高マンガン鋼は、加工硬化を受けても透磁率の変化が小さい、つまり磁石にはつかないことから、重宝されることがあります。ただ、高マンガン鋼のほうがオーステナイト系ステンレス鋼に比べ強度が高いという特徴もあります。

「JIS G 5131 高マンガン鋼鋳鋼品」に規定のある材料記号

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