アルミダイカスト(ADC材)の成分と種類、特徴|材質、比重、機械的性質など

2013年5月4日更新

アルミダイカストとは

ADCからはじまるアルミ合金は、ダイカスト法によって作られた鋳造品となります。アルミを溶かし液体状にした溶湯(ようとう)を高速で金型へ流し込んで成型していきます。これらをアルミダイカスト、あるいはアルミ合金ダイカストと呼びます。

アルミダイカストの特徴

ダイカストでは、通常の鋳物よりも高速での溶湯注入が必要なため、溶かしたアルミにも高い流動性が求められます。このため、他のアルミ鋳物とは成分構成がやや異なっています。例えば、アルミ合金ダイカスト用に添加されているFeは、通常のアルミ鋳物用の地金では不純物となりますが、アルミダイカスト用の場合故意に加えられているもので、これは金型への焼き付きを防止するためのものとなります。

鋳物は精度を出すのが難しいとされますが、アルミダイカストの大きな特徴として高い寸法精度を出せるという点があげられ、大量生産に特に向いた生産方法でもあります。

アルミダイカストの熱処理

金属材料のほとんどは熱処理して実用に供されますが、アルミダイカストの場合、完成した鋳物は熱処理しないことが多く、これは溶湯を注入する際、高速で行う為、内部に空気などが入った場合、これが熱処理によって膨張して内部欠陥の原因となる可能性があるためと言われています。熱処理の工程がないことも、生産サイクルの短縮化につながっています。

ただ、最近はより高品質なアルミ鋳物への要求とそれに応える技術革新が進み、ダイカスト法の中でも特殊ダイカスト法と呼ばれる手法が普及しつつあります。この手法には真空ダイカスト法や無孔性ダイカスト法などがあり、これらを使う場合は、熱処理(T6熱処理)が可能となっています。この場合、他の金属と同様に、熱処理によって機械的性質、物性値が向上します。大量生産に強いアルミ鋳物の弱点の一つでもあった機械的性質の向上によって用途にも拡がりが出てきています。

アルミダイカストで使われる金型

ダイカストが大量生産が可能な理由としては、繰り返し使用が可能な金型を用いることと、圧力をかけて高速で溶湯が流し込める点、急速凝固によって他の鋳造法よりもはやく溶かした金属を固めることができる点等があります。このため、金型は高価にはなりますが、耐熱鋼などで作られた繰り返し使用可能な高精度な金型を用いるのが通例です。

アルミ地金に含まれる不純物の影響

ダイカスト法では、溶かした金属の冷却が早い為、凝固がはやくなる(急冷凝固)点は述べましたが、こうした急冷凝固による製法の場合、金属の中に含まれている不純物が機械的性質に及ぼす影響が少なくてすむという利点もあります。この特性により、元となる金属である地金として、再生地金を使うことが出来るので、非常にコストメリットがあります。さらに、急冷凝固は、他の鋳造による凝固に比べて金属組織が緻密になるという特徴があり、機械的性質の改善にも役立ちます。また、高速で鋳造を行うにも関わらず、表面の美観がよいという点もメリットの一つと言えます。

アルミダイカストのデメリット

一方、アルミダイカストを適用する際のデメリットとしては、大型品、肉厚品、高強度部材に使う場合は製造時の難易度が上がると言う点があげられます。これは鋳造品の宿命ともいえます。アルミダイカストの中では比較的強度に優れたものもありますが、他の強度を重視した金属系素材に比べると、継続的に強い負荷がかかるような用途には向かないものが多いです。また、製造上の問題としては、溶湯を高速で注入するため、金型の隅にまで、これら溶かした金属が流れ込まないことがあります。

圧力をかけて溶かしたアルミ(溶湯)を金型へ注入していく為、空気を巻き込んで、製品の内部に空洞である「巣」が出来ることがあります。これは鋳巣(いす)ともいい、発生原因によって主に二つがあります。凝固の際の収縮によって発生する「ひけ巣」で、裂かれたような形状をした空孔となり、前述の溶湯注入時に空気やガスを巻き込んで発生する「巻き込み巣」で、丸い形の空孔となります。

鋳造性を維持する為と、金型への熱衝撃や熱の負荷を考慮すると、融点の高い金属や合金には不向きであり、実際はこのダイカスト法が使われる金属はアルミが多く、他に亜鉛やマグネシウム、銅、鉛、錫などがあります。適用可能な金属としては、黄銅が限界と言われており、これ以上の融点を持つ金属にはダイカスト法は難しいとされます。なお、アルミは鉄鋼などの他金属に比べて低めの融点を持ちますが、ダイカスト法を用いる金属の中では高融点の部類に入ります。

融点の高い銅合金などをダイカストで製造すると、金型の寿命が急速に低下するため、生産コスト増につながるという問題もあります。

量産性の高い手法

生産にはダイカストマシンと呼ばれる連続鋳造機を用いて、量産を行います。逆に一品ではコストが高くついてしまいますが、金属から製品になるまでの工程短縮とリサイクルが可能なため、自動車業界ではエンジンまわりやハウジングを中心に特に使われることが非常に多い規格素材です。量産に向いている鋳造技術の中でも他より抜きん出た量産性を持ちます。

アルミダイカストの規格と要求事項

規格上は、従来から存在するJISに加え、ISOから移植された記号が2006年から追加されています。

選ぶ際は、機械的性質や物理的、化学的性質のほか、生産する上で大きく影響する「鋳造性」や「加工性」、地金のコスト(再生地金を使うか否か)、表面処理のしやすさ等も検討項目となります。

またアルミダイカストの材料に求められる要求事項も、他の金属系材料とは少し異なり、ダイカスト性とも呼ばれるこの性質は、主に鋳造性の良し悪しを見ます。凝固収縮が小さいことや、金型への焼き付きがないこと、耐圧性に優れていること、鋳造割れや引け巣などを起こしにくいこと、湯流れ性がよくキャビティ充填性に優れていること、等です。

「JIS H 5302 アルミニウム合金ダイカスト」に規定のある材料

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