銅合金鋳物、鋳造品の用途、成分、種類、記号について

2013年5月18日更新

CACからはじまる記号を持つ金属は、銅合金の鋳造品である銅鋳物であることを示しています。銅の鋳物も、伸銅品と同じように純銅、黄銅、青銅、アルミニウム青銅などの系統別があり、共通している物性もありますが、それぞれがかなり特化した性質を持つため、用途に応じて使い分けられています。

銅合金は優れた導電性や熱伝導率、耐食性、低温に強いなどの特徴を持ち合わせた金属ですが、銅の鋳造品である銅鋳物は、こうした性質に加えて、他の鋳物にはない性能も持つことから、一部の産業分野で多用されています。

銅合金鋳物の主な用途と性質

バルブやコックなどの水や油などの液体が通過する部材によく使われるため、耐圧性が重要なパラメータとなっているのが銅合金の鋳造品の一つの特徴です。耐食性や耐摩耗性とともに耐圧性が必要なのは、例えば油圧、空圧、水圧、温水圧などがかかる機器類、部品類に使われるからです。また、水道関連の部材によく使われることや水質基準の見直しなどもあり、近年の環境負荷や人体への影響から、鉛がどれだけ溶け出すのかという浸出量もパラメータの一つとして検討されることがあります。

電気や熱の伝導性を見込んで使われることも多く、電気伝導性や熱伝導については銀の除くと他の金属では追いつけないほどのパラメータを持ちます。

耐食性も良好ですが、特筆すべきは耐海水性です。アルミニウム青銅が特に強く、温水では黄銅よりも青銅系が強い性質を見せます。耐磨耗性を求める場合には、青銅系がよく使われます。

このように銅鋳物は種類によって特性が異なるものの、銅そのものが着目されるのは、まず先述のとおり高い導電率、電気導電性です。また、たいていの金属は低温になると脆く劣化していく低温ぜい性の問題がありますが、銅にはこうした問題が起きにくいことが知られています。あるいは、耐食性の面では、耐海水性に優れることから、こうした環境に晒される用途でも使用されます。溶解、鋳込み、凝固など性質が同じ銅の鋳物であっても、系統が違うとかなり異なってくることが知られています。

銅合金鋳物の特徴の例

銅の鋳造品は、その成分の種類(各系統)でかなり違いがあることを述べましたが、代表的なものでその特徴を列挙すると、例えばもっとも生産量が多いとされる鉛入りの青銅の鋳造品であれば、次のような特徴があります(もっとも近年は鉛フリー化が進みつつありますが)。

  • 耐食性
  • 耐摩耗性
  • 被削性がよい
  • 複雑な形状を持つ耐圧鋳物が作りやすい
  • 温水用の低圧バルブ、中圧バルブやコックにもっともよく適しているとされる

この材種は、肉厚の部分ほど強度が弱くなっていくという肉厚感受性をもつため、構造材料や高圧環境にはあまり適しませんが、機械的強度に優れたタイプのものも存在します。

また成分に鉛を入れるのは、耐圧性の向上、被削性の向上、潤滑効果のためといわれますが、RoHS指令をはじめ、諸外国でも鉛の含有量を規制する動きにあり、国内でも鉛の使用量を減らす動きにあるため、鉛の量を制限した銅の鋳造品も開発されています。

銅の鋳物、鋳造の製造方法

銅の鋳物の製法としては、砂型鋳造、金型鋳造、連続鋳造、遠心鋳造、ダイカスト、高圧鋳造などがあり、このうち、砂型鋳造がもっとも銅鋳物では多く見られます。ダイカストも行われますが、融点が高いため金型の痛みが激しいため、アルミダイカストほどには多用されていません。

原料となる金属は地金と呼ばれますが、これには全く新しいものと再生したものとが使い分けられます。青銅鋳物や黄銅鋳物は再生地金が多く使われるため、不純物が混入しやすいというデメリットもありますが、コスト面では優位です。

アルミに比べ銅の鋳物は冷めるのがはやく、これに起因する湯回り不良(溶かした銅が十分に金型に流れ込まない)がおきることがあります。ただ、銅鋳物のなかでもアルミニウム青銅、黄銅系は湯流れ性がよい部類です。原料となる地金は溶かして溶湯となった際に、酸化物が少ないほどよい鋳物が作れます。

なお、銅の鋳物は材料別に鋳造の方法が決まっています。遠心鋳造の指定のある材料については、金型による遠心鋳造と、砂型による遠心鋳造の2パターンがあります。JIS規格上はCAC502B、CAC503B、CAC903Bの遠心鋳造とは、金型を用いたものと指定されています。

銅合金の鋳物、鋳造品の種類

以下に、成分の違いによる「系統」別に、どのような種類の鋳物があり、それぞれどんな特徴をもつのか列挙していきます。Cu-Sn、Cu-Zn、Cu-Al、Cu-Pbの4系統が銅合金の基本となり、これらに合金元素を加えてさらに系統が分化していく形になります。不純物として含む元素は、各系統によってそれぞれの元素がどのように影響するのかが変わりますので、系統ごとに見ていく必要があります。

純銅系の銅の鋳物、鋳造品

電気伝導率、導電性を活用するため、もしくは高い熱伝導率を得るために選ばれることが多く、銅の純度が高いものほどこの傾向が強く見られます。架線金具、電気機器の部品全般、電極ホルダーなどに使われます。CAC101、CAC102、CAC103といったCAC100番台の材料がこれに相当します。

黄銅系の銅の鋳物、鋳造品

亜鉛と銅の合金であり、真鍮としても伸銅品では金具をはじめ多くの用途に使われますが、鋳物では意外と使われていません。鋳造性のよさ、塑性加工がしやすいなどの製造面でのメリットのほか、耐食性や耐磨耗性などの性能に優れます。低価格であり、電気・熱の伝導についても青銅と遜色ありませんが、大需要を占める水道系の部品、バルブなどには日本ではあまり使われていないため、量が青銅鋳物に比べてとても少ないです(欧米との水質による違いといわれています)。CAC201、CAC202、CAC203といったCAC200番台がこれに相当します。

高力黄銅系の銅の鋳物、鋳造品

黄銅系統の材料に、添加剤を加えてさらに耐食性や耐磨耗性をあげたものがこのタイプです。船舶や艦艇などの推進器、部品用途に使われています。CAC301、CAC302、CAC303、CAC304といったCAC300番台の材料がこれに相当します。

青銅鋳物系の銅の鋳物、鋳造品

鋳造性のよさ、耐圧性、耐食性にも優れたタイプで、表面の鋳肌もきれいに出るという特徴があります。ただ、性能面をきわめていくと、電気や熱の伝導率では黄銅系よりも弱く、引張強さや耐力の機械的強度面ではアルミニウム青銅や高力黄銅系の鋳造品には及びません。CAC401、CAC402、CAC403、CAC406、CAC407、CAC408、CAC411といったCAC400番台の材料がこれに相当します。

りん青銅系の銅の鋳物、鋳造品

Cu-Sn系の成分を基本として、リンを加えたタイプで、強度、硬度、耐摩耗性の向上を狙ったものです。青銅鋳物系に比べると特に硬さに優れた特徴を示します。また耐磨耗性も良好で、溶湯の湯流れ性もよいことから鋳造性にも優れます。CAC502A、CAC502B、CAC503A、CAC503BといったCAC500番台の材料がこれに相当します。

鉛青銅系の銅の鋳物、鋳造品

ベースはすず青銅で、これに鉛を多く添加したものです。耐衝撃性、耐荷重性や摩擦、磨耗に優れることからしゅうどう部品にも使われます。特に滑り軸受け性に優れていることで知られ、摩擦を受けた際に相手との焼き付きがおきにくく、なじみ性にも優れており、潤滑油に対する耐食性、小さい摩擦係数、熱膨張係数などの要件を満たす材料でもあります。CAC602、CAC603、CAC604、CAC605といったCAC600番台の材料がこれに相当します。

アルミニウム青銅系の銅の鋳物、鋳造品

もっとも機械的強度に優れ、耐食性もよいタイプです。強靭ですが、その反面、複雑な形状が作りにくいという鋳物としての欠点を持ちます。船舶などの大型推進器や海水の淡水化装置などの大型部材にはこの系統のものが使われています。CAC701、CAC702、CAC703、CAC704の4種類のCAC700番台がこれに相当します。

シルジン青銅系の銅の鋳物、鋳造品

すず青銅の代替として開発されたタイプですが、強度や耐食性に優れた性質を持ちます。また溶かした金属の湯流れ性もよいため、鋳物の利点を生かすことができます。溶接やロウ付けにも向いています。CAC801、CAC802、CAC803、CAC804といったCAC800番台がこれに相当します。

ビスマス青銅系、ビスマスセレン青銅系の銅の鋳物、鋳造品

鉛に対する人体や環境への影響から、水道系に最もよく使われる青銅鋳物に、いかにして鉛を使わないかという研究開発が進められてきました。新水質基準の施行に伴い、日本でも水に接する部品への鉛使用について規制されることとなり、こうした鉛にかわりうる代替元素として「ビスマス」や「セレン」を使った新しい鋳物が誕生しています。CAC901、CAC902、CAC903B、CAC904、CAC911、CAC912としったCAC900番台がこれに相当します。

「JIS H 5120 銅及び銅合金鋳物」に規定のある材料

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