球状黒鉛鋳鉄品(FCD材)の用途、機械的性質、成分の一覧

2013年7月23日更新

球状黒鉛鋳鉄品は別名、ダクタイル鋳鉄やノジュラ鋳鉄とも言います。ねずみ鋳鉄品に含有する黒鉛(グラファイト)が片状なのに対し、こちらは黒鉛そのものが球状化しています。晶出するグラファイトが球体ゆえに、よく滑り、耐摩耗性はさらに高くなっています。なお、この黒鉛の球状化は、Mg(マグネシウム元素)が0.04%、CaとCeが0.02%以上鋳鉄に残るようにしておくと実現できます。

ねずみ鋳鉄よりもさらに耐摩耗性が必要な場合や、機械的性質がさらに良好なものが必要な場合に利用が検討されます。 球状黒鉛鋳鉄品の成分についてはJISによれば受け渡し当事者間の協定によるものとされており、参考値以外は特にありません。ただ、組織内の黒鉛の球状化の程度については、特に、需要家と製造者との間で取り決めがない場合は、80%以上の球状化率という規定があります。黒鉛の分布と球状の程度が物理的性質に大きく影響してきます。

JIS規格では16種類(別鋳込み供試材による場合、本体付き供試材による場合)の機械的性質等についての規定があります。

機械的性質を計測する為のサンプルがどのように生産されるのかによって、2パターンに分かれます。本体にくっついた形で本体と同種の鋳型を使ってサンプルを得る「本体付き供試材」と、対象となる鋳物とはまた別に砂型を使ってサンプルを1バッチごとに鋳造し、それをサンプルとして用いる「別鋳込み供試材」の二つがあります。

末尾がAで終わっているものは、本体付き供試材によるものです。記号の末尾にLがついたものは、低温衝撃値が規定されたもので、氷点下20度前後でのシャルピー衝撃値が記載されています。

FCD400はフェライト球状黒鉛鋳鉄で、表面焼入れ硬化をするには浸炭が必要となります。FCD450、FCD500はフェライトとパーライトの球状黒鉛鋳鉄、FCD600、FCD700、FCD800はパーライト球状黒鉛鋳鉄で、パーライト鋼と同様に焼入れが可能です。

鋳鉄品の分類

鋳鉄 ねずみ鋳鉄 普通鋳鉄 FC100、FC150、FC200、FC250、FC300、FC350
強靭鋳鉄 FC300、FC350、ミーハナイト鋳鉄
球状黒鉛鋳鉄(ダクタイル鋳鉄) FCD350-22、FCD350-22L〜

「JIS G 5502: 2001 球状黒鉛鋳鉄品」に規定のある材料記号

別鋳込み供試材による場合:鋳鉄品とは別に、砂型を用いて1バッチごとに鋳造したものをサンプルとする方法

本体付き供試材による場合:鋳鉄品の本体の一部に鋳型をつけてサンプルとする方法

球状黒鉛鋳鉄品(FCD材)の材料記号の変遷:JISの新旧対照表

1995年 1989年 1982年 1971年 1961年
FCD350-22 FCD370 FCD37 - -
FCD350-22L - - - -
FCD400-18 FCD400 FCD40 FCD40 FCD40
FCD400-18L - - - -
FCD400-15 - - - -
FCD450-10 FCD450 FCD45 FCD45 FCD45
FCD500-7 FCD500 FCD50 FCD50 -
FCD600-3 FCD600 FCD60 FCD60 FCD55
FCD700-2 FCD700 FCD70 FCD70 FCD70
FCD800-2 FCD800 FCD80 - -
FCD400-18A - - - -
FCD400-18AL - - - -
FCD400-15A - - - -
FCD500-7A - - - -
FCD600-3A - - - -

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