溶融アルミニウムめっき鋼板のJIS規格|アルミメッキ鋼板の比重、耐熱温度、溶接性、成分、機械的性質

2014年4月5日更新

溶融アルミニウムめっき鋼板とは、鋼板のもつ耐食性や耐熱性を向上させるために、表層にアルミニウムのメッキを溶融法によって施したメッキ鋼板の一つとなります。メッキ鋼板には、ガルバリウム鋼板や亜鉛メッキ鋼板など各種ありますが、このアルミメッキ鋼板の最大の特徴は、鋼板のもつ耐熱温度を上げることができる点です。さらに、耐熱性のほかにも耐食性、熱反射性、耐薬品性、色合い(意匠性)などが強みとして挙げられます。JIS規格ではアルミメッキ鋼板として8種類あり、規格で規定されている内容としては、成分、機械的性質、板厚、メッキ付着量、メッキ密着性、化成処理、サイズ・寸法等になります。

製法としては、アルミと電気メッキの相性が悪い為、鋼板そのものを溶かしたアルミの中に漬ける「溶融メッキ法」(Hot dip)によってアルミメッキをつけますが、このメッキ層の最上層は空気と反応して酸化アルミニウムの薄膜となります。その下にアルミニウム金属層、続いて鉄−アルミ合金層、母材である鋼板となります。

耐熱温度に優れるアルミメッキ鋼板

基本的に、メッキ鋼板の耐熱性というのは「メッキ」の耐熱温度のことで、母材となる鋼板が溶ける前に、通常はメッキが溶けてしまうと意味をなさなくなります。あるいは、メッキ層が無事であっても、変色してしまうと用途としては使えないこともあります。

こうした点からアルミメッキ鋼板の耐熱温度を見ていくと、アルミそのものの融点は650℃前後と高くありませんが、最上層の酸化アルミニウム(Al2O3)はセラミックス膜でもあり、耐熱性・耐食性に優れます。またアルミ金属層の下にも、Al-Feの合金層が出来上がりますが、これも耐熱温度には優れており、鋼板に達して影響を及ぼすまでにかなりの効果を発揮します。

耐熱用にシリコンを添加したグレードも市販されており、詳細は鋼材メーカーの製品ごとに比較する必要がありますが、一般的に、300℃〜350℃であれば熱による変色も発生しません。変色しても問題なく、耐熱温度そのもの、ということであればさらに温度はあがり、500〜600℃という製品もあります。これは融点の低い亜鉛メッキが、200〜250℃程度を耐熱温度としている点と比較しても優れており、溶融アルミメッキ鋼板の耐熱性は、ガルバリウム鋼板に匹敵し、製品グレードによってはこれを上回ります。

意匠性、外観に優れるアルミニウムメッキ

他のメッキ鋼板も、その表面には独特の模様が出るものや光沢が出るもの、色味のあるもの等、ただの鉄板にはない外観を持つものが多いですが、このアルミメッキ鋼板はアルミで覆われている鉄板となるため、独特の銀白色の様相を呈しています。メッキ直後は光沢もあるのですが、これは空気と触れることですぐに酸化膜が表層に形成される為、光沢そのものは失われてしまいます。

熱反射性に優れたアルミメッキ鋼板

亜鉛メッキなどでも一定の温度までであれば熱を反射する性能を持ちますが、温度が上がっていくにつれ、反射できる熱量が減っていきます。こうした点で、アルミメッキの持つ反射性能は際立って優れています。ダクト、熱交換機、ボイラー、焼却炉部品、熱処理治具といった用途で使われるのは、耐熱性に優れているだけでなく、熱反射性に優れているから、ともいえます。

アルカリを苦手とする耐薬品性

耐薬品性についても、メッキ鋼板は鋼板の性能ではなく、メッキ性能によって大きく変わります。アルミは亜鉛とは異なる耐薬品性を持ちます。アルミメッキは弱酸性には強いものの、アルカリ性には弱い特性を持つため、アルカリ性の溶液や雰囲気下で用いる際には留意が必要です。また強酸でも通常、腐食が進行していきます。

一般的な条件下であれば、溶融アルミニウムめっきは、溶融亜鉛めっきよりも耐候性の面でも優れており、長期間の曝露でも外観が変わりにくいという特性があります。さらに、アルミ自体が海水には比較的強い性質や耐硫化性も持つため、工業地帯や海岸エリアの構造物、大気の状態がよくない環境等でも使われます。

アルミメッキ鋼板の溶接性、加工性

溶接性についてはメッキであるアルミニウム自体がやわらかいことと、電気を通しやすいことにより、溶接する部材同士の間の温度上昇が通常の鋼板よりも少なくなるため、溶接に適した条件が変わりますが、悪いわけではなく、一般的に溶接用途でも使われています。また、加工性、例えばプレス成形性については一般用はやや劣るものの、絞り用は、冷延鋼板並みの性能を持ちます。

アルミメッキ鋼板の用途

メッキ鋼板は、ステンレス鋼板と違い、成分のレベルから耐食性に優れた鋼板ではありませんが、反面、安価に作ることができるため、求められる耐性の度合いによって幅広い用途があります。

電気亜鉛メッキ鋼板や冷延鋼板に比べて、耐排ガス腐食性にも優れることから自動車排気系部品(消音器、マニホールドカバー、コンバーターカバー等)にも使われます。耐熱性と熱反射性、さらに外観にも優れることから、暖房機器、トースター、給湯機器、オーブン、ホットプレートなどの生活用品、煙突、ダクト、熱交換機、ボイラーといった熱の伝達や放出に関わる工業製品、焼却炉部品、熱処理治具等にも使われます。

表面は酸化アルミの薄膜や水酸化膜で覆われる為、耐食性は高くなりますが、傷が入ると、亜鉛のように犠牲防食の作用がないため、下の鋼板がダイレクトに腐食の影響を受けます。用途選択の際には、この点も考慮する必要があります。

アルミメッキ鋼板の規格

冒頭で述べた通り、8種類の材料が規定されており、中でもSA2からはじまるものは耐候性を高めたグレードで、メッキが厚くなります。SA1からはじまる記号のものが一般用のものとなります。

SA2からはじまる記号については、表示厚さを原板の厚さとしてもよいことになっていますが、この場合、末尾にBの記号をつけます。(例:SA2C B)

さらに建築用で屋根用の場合はR、建築外板用の場合はAがこのBのあとにつきます。(例:SA2C BR)

溶融アルミニウムめっき鋼板のメッキ量、メッキ厚

メッキの最小付着量(両面メッキの合計値)単位:g/m2
めっき付着量の表示記号 40 60 80 100 120 150 200
3点平均最小付着量 40 60 80 100 120 150 200
1点最小付着量 30 45 60 75 90 113 150

溶融アルミニウムめっき鋼板のメッキ厚さ

メッキ鋼板は、メッキの付着量が耐食性や耐熱性に影響する製品ですが、基本的にはメッキ膜の厚さではなく、鋼板の1平方メートルあたりに付着している重量によって分類しています。このため、メッキを厚さで換算すると下表の通りとなります。

アルミメッキ鋼板のめっき厚さ
めっきの付着量表示記号 40 60 80 100 120 150 200
相当めっき厚さ 0.022 0.033 0.044 0.056 0.066 0.083 0.111

化成処理は、メッキを保護したり、耐食性をさらに高めたりする目的で行われる表面処理で、メッキ鋼板にはつきものとなります。他のメッキ鋼板の規格と同じように、クロメートやクロメートフリー、無処理といったタイプがあり、いずれも製品の材料記号に付記されています。

化成処理の種類
化成処理の種類 記号
クロメート処理 C
クロメートフリー処理 NC
無処理 MS

溶融アルミニウムめっき鋼板の板厚、長さ、幅などのサイズ

標準となる板厚の範囲は0.40ミリから2.5ミリとなりますが、厚さの種類としては下表の通りとなります。

アルミメッキ鋼板の板厚

標準表示厚さ(単位:ミリ)
溶融アルミニウムめっき鋼板の板厚
0.40
0.50
0.60
0.70
0.80
0.90
1.0
1.2
1.4
1.6
2.0
2.3

溶融アルミニウムめっき鋼板の幅と長さ

標準的な寸法は、下表の幅に対してそれぞれ対応する長さが決められています。

溶融アルミニウムめっき鋼板の幅と長さ(単位:ミリ)
幅(標準幅) 長さ(標準長さ)
914 1829, 2438, 3658
1000 2000
1219 2438, 3658

アルミメッキ鋼板の厚さ、長さ、幅の許容差

いずれについても一定の範囲での許容公差が定められています。

アルミメッキ鋼板の板厚の許容差

アルミメッキ鋼板の板厚の許容公差
種類の記号 めっきの付着量表示記号 表示厚さ
1000mm未満 1000mm以上1250mm未満
SA1C,
SA1D,
SA1E,
SA1F
40,
60,
80,
100,
120
0.30以上0.40未満 (±0.06)※参考値 (±0.06)※参考値
0.40以上0.60未満 ±0.07 ±0.07
0.60以上1.0未満 ±0.10 ±0.11
1.0以上1.6未満 ±0.13 ±0.14
1.6以上2.3未満 ±0.17 ±0.18
2.3以上 ±0.21 ±0.22
SA2C,
SA2 400,
SA2 440,
SA2 490
120,
150,
200
0.30以上0.40未満 (±0.08) (±0.08)
0.40以上0.60未満 ±0.09 ±0.09
0.60以上1.0未満 ±0.12 ±0.13
1.0以上1.6未満 ±0.15 ±0.16
1.6以上2.3未満 ±0.19 ±0.20
2.3以上 ±0.23 ±0.24

アルミメッキ鋼板の幅と長さの許容差

幅と長さについて、サイズにどのくらいの誤差があってもよいのかを定めた許容寸法差の規格については下表のとおりとなります。基本的に、他の鋼板でも同様なのですが、マイナス側に振れることは許されていません。

アルミメッキ鋼板の幅と長さの許容差
区分 許容差
+7、−0
長さ +15、−0

溶融アルミニウムめっき鋼板の表示記号

メッキ系鋼板は、メッキ厚や化成処理、用途、寸法などをあわせて表記してはじめて仕様が確定するため、必然的に、これを示す記号は長くなります。材料記号のSA2CやSA1Cというだけではメッキ厚がわかりませんし、どのような用途のものかも特定ができません。

溶融アルミニウムめっき鋼板の表示記号
溶融アルミニウムめっき鋼板の種類 表示厚さ(B)、屋根用記号(R) 化成処理と塗油の記号 めっき付着量表示記号 寸法:厚さx幅x長さ(長さにCがついているのはコイル)
SA2C BR NCX 150 0.60x914x1829

「JIS G 3314 溶融アルミニウムめっき鋼板及び鋼帯」に規定のある材料記号

スポンサーリンク

>このページ「溶融アルミニウムめっき鋼板のJIS規格|アルミメッキ鋼板の比重、耐熱温度、溶接性、成分、機械的性質」の先頭へ

加工材料の性質と特徴(目次)へ戻る

溶融アルミニウムめっき鋼板のJIS規格|アルミメッキ鋼板の比重、耐熱温度、溶接性、成分、機械的性質の関連記事とリンク

ブリキの規格|ブリキ原板やブリキの強度、比重、板厚、すずメッキ量、表面処理
冷間圧延鋼板(SPC材)の特徴と規格、機械的性質(SPCC、SPCD、SPCE、SPCF、SPCG)
熱間圧延鋼板(SPH材)の特徴とJIS規格、比重、板厚(SPHC、SPHD、SPHE、SPHF)
溶融亜鉛メッキ鋼板(SGC材、SGH材)の種類と規格
電気亜鉛メッキ鋼板の特徴と規格、比重、成分、板厚、メッキ厚について
ガルタイト鋼板、ガルファン鋼板、溶融亜鉛−5%アルミニウム合金メッキ鋼板(SZAC、SZAH)の特徴と種類
ガルバリウム鋼板の種類と特徴|溶融55%アルミニウム−亜鉛合金メッキ鋼板の規格
みがき特殊帯鋼の種類と特徴|JIS規格による成分や物性
一般構造用圧延鋼材(SS材)の特徴
めっきの種類と特徴
鋼板の規格と種類の一覧
炭素鋼と合金鋼の違いと使い分け
軟鋼
金属の疲労強度、耐疲労性
金属の靱性、ねばり強さ(靭り強さ、粘り強さ)
冷間加工と熱間加工の違い
鉄鋼、鉄、炭素鋼、ステンレス、鋳鉄、超硬の熱膨張係数
金属の熱伝導率の一覧表
鉄鋼材料、鉄、炭素鋼、工具鋼の比重
鉄鋼、炭素鋼、鋳鉄、純鉄、ステンレスの熱伝導率
鉄鋼、鉄、炭素鋼、ステンレス、ハイスの比熱
鉄鋼、鉄、炭素鋼、ステンレスの電気抵抗
金属単体の比重、密度の一覧表
金属の融点、沸点の一覧表
金属の熱伝導率の一覧表
金属材料の硬度の一覧と比較
合金元素の果たす役割

砥石からはじまり、工業技術や工具、材料等の情報を掲載しています。製造、生産技術、設備技術、金型技術、試作、実験、製品開発、設計、環境管理、安全、品質管理、営業、貿易、購買調達、資材、生産管理、物流、経理など製造業に関わりのあるさまざまな仕事や調べものの一助になれば幸いです。

このサイトについて

研削・研磨に関わる情報から、被削材となる鉄鋼やセラミックス、樹脂に至るまで主として製造業における各分野の職種で必要とされる情報を集め、提供しています。「専門的でわかりにくい」といわれる砥石や工業の世界。わかりやすく役に立つ情報掲載を心がけています。砥石選びや研削研磨でお困りのときに役立てていただければ幸いですが、工業系の分野で「こんな情報がほしい」などのリクエストがありましたら検討致しますのでご連絡ください。toishi.info@管理人

ダイヤモンド砥石のリンク集

研磨や研削だけなく、製造業やものづくりに広く関わりのあるリンクを集めています。工業分野で必要とされる加工技術や材料に関する知識、事業運営に必要な知識には驚くほど共通項があります。研削・切削液、研削盤、砥石メーカー各社のサイトから工業分野や消費財ごとのメーカーをリンクしてまとめています。

研磨、研削、砥石リンク集