順送とトランスファー、タンダムのプレスの違いと比較|プレス加工における金型と加工方法の違い

2016年5月29日更新

プレス加工によって作られる多くの金属部品や金属製品には、その工程の数によっていくつかの作り方に分類することができます。プレスとは、簡単に言ってしまえば、金型などの上や下においた板を圧力をかけてつぶすことによって金型に作れられた凹凸と同じように金属の板を加工していく手法です。原理はこのようにきわめてシンプルですが、現代の工業技術にとってなくてはならないのがこのプレス加工技術で、多くの産業で使われています。

このプレス加工は素材となるブランク材と呼ばれる鉄鋼製の板を曲げたり、打ち抜いたり、絞ったりするため汎用性も高く、たとえば、異なる金型を順番に並べておき、1つの工程でプレスが終わったものを次の型でプレスしていくことで、複雑な形状を持つ金属部品も製造することができます。またひとつの型で複数の加工を可能とするものもあります。金型を一度作ってしまえば、大量生産も容易になる技術です。ただ、複数の工程が必要とされるプレス部品では、一度のプレスで完了してしまう順送加工と呼ばれる方法と、各工程ごとにプレスを打っていく必要のある単工程加工では生産性に大きな違いが出てきます。以下に主要なプレス加工技術の特徴、メリット、デメリットについて述べていきます。

順送、トランスファー、単工程、タンデムの違い

単工程加工

プレス加工法 英語 使用金型
単工程加工 single action die working 単発型、複合型

工程ごとに単発でプレス加工を行う最もシンプルなプレス加工が単工程加工です。本来は人がプレス作業を行う前提の加工です。型をセットし、1度のプレス加工によって加工を行いますので、基本は1工程動作です。一種類の加工だけができる単能型、複数の加工ができる複合型のいずれも使われますが、原則、単工程加工だけでは連続加工や自動加工などを行うプレス加工ではありません。このため、生産性は順送やトランスファーに比べて低くなりますが、少量生産品や大物など、単工程が得意とするものもあります。プレス機の中では一番コストもかからず、単能型を使った場合、型費ももっとも安く抑えることができます。

昨今では、タンデム加工と呼ばれる単工程加工を複数並べて自動搬送装置を取り付けた形のものが散見されます。

タンデムプレス加工(プレスライン加工)

プレス加工法 英語 使用金型
タンデム加工 tandem press line working 単発型、複合型

プレスによる自動加工の一つですが、順送やトランスファーが適用できないような少量品や大型品で威力を発揮します。タンデムプレス加工、あるいは単に「タンデム」と呼ばれることのほうが多いかもしれません。

自動化されているものの、単工程加工を並べたタンデムプレスの場合は、型や設備にトランスファー機構を持たないため、加工工程の少ないシンプルなものや生産量が少ないものに向いています。材料(加工する製品)も基本は手で投入されますが、一部自動搬送を行うこともあります。トランスファーほどの生産性はありませんが、型や配置を変えたりといった臨機応変な加工ができます。タンデムプレスはTDMとも呼ばれます。

トランスファー加工

プレス加工法 英語 使用金型
トランスファ加工 transfer working トランスファー型

トランスファー加工では、異なる工程を受け持つ単工程型が順番に並んでおり、プレスの1サイクルが終わると全工程の製品をグリップして一つ後の工程へ自動で移動させます。このため、各工程ごとに製品を送るための専用の機構がついています(製品送り用のフィンガーがついており、これが全工程の製品を同時につかんで、次の工程で製品を移します)。省略形としてトランスファ、TRFとも呼ばれます。

トランスファー加工に使われる型は、基本、単工程加工に使われる型と同じなのですが、自動でプレスしている製品を移動させていく搬送機構が備わっています。このため、型の製作・設計費用はその分が余計にかかります。

大量生産に向いた方法で、一般的な順送加工に比べると加工速度には劣るものの、歩留まりのよさもメリットのひとつと言われています。また順送加工では、絞りや成形製品において外形が大きく変化するものには適用しづらいデメリットがありますが、トランスファは単工程加工の集合体でもあるため、こうした加工品では逆に強みとなります。

順送り加工、順送加工

プレス加工法 英語 使用金型
順送加工 progressive die working 順送型

順送り加工(じゅんおくりかこう)、順送加工(じゅんそうかこう)は、順送り金型と呼ばれる専用の型を使って行うプレス加工です。プログレ、PRGと呼ばれることもあります。ひとつの金型の中に、複数のプレス加工の工程分の凹凸があらかじめ作ってあります。ロールのように巻いてある長いコイル材をプレス機にセットし、この材料を少しずつ順に送っていくだけで、加工が完了します。

型の内部は、材料が入る部分から1工程、2工程、3工程と加工工程が進行していくように作られています。このため、1つの工程(1回のプレス)だけで複雑な形状の部品も完成するため、プレス加工の中では最も効率が高く、加工スピードが速い手法です。コイル材を送ってプレスしていけば次々に製品が仕上がっていくため、各工程でプレスした製品を次の工程へ移動させるトランスファ機構が不要になります。加工速度、生産効率の面では、大量生産に最も向いているこの加工方法がもっともメリットがあります。

デメリットとしては、1つの金型に複数の工程分の凹凸を順番に作っていく必要があるため、金型設計・加工も複雑で、金型費用がもっとも高額になります。また、大型の部品では対応する順送り金型を作ることが困難です。絞りなどの形状変化の大きい加工は、一つの金型にすべての工程が入ってしまう順送では不得手となることがあります。

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