ゴムにおける列理の意味とは

2021年8月22日更新

ゴムの領域で使われる列理(読み方:れつり)とは、英語ではgrainとも表現されますが、ゴム配合物を加工する工程で表れてしまう異方性のことを意味しています。異方性とは、方向によって特性が変わってしまうことで、例えば正方形のゴムシートがあったとして、横に引っ張ったときと縦に引っ張ったときで伸びや強度などが変わってしまうことを意味します。

ゴム製品のもとになるゴム材料を作る工程では、原料ゴムと各種化学薬品・配合剤を練り合わせて作りますが、このときに、ロールやバンバリー、カレンダーなどのゴム練りを行う機械で原料ゴムと各種薬剤をロールに挟み込んで練り込んでいきます。このときに、練る方向が同じであるため、ゴム分子と各種薬剤が同一の方向に配向してしまうことがあります。ゴム固有のロール機構であるカレンダーを使った際に発生することから、カレンダー列理ともいいます。

製品を作るうえで材料強度や特性にムラが出てしまうため、列理の影響は極力なくしたいところですが、ゴムの種類によっても列理の起きやすさには違いがあります。

特に列理が起きやすいタイプのゴムの特徴は以下となります。ただし、ゴムには補強充てん剤や可塑剤、粘着付与剤、軟化剤など各種配合物を添加するので何を添加したのかということとも深く関係します。

  • 硬いゴム
  • ムーニー粘度が高いゴム
  • 配向しやすいゴム
  • 結晶しやすいゴム
  • グリーン強度の大きいゴム

列理を残した状態のゴム材料を使って金型で成形などすると、出来上がったゴム製品も方向によって強度や伸びなどの特性が違うものが出てきてしまいます。さらに、成形品の寸法にも問題が生じるとされます。

この現象を緩和する対策としては、ゴム練りの行程である分出し(シート出し)直後に熱処理を行う方法や、練りに使っているロールの温度を高めてバンクゴムの温度を高くしてシートを引き取るときのテンションを意図的に弱くすることでひずみが残らないようゆっくり冷却する方法が知られています。冷却した後にさらに再加熱する方法で列理の緩和を行うこともあります。

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