A練りとB練りとは何か

2022年2月14日更新

ゴムの製造過程でA練り、B練りと呼ばれる工程があります。どちらも製品の原料となるゴムに様々な配合薬品を加えて求める配合ゴムを作り出す工程ですが、A練りを行ったあとにB練りを行い、両者には添加される薬剤が異なるという違いがあります。A練りは混練りともいい、B練りはS混とも言います。ゴムは原料ゴムに薬品を練り込んで作っていきますので、これらの工程がまさに肝ともいえる部分になります。

ゴム製品は配合ゴムを作るところから始まる

まずゴム製品は、ゴムの原料に有機薬品、無機薬品、カーボンブラックなどの補強材を練りこんで「配合ゴム」を作り出し、そのあとで加硫と呼ばれる工程を経てゴムの特性を引き出していきます。このゴム原料に一通り薬剤やフィラーなどの添加剤を練り込むことで、「配合ゴム」が出来上がります。

ゴム製品は大きく分けると下表のような工程を経て製品になります。

ゴム製品の製造工程
工程名称 概要
ゴム練り工程 原料ゴムを素練り、配合薬品を添加してゴムを練っていく工程
未加硫ゴム加工工程 ゴム成形を行う。分出し、押出、カレンダーなど製品の種類によって異なる。
加硫工程 加圧・加熱によって加硫を進める工程。弾性を持ち、力を加えられると元に戻ろうとするゴムの性質を持つようになる。
仕上げ工程 後処理等を経て仕上げを行う。製品によりその内容は異なる。
 

A練りとB練りは、上表のゴム練り工程にあるもので、細かくこの工程を見ていくと、素練り→A練り→B練り→分出し→冷却→パレット積みの順序となります。

ゴム製品は加硫だけであれば、そこまで高度なノウハウや技術力は必要としませんが、配合ゴムを自在に作ることができないと、様々なスペックのゴム製品を作ることができないという特徴があります。この辺りは鋼材メーカーから購入した材料をそのまま加工したり、熱処理して用いる加工とは異なります。

ゴム製品に使用するゴムは配合表に基づいて、ポリマーとしての原料ゴムを100として、それに加工助剤、活性剤、カーボンブラック、オイル、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤等といった配合薬品や添加物をそれぞれ重量比でいくつ入れることになっているか定められています。これはさながらゴムのレシピともいえるもので、極めて機密性の高いものです。

A練りとB練りの工程内容

以下に具体的にゴム練り工程におけるA練りとB練りの内容を見ていきます。

A練り

A練りすなわち混練りは加硫系の配合剤を除く配合剤をゴムに練り込むという工程です。混ぜればよいというだけではなく、いかに短時間でゴムに配合剤を均一に混合かつ分散させていくかがポイントになります。

配合表には通常具体的な製品名(メーカー名)も記載し、原料ゴムから混練機に投入する順番で薬剤や添加剤が記載されていますのでその順に入れていくことになります。

一般に、原料ゴムの次に加工助剤、活性剤、老化防止剤、カーボン、オイルといったものを順に投入していく練り工程になります。

練り予定重量のバッチサイズ、バンバリー投入順序と時間、ダンプ温度、冷却水の使い方など原料別に工夫していく必要があります。

B練り

B練りすなわちS混工程は、Sが硫黄のことを示している通り、硫黄や硫黄に限らず他の加硫促進剤をゴム練り機で練ったゴムに分散させる工程のことを意味しています。これは練りゴムの仕上げ工程に相当します。

ゴムに加硫剤を少量ずつ擦り込むようにしてねっていきます。全量を添加したあとは、硫黄の模様がなくってからよく切り返して分散させます。

A練りが終わった状態のゴムに、加硫促進剤、加硫剤を順に投入していく工程になります。

S混が終わった練りゴムをそのまま放置しておくと、蓄熱によってゴム焼けを起こしてしまうので、バッチオフマシンに投入し、ゴム同士の融着を防止するためのタルクや軽炭カルシウムなどを離型剤としてまぶした冷却水につけて冷やします。ゴムの表面に白い粉模様がついているのはこれら離型剤です。

どのようなゴム製品でも、このように原料ゴムに様々な薬品を配合してようやく加硫ができる状態になりますので、加工にかかるリードタイムは、配合ゴムありきで計算されています。これがきれてしまっている場合、ゴム練りを行い、加硫工程に入ることができるまでにかかる時間も計算に入れておかないと正しいリードタイムはつかめないことになります。

ゴムにはNR、SBR、CR、NBR、IIR等様々な種類のものがありますが、こうしたポリマー同士を混合することもあれば、混合しなくとも配合ゴムの内容を変えることで各種の性質・特性を出すことができます。逆に言えば、ゴムの種類が同じでも配合ゴムが違えば、異なるゴムということになります。こうした違いを生み出すのがこのゴム練り工程ということになります。

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