銅と銅合金の種類、特性

2011年1月14日更新

銅は産業や生活に欠かせない代表的な非鉄金属材料の一つで、様々な種類があります。実用化された歴史も古く、紀元前400年前のエジプトの古墳などからも出土しており、世界各国で長いこと使われている馴染み深い材料の一つです。現在実用化されている多くの銅や銅合金は当時とは比較にならないほど多彩な種類と性質を持つようになりましたが、銅の持つ基本的な性質はそう大きくは変わっていません。鉄にはない特性がこの銅を有用な一材料とする所以でもあります。

銅と銅合金の特性

銅の特性の最たるものといえば、加工性のよさと導電性、熱伝導のよさがあげられます。銅線の例を見ればわかるとおり、銀に次ぐ高い導電性・熱伝導性を持つこの材料は、電気部品、電動機や配線・基盤に多数使われています。

古来、銅が良く使われた背景には、加工性のよさもあるといわれます。圧延や押し出しなどの塑性加工がしやすく、展延性に優れた代表金属です。また切削の仕上げ面が美しい、色が豊富などの面でも銅を身近なところで見かける要因といえます。

他に、熱間鍛造性に優れるため、複雑な製品の加工にも向いています。ばね特性にも卓越したものがあり、ベリリウム銅やりん青銅などの疲労強度の高い銅合金が活用されています。鉄鋼材料とは異なり、極低温においても組織が破壊されず、低温脆性に優れた材料でもあります。耐食性についても優れた特性を持ち、貴な金属なため、接触による腐食にも強いとされます。

一般には200℃以下で使い、耐熱性に優れたものでも最高使用温度は250℃から300℃程度となります。一部、例外的に400℃以上で使われるキュプロニッケルのような銅合金もあります。反対に、極低温では脆化しないため、問題なく使うことができます。

多彩な銅の種類

銅は種類別に見ると、純銅、黄銅、青銅、白銅、洋白、キュプロニッケル、ベリリウム銅などがあります。純銅以外は、銅に亜鉛や鉛、錫、アルミ、ニッケルなどを単独もしくは複数組み合わせてある銅合金です。

また銅にはその製法から伸銅品と鋳物があり、実用上は9割近くが伸銅品といわれます。また伸銅の中でも黄銅(真鍮)が最も多く使われる材料となっており、純銅と黄銅で銅需要のほとんどを占めるとも言われます。

銅の記号

銅材料(伸銅)の表記記号も、これらの分類と合致しております。C1020(無酸素銅)など、銅や銅合金はJIS規格上、アルファベットのCと四桁の数字で表します。C1〜の1000番台は純銅もしくは銅を多く含む合金類で、C17〜のベリリウム銅やC19〜のチタン銅なども含むカテゴリーです。C2801やC2700のように2000番台は黄銅や丹銅のような銅と亜鉛のCu-Zn系の銅合金、C3604といった3000番台は加工性をあげるためにPbを添加した快削黄銅、C4621をはじめとする4000番台はCu-Zn系にSn(錫)を添加したネーバル黄銅、C5191を代表種とする「りん青銅」(Cu-Sn-P合金)はC5000番台、C6161やC6191などの6000番台はアルミ青銅もしくは楽器弁用黄銅、高力黄銅、C7351などの7000番台は洋白や白銅(Cu-Ni系合金)といった種類があります。それぞれの特性については各銅合金のページで簡単に紹介していきます。

真鍮の材料記号一覧

銅の代表的な物性値
融点 約1084℃
沸点 約2360℃
比熱(20℃) 385 J/kg・℃
密度 8.96g/cm3(20℃)
縦弾性係数(ヤング率) 117.7kN/mm2
熱膨張率(20〜100℃) 16.8x10-6/℃
導電率 100%IACS
電気比抵抗(20℃) 1.7241 μΩ・cm
抵抗の温度係数(20℃) 0.00397/℃
帯磁率 -0.080x10-6cgs 単位/g

銅(伸銅品)の種類と分類について

製法で大きく分類すると、銅は伸銅品と鋳物になりますが、このうち伸銅品は以下のような分類が可能です。伸銅の形状は、板、条、棒、線、管、ブスバー等となっています。

純銅
無酸素銅、タフピッチ銅、脱酸銅があり、これら3種類の違いは製法上、含有する酸素量の違いです。銅純度99.9%以上で、導電性や熱伝導には特に優れていますが、強度は他の金属と比べても弱くなります。
高銅合金
ベリリウム銅、チタン銅、ジルコニウム銅、錫入り銅、鉄入り銅、コルソン合金など、銅の比率の高い合金で、銅が本来持っている高い電気伝導性や熱伝導性大きく損なわずに強度を高めたものがあります。ただ機械的性質を高めるためには添加元素の量が増え、結果として電気伝導性は下がる傾向にあります。685N/mm2以上の高い強度を持つものや、再結晶強度が高く耐熱性に優れたものなどがあります。
黄銅(真鍮)
黄銅(もしくは真鍮、ブラスとも言います)は最も使用量の多い銅として知られます。丹銅、雷管用黄銅、七三黄銅、六四黄銅、65:35黄銅、快削黄銅、ネーバル黄銅、アドミラルティ黄銅、アルミニウム黄銅、高力黄銅があり、ベースとなるのは銅と亜鉛の合金で、ここにPbやSn、Alなどを添加して各々特徴あるものにしています。
青銅
Cu-Sn系の銅合金である「すず青銅」やこれに「りん」(P)を少量添加した「りん青銅」、快削りん青銅、アルミニウム青銅があります。
銅ニッケル合金
銅とニッケルの合金には白銅、キュプロニッケル、洋白、快削洋白があります。「白」の文字が入っていることから容易に想像できる通り、これらは白っぽい銅合金です。

スポンサーリンク

>このページ「銅と銅合金の種類、特性についての一覧」の先頭へ

加工材料の性質と特徴(目次)へ戻る

銅と銅合金の種類、特性についての関連記事とリンク

銅の錆の種類と成分|銅に出る錆の色と化学式は
真鍮、黄銅の材料記号一覧
銅合金の導電率について
銅合金の強度、機械的性質について
銅合金の質別記号について
銅の比重、密度の一覧
純銅の種類、成分、特徴
無酸素銅|C1020
電子管用無酸素銅|C1011
タフピッチ銅|C1100
りん脱酸銅|C1201
りん脱酸銅|C1220
りん脱酸銅|C1221
高銅合金の種類|ベリリウム銅、チタン銅、銀入り銅、錫入り銅、クロム銅、ジルコニウム銅、銅鉄合金
コルソン合金
錫(すず)入り銅|C1441
ジルコニウム入り銅|C1510
鉄入り銅|C1921
鉄入り銅|C1940
ばね用ベリリウム銅|C1700、C1720
ばね用低ベリリウム銅|C1751
ばね用チタン銅|C1990
黄銅(真鍮)の種類と特徴、成分
雷管用銅(C2051)
丹銅(C2100、C2200、C2300、C2400)
七三黄銅(C2600、C2680)
65/35黄銅(C2700、C2720)
六四黄銅(C2800、C2801)
快削黄銅(C3560、C3561、C3710、C3713)
すず入り黄銅(C4250)
ネーバル黄銅(C4621、C4640)
アドミラルティ黄銅(C4430)
アルミニウム黄銅(C6870、C6871、C6872)
高力黄銅(C6782、C6783)
青銅の種類、成分、特徴
りん青銅|C5050
りん青銅|C5071
りん青銅|C5102
りん青銅|C5111
りん青銅|C5191、C5212
快削りん青銅|C5341、C5441
ばね用りん青銅|C5210
アルミニウム青銅|C6140
アルミニウム青銅|C6161
アルミニウム青銅|C6191
アルミニウム青銅|C6241
アルミニウム青銅|C6280
アルミニウム青銅|C6301
銅ニッケル合金の種類と特性|白銅、キュプロニッケル、洋白
白銅、キュプロニッケル|C7060
白銅、キュプロニッケル|C7150
ニッケルすず銅|C7250
洋白|C7351
洋白|C7451
洋白|C7521
洋白|C7541
ばね用洋白|C7701
快削洋白|C7941
緑青には毒性があるか
銅(元素記号 Cu)の用途、特性、物性、密度、比重、融点、沸点など
鉄と非鉄の違い
非鉄金属の種類
伸銅品メーカー(純銅、白銅、黄銅、青銅、ベリリウム銅、洋白など)の一覧
第74類 銅及びその製品|HSコードの一覧表

砥石からはじまり、工業技術や工具、材料等の情報を掲載しています。製造、生産技術、設備技術、金型技術、試作、実験、製品開発、設計、環境管理、安全、品質管理、営業、貿易、購買調達、資材、生産管理、物流、経理など製造業に関わりのあるさまざまな仕事や調べものの一助になれば幸いです。

このサイトについて

研削・研磨に関わる情報から、被削材となる鉄鋼やセラミックス、樹脂に至るまで主として製造業における各分野の職種で必要とされる情報を集め、提供しています。「専門的でわかりにくい」といわれる砥石や工業の世界。わかりやすく役に立つ情報掲載を心がけています。砥石選びや研削研磨でお困りのときに役立てていただければ幸いですが、工業系の分野で「こんな情報がほしい」などのリクエストがありましたら検討致しますのでご連絡ください。toishi.info@管理人

ダイヤモンド砥石のリンク集

研磨や研削だけでなく、製造業やものづくりに広く関わりのあるリンクを集めています。工業分野で必要とされる加工技術や材料に関する知識、事業運営に必要な知識には驚くほど共通項があります。研削・切削液、研削盤、砥石メーカー各社のサイトから工業分野や消費財ごとのメーカーをリンクしてまとめています。

研磨、研削、砥石リンク集