アルミニウム合金の特性と種類、用途について

2024年2月18日更新

アルミは合金の種類はJIS規格に定められている規格材だけでも、純アルミ・アルミ合金は展伸材(圧延用)で1000系10種類、2000系10種類、3000系4種類、4000系2種類、5000系12種類、6000系6種類、7000系5種類、8000系2種類の合計51種類あり、さらに鋳造用で49種類、ダイカスト用として20種類の規定があります。JIS以外の各国の規格や登録管理されている数で見ると、400種類を超えるバリエーションがあります。軽くて強いという比強度に優れた特性のほか、成分と熱処理の使い分けで多彩な合金が生成可能で、引張強度も最小は60MPa程度〜600MPaを超えるものまでとにかく種類が豊富です。

アルミニウムの種類

アルミニウム(Al)は非鉄金属の代表的な材料の一つで、通常は成分の99%以上がアルミである「純アルミニウム」か、「アルミニウム合金」の形で使います。合金がそれ以外かという視点ではまずこの2系統の種類があります。この他の種類の分け方としては、製法から「展伸材」と「鋳物材」に分けることができます。

前者の展伸材とは、圧延加工される板材、条、棒、線、管、形材、鍛造品や箔の形状のものを指し、アルミニウムとその合金のほとんどはこの展伸材と言われるものです。また、鋳物材とは砂型、金型に溶かしたアルミを流し込んで固めた鋳物で、大量生産の場合はダイカストを用いて製造されることも多く、複雑な形状を持つ部品や製品、例えばシリンダヘッドやクランクケース、クラッチハウジング、ピストン、自動車用ミッションケース等で使われます。

切削等の削りだしの材料としては展伸材、溶かして鋳造用として使われるのが鋳物材ということになります。両者はいずれも加工方法がまったく違いますので、アルミ合金としての系統分類は類似していても成分に関する規定も異なります。展伸材は、アルミを識別するための材料記号(JIS)で、Aに続いて数字4桁の数字で表示されている材料となります。例えば、A5052、A6061、A5083、A1050、A7075、これらはいずれも展伸材の規格材料となります。ACからはじまるAC1A、AC1B、AC2A、AC2B、AC3A、AC3B、AC4A、AC5A、AC7A、AC8A、AC9Aといった表記のものはアルミ合金の鋳造用材料、つまり鋳物であることを意味しています。鋳造品の中でも、ADCからはじまる記号を持つADC12、ADC3、ADC5といったものはアルミダイカスト用の規格材となります。

アルミ合金のメリットとデメリット

アルミの最大のメリットの一つは比強度の強さといわれ、これは引張強度÷密度で割り出される指標です。つまり比強度に優れる材料は、軽さのわりに強度が強いというわけです。

また、他の金属材料との比較でみると、例えば鉄鋼材料であれば低温脆性と呼ばれる低温環境での強度低下・靭性低下や脆性破壊が悩みの種となりますが、アルミにはこれがありません。むしろ低温では強度・伸びが大きくなる特質があります。

非磁性であるため、磁気の影響が懸念される用途にも検討されます。

一方で、デメリットとしてはコスト高の点、比強度が高いといっても、出せる強度や硬度には限界があるため、同一の体積でこれらの指標を高めたタイプの鉄鋼材料には及ばない点が挙げられます。硬さ、引張強さが鉄鋼系に比べて低くなり、さらに剛性を見るためのヤング率も低めの値となります。つまり変形しやすい素材ということになります。

また他の金属と比べて融点が低いことは鋳造での大量生産等を考えるとメリットになりますが、耐熱性が求められる用途では強度が低下してしまうのでデメリットの一つとなります。

熱伝導率が高い点や熱や光の反射率が大きい点は用途によってどちらにもなる要素といえます。

下表にアルミニウム・アルミ合金のもつメリット、デメリットの主要なものをまとめました。

アルミ合金のメリットとデメリット
メリット デメリット
  • 軽いわりに強度に優れる(比強度が高い)
  • 加工しやすい(切削、溶接)、鋳造やダイカストにも向く
  • 熱伝導率が高い(用途によってはデメリットにもなり得る)
  • 低温脆性がないため、耐寒性があり、低温環境でも壊れにくい
  • 鉄鋼材が苦手とする耐海水、耐水性に比較的優れる。表面が強固な酸化アルミニウムで覆われているので耐食性もよい(ただし耐食性に特化した材料には及ばない)。
  • 非磁性である
  • 金属の中では融点が低く、耐熱性が低め
  • 鉄鋼材に比べ価格が高い
  • 鉄鋼材に比べ硬度が低い
  • 比強度は優れるが、同じ体積の場合、鉄鋼や他の高強度材に引張強度は及ばない
  • 鉄鋼材に比べ剛性(ヤング率)が低い為、変形しやすい
  • 白錆が出ることがある、耐食性はステンレスには及ばない
  • 熱処理できないアルミ合金がある
  • 電位が低いため、ステンレスや貴金属、銅などと水のある環境で接触すると腐食してしまう。この為、銅イオンや鉄イオンに弱い。水配管には使用できない。
  • 無機酸、塩類には侵される
  • 異種金属との接触による腐食に弱い(鉄や銅との接触に注意)

アルミは鉄よりも軽く熱処理も可能

数ある材料の中でもアルミニウム合金が選ばれることが多い背景には、この材料の最大の特徴とも言える「軽さ」が挙げられます。比重は約2.7で、これは鉄の約7.87、銅の約8.96に比較して約3分の1程度しかありません。このことから航空機にも積極的に使われてきました(近年は航空機用途ではチタンf合金と強化プラスチックの利用も増加しています)。

構造用途として様々な部材を支える金属としては、チタンやマグネシウム合金は価格が高すぎて折り合わず、必然的に非鉄金属の分野では主要な選択肢となります。

熱処理・非熱処理合金の違い

またこうした軽量性のほか、鉄鋼材料とはやや異なる性質を示すものの、添加元素を加えて合金にし、熱処理をすることで多様な性質を見せる点もアルミの工業用途での利用が多いことの理由と言えます。アルミの場合、熱処理して用いる合金と、非熱処理合金とに分けて考えることもできます。加工硬化を利用して熱処理を行わずに非熱処理材として使用されるものと、熱処理を前提として使用されるものとに分類できます。

ここでいう熱処理とは、熱処理硬化性のことを意味し、熱をかけることで硬くなる性質を言います。したがって、非熱処理合金であっても、焼きなましや均質化のための熱処理は行われる前提です。熱処理合金のほうは、加熱することによって時効析出により強度を上げることができる材料です。熱処理した後に加工硬化による強度アップを狙ってさらに冷間加工することもあります。一方で、非熱処理合金に分類されるものは冷間加工を行うことで加工硬化によって硬度・強度を上げていきます。

アルミニウム・アルミ合金の熱処理、非熱処理の違い
種別 熱処理合金 非熱処理合金
圧延用
  • 2000系アルミ合金
  • 6000系アルミ合金
  • 7000系アルミ合金
  • 1000系純アルミ
  • 3000系アルミ合金
  • 4000系アルミ合金
  • 5000系アルミ合金
鋳造用
  • AC1B系アルミ合金
  • AC2A、AC2B系アルミ合金
  • AC5A系アルミ合金
  • AC4A系、AC4C系アルミ合金
  • AC4B系アルミ合金
  • AC4D系アルミ合金
  • AC3A系アルミ合金
  • AC7A系アルミ合金

アルミニウムの持つ特徴|物性、機械的性質、物理的性質

各種アルミニウム合金のもつ性質としては、軽量性のほか比強度の高さや鍛造性、加工性(押し出し性、深絞り性)、耐食性(耐水、耐海水)、装飾性、無毒性、非磁性、真空特性の良さ(ガス放出率が小さいため真空到達性能が高い)、良好な電磁波や熱の反射、リサイクル性が高いなどが挙げられます。これらはそれぞれのアルミ合金ごとに成分組成が異なり、また熱処理によっても性質をある程度変えることができるため、

アルミの削り出し等、この材料の加工性の良さは切削加工をはじめ、プレス、ダイカスト製品の生産量の多さが示す通り、折り紙つきです。また、アルミはその材料の表面にAl2O3(酸化アルミニウム)の酸化皮膜を常にまとっており、耐食性についても優れた性質を持ちます。アルマイト処理(陽極酸化処理)でこのAl2O3膜を意図して作り出して耐食性を強化することもできます。

アルミニウムの代表的な物性値(純アルミ)
融点 約660℃
沸点 約2520℃
比熱(100℃, J/kg・℃) 917℃
融解潜熱(kJ/kg・℃) 396℃
熱伝導率(25℃, W/m・℃) 238℃
導電率(%IACS) 64.94
比抵抗(20℃, μΩ・m) 265.48
体積磁化率(cgs, emu) 6.27 x 10-7
密度 2.7mg/cm3(20℃)
縦弾性係数 79kN/mm2 (≒7000kgf/mm2
横弾性係数 26kN/mm2 (≒2600kgf/mm2
ポアソン比 0.33
線膨張係数 24x10-6/℃

高い熱伝導性と電気伝導性

アルミニウムの熱伝導性は高い値を示し、特に純アルミニウムは電気伝導性に優れます。鉄と比べ約3倍の熱伝導率を持つと言われます。低温環境下でも鉄鋼材料のように脆性破壊を起こすことなく使うことができる「低温じん性」も有します。裏返せば、低温脆性のない材料となります。

低い耐熱性と融点

耐熱性についてはアルミニウムの融点は約660℃で、金属材料としてはかなり低部類になります。実用上、200℃以上では機械的強度が相当低下します。ただし、これは鋳造性がよいことの裏返しでもあり、融点の低さのほか、溶けた状態のアルミニウムも表面がAl2O3の膜が保護されているため、周囲のガスを吸収しにくく、湯流れも良好で鋳造しやすい材料です。

耐食性

また鉄鋼材料では錆の問題がついてまわり、赤錆をはじめ、腐食による劣化に悩まされ防錆対策を講じる必要がありますが、アルミについては白錆が発生するものの、これらはアルミ自身を劣化させるものとは異なります。強固な酸化アルミニウムの皮膜となります。もっとも外観が重視される用途では、白錆発生もNGとなるため、腐食に強いアルミ合金を選択するか、アルミ用の防錆対策を施す必要があります。

ただ、こうした良好な耐食性というのは、錆に弱い鉄鋼材と比較した場合であって、耐食性に特化したステレンス等と比べると腐食に対してはそこまで強くなく、また電位の関係で鉄、銅と組み合わせて使うような場合、接触腐食によりアルミ合金が錆でダメになってしまうことがあります。

 

JIS規格におけるアルミニウム合金の種類

 

アルミニウムも、目的とする特性(機械的性質、耐食性、耐水性、耐海水性など)に応じて各種添加元素を加えて幅広い種類の合金として使うことができます。これらは通常「材料記号」で表され、アルミの場合、「展伸材」と「鋳造材」に大別できます。展伸材は、形状として板・条・棒・線・管・鍛造品・箔などがあります。鋳造材は鋳物ですので、その製法から「砂型鋳物」「金型鋳物」「ダイカスト」に分類できます

アルミのJIS記号の一覧表

アルミニウム展伸材と鋳物材

アルミニウム 1000系(純アルミニウム系)
材料記号が1000番台のアルミで純度99%以上の工業用純アルミのことです。1100や1200が代表的な材料です。非熱処理で用います。強度は弱いですが、耐食性に優れ、溶接性も良好です。強さを求められない用途では候補となります。展延性がよいのでよく伸び、箔としても使えます。アルミの純度が高くなるほど強度はさらに落ちていきます。反対に、高純度のものほど耐食性、導電率、伝熱性、反射率は高くなっていきます。
アルミニウム 2000系(Al-Cu-Mg系:アルミ銅マグネシウム合金)
材料記号が2000番台のアルミで、機械的強度向上に効果のあるCuを添加したアルミ合金で、熱処理して用います。高力合金に分類され、ジュラルミンとして知られるA2017や超ジュラルミンの別名を持つA2024もこの系統となります。このアルミ合金は熱処理次第で鉄鋼材料に匹敵する強度を持ちます。ただし、銅を含有するため耐食性が下がり、強度が強いものほどさらにその傾向が色濃く出てきます。最も強い強度はT6材となりますが、これらは耐食性も最も低くなります。表面に耐食性に優れた純アルミを張り付けるいわゆるクラッド材のようにして使う方法もあります。A2011のように快削性を狙った合金もありますが、溶接性や溶融性については他のアルミ合金に比べて劣る傾向があります。切削性には優れます。
アルミニウム 3000系(Al-Mn系:アルミマンガン合金)
材料記号が3000番台で、Mnを添加することでアルミの加工性や耐食性を低下させずに強度をあげたタイプです。非熱処理して用いるアルミです。成形性がよいため、用途が幅広いことでも知られます。ただし切削性についてはあまりよいほうではありません。
アルミニウム 4000系(Al-Si系:アルミシリコン合金)
材料記号が4000番台で、Siを添加して熱膨張を抑えて耐摩耗性を改善したアルミです。非熱処理して用います。添加するシリコンの量によって性質がかなり変わり、A4032のようにCuやNi、Mgとあわせて添加することで耐熱性向上をはかったアルミ合金もあります。A4043はろう材としても使われますが、これはSiの添加量が少ない所以の性質を活かしたものです。アルマイト処理をすると表面が灰色になるため、意匠性を活かした建材にも使われます。
アルミニウム 5000系(Al-Mg系:アルミマグネシウム合金)
材料記号が5000番台で、Mgを添加して強度や溶接性を向上させたアルミです。別名ヒドロナリウムとも呼ばれます。Mgの添加量によって装飾用や構造用に使われます。非熱処理型です。加工硬化によってかなり硬くなるので、熱処理せずとも使用できる所以です。耐食性に非常に優れたアルミ合金のグレードです。海水や工業地帯といった腐食の起きやすい環境でも使われます。ただし、添加しているMg量が多いと、加工時の応力が残っていると応力腐食割れが起きる危険性があります。粒界腐食抑制のため焼きなましをして使う方法や応力腐食割れの発生を抑制するためにMg量を下げてMn量を添加したA5083やA5086のようなアルミ合金もあります。
アルミニウム 6000系(Al-Mg-Si系:アルミマグネシウムシリコン合金)
材料記号が6000番台で、MgとSiを添加して強度、耐食性を向上させたアルミです。熱処理型になります。アルミ合金の中では電気伝導率が高いことで知られるグレードでもあります。A6101は55%IACS以上となり高強度導電材料となります。
アルミニウム 7000系(Al-Zn-Mg系:アルミ亜鉛マグネシウム合金)
材料記号が7000番台で、ZnとMgを添加してアルミ合金の中で最も強度を高めたアルミです。熱処理型の材料です。超々ジュラルミンと呼ばれるA7075もこの分類です。2000系と並んで高力合金となりますが、応力腐食割れが特に起きやすいことでも知られるため、このグレードは熱処理を適切に行う必要があります。また強度と引き換えに、耐食性、溶接性、成形性いずれもよくないです。銅を含まないものは、熱処理により耐食性や応力腐食割れ性については改善可能です。
アルミニウム 8000系(Li添加系:アルミリチウム合金)
材料記号が8000番台で、2000系、5000系、7000系などの高強度のアルミ合金にさらにLi(リチウム)を添加して低密度・高剛性にしたアルミです。
アルミニウム鋳造品の一覧
JIS H 5202に規定されたアルミの鋳物品の一覧です。またダイカストに用いられるアルミ合金はJIS H 5302に規定されています。

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