日本における原産地表示、原産地証明、原産地規則などの制度

2013年10月15日更新

産品がどの国の原産品であるかは貿易上、関税の決定をはじめ、規制の有無の判別、許認可の判別、統計上の集計などに用いられる重要な情報の一つです。

物品がどの国のものかを規定するルールについては、世界共通のものは無く、世界貿易機関(WTO)に加盟している国は同機関における協定によって決められている大枠のルールに則って、各国で原産地の基準を決めています。さらにいえば、法令や発行主体によってもルールが異なります。

この物品の原産国を決めるルールについては、いくつかの種類があり、目的によって使い分けられています。原産国を決める目的というのは、日本の場合、以下のように分けることが出来ます。大別すると、以下の2分類が主要なものとなります。

  • 国内流通目的で製品に原産国を表示させるため
  • 貿易上(通関上)、輸出や輸入をする際に原産国であることを証明・記載する必要があるため

双方について、原産地基準と言われる「何を持って原産品とするのかについて定めたルール」や、「表示方法を規定したルール」、「虚偽表示を規制したルール」などが存在します。

日本の原産地制度が特に複雑になっているのは、共通する一つの法令でルールや規制を設けておらず、目的によって複数の法令が存在し、表示方法や規制方法について規定していることに加え、法令と業界団体の自主ルールも混交して存在していることに起因します。

国内流通目的で製品に原産国を表示させるため

表示方法を規定したもの

国内で流通する特定の物品については、原産国の表示が義務付けられていたり、表示方法についての指定があります。食品や衣料品などがその代表格です。

代表的なものに以下のようなものがあります。

JAS法の対象となる飲食料品
原産国表示が義務となる品目です。生鮮食品など。加工品についてはこの限りではなく、表示義務の無いものもあります。
衣料品の「原産国」を決めるためのルール
業界団体である日本化学繊維検査協会(カケンテストセンター)が定めています。衣料品については実質的変更をもたらす行為を品目ごとに定めており、例えば、製織、染色、縫製、編立、刺繍、接着・縫製などによる甲皮と底皮の結合などとなっています。
公正競争規約上の表示条件があるもの
品目によって原産地の表示が必要なものがあります。ただ基本は、不当な表示、虚偽の表示を規制することが中心になります。
事業者や団体が自主的に設定するルールの為、これに参加していない事業者の場合は、景品表示法の規定に基づいた措置となります。例:1.食料品(緑茶・紅茶、清涼飲料等)2.衣料品(織物、ソックス等)3.身のまわり品(かわ靴)4.雑貨(腕時計)
公正競争規約とは、景品表示法第12条の規定によって、公正取引委員会の認定を受けた事業者又は事業者団体が表示又は景品類に関する事項について自主的に設定する業界のルールのことです。原産地表示に関しては、食品関係35規約、酒類関係7規約、その他25規約存在します。
【参考】公正競争規約が設定されている業種表示に関する公正競争規約(68規約)

虚偽表示を規制したもの

原産国の不当な表示を禁じた法律としては、4つのものがある。

商標法

原産国の不当表示禁止が規定されている。

関税法

原産地を偽った外国貨物は輸入を許可しない。

景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)

第4条第1項第3号の規定に基づく「商品の原産国に関する不当な表示」昭和48年10月16日公正取引委員会告示第34号)があります。原産国の表示についてどのようなものが不当表示かを定め、必要に応じて措置命令を行うためのものです。

不正競争防止法

原産国や原産地以外についての偽装表示も対象となる。

輸出入取引法

不公正な輸出取引を防止するための法令で、輸出においては虚偽の表示をし、是正の措置を全く講じない場合、1年以内に限り特定の品目や仕向地を定めて貨物の輸出を停止させることができます。また処分した旨を公表することも出来ます。

輸入においては、虚偽の原産国や誤認の恐れがある原産地が表示された物品については、表示の訂正か、もともとの輸出国へ返送させることができます。

業界の自主ルール

日本アパレル・ファッション産業協会(JAFIC)では「アパレル業界における原産国表示マニュアル」を自主ルールとしてまとめています。

原産国を決定するための工程を繊維製品の種類ごとにまとめています。また実質的な変更にならない、つまり原産国とはならないケースについても個別に記述があります。

「商品の原産国に関する不当な表示」の衣料品の表示に関する運用細則

「商品の原産国に関する不当な表示」(昭和四十八年公正取引委員会告示第三十四号)の運用基準第十一項に基づき、衣料品の表示に関する運用細則を定めたものとなります。

貿易上(通関上)、輸出や輸入をする際に原産国であることを証明・記載する必要があるため

日本の場合は、輸出、輸入の双方で原産地表示がなくとも通関上の問題にはなりません。ただし貿易には必ず相手国が存在する為、その国の法制度によっては、物品の「原産国」を証明する必要があります。

このように、ほとんどは輸入先の国での原産性が問われる為、原産地証明書などをつける場合があります。証明書がなくとも、インボイス上の表記だけで足りる国もあります。

一般に通常の「原産地証明書」を求められる場合には、物品の原産地を決めるルールとしては、関税法による原産地基準が準用されます。

関税法による原産地基準を定めた3つの条項

これは、輸出する際の原産地基準を定めた法律が日本には無い為、関税法が準用されている形になっています。

また原産地を証明する貿易上の書類としては、以下のようなものがあります。

原産地を証明する書類
原産地証明書 WTO加盟国(ほとんどの国が加盟)の間の貿易では、通常の関税率であるMFN税率が適用されます。これ以上高い関税をかけないという取り決めに則った税率でもあります。このWTO加盟国の原産品であることを証明するためにも使われます。国によっては原産地証明書がないと輸入できないことがあります。これにはいくつかパターンがあり、全品目についてそのようなルールを設けている場合と、特定品目について必ず原産地証明書を求めるケースとがあります。
特定原産地証明書 FTAやEPAといった二国間や多国間で関税を減免する為の協定を結んでいる場合、参加国の原産品であることを証明するために協定ごとに固有の「原産地規則」を定めています。この場合、原産国を決めるルールは結んでいる協定ごとに異なるため、ある物品については日本の原産品として認定可能なものが、別の協定を用いる場合には日本の原産品とはならないこともあります。
特恵原産地証明書 開発途上国から先進国へ物品を入れる際、関税を大きく低減させる為の仕組みをGSPといいますが、これに参加している先進国の場合、物品に対象となる開発途上国の特恵原産地証明書(フォームA、form A)がつけられていると、関税の減免が受けられます。この際の、原産地基準についても日本では関税法に準じたものとなります。

日本の原産地規則

前述したとおり、どのような物品を原産品として認定するかを定めたものが原産地規則(Rule of Origin)、英語では略してROOとも書かれますが、FTAやEPAなどの証明に使うものを除くと、日本では輸出・輸入ともに関税法に則ったルールが一般的な規則となります。

WTO協定の「原産地規則」の部分では、以下の3通りの原産地規則を採用することが認められており、日本はこのうち1を採用しています。

  • 1.関税分類番号変更基準(Criterion of change of tariff classification)
  • 2.付加価値基準(ad valorem percentage criterion)
  • 3.加工工程基準(criterion of manufacturing or processing operation)

さらにいえば、1の関税分類番号変更基準のうち、上4桁の分類番号が変更していることが求められる基準が採用されています。

製造工程が二カ国以上にまたがるような場合でも、「実質的な変更をもたらし、新しい特性を与える行為を行った最後の国」での加工について、上記と同様にHSコードが変わっているかを見ていきます。

このように、原産性があるかどうかは「実質的な変更がその国でなされたかどうか」を基準に判定しますが、その判定の方法は、原材料・部品のHSコードが完成品のHSコードから一定のレベルで変わっているかどうか、で見ていきます。

貿易上、あらゆる物品にはHSコードと呼ばれる番号がふられています。上から6桁までは世界共通の番号となります。これらは体系的な構成をしている為、似たもの同士が近い番号で分類されています。

HSコードの分類例:真空ポンプ
HSコード 8414.10
上2桁まで 類=84
上4桁まで 項=8414
上6桁まで 号=8414.10
HSコードによる分類
84(類) 原子炉、ボイラー及び機械類並びにこれらの部分品
8414(項) 気体ポンプ、真空ポンプ、気体圧縮機及びファン並びに換気用又は循環用のフード(ファンを自蔵するものに限るものとし、フィルターを取り付けてあるかないかを問わない。)
8414.10(号) 真空ポンプ

日本の輸出品で、「日本原産」というためには、最終的に真空ポンプとなるための加工を日本で行っており、その際に用いる「部品」「材料」のHSコードの上4桁が8414以外であれば、その真空ポンプが日本製、日本が原産国ということになります。ただし、一般の原産地証明については判定を行う機関はありませんので、自主的に行い、エビデンスとなる資料を輸出者が保管していることが望ましいとされます。

商工会議所における一般原産地証明書における原産地判定基準もこの輸入物品に対する原産地の判定基準を準用していますが、当該機関では判定を行っていないため、あくまで輸出者自身がその基準を理解して申請する必要があります。

虚偽の原産地を表示して輸出した場合は?

輸出入取引法においては、以下の制裁が課されることがあります。

虚偽の原産地表示の罰則例
輸出 1年以内、品目又は仕向地を定めて貨物の輸出を停止、処分した旨を公表。
輸入 虚偽の原産国や誤認の恐れがある原産地が表示された物品については、表示の訂正か、もともとの輸出国へ返送させることができます

また輸出せずに、国内で流通するものについては表示違反の場合、先に述べた国内法によって罰則が課される事があります。

【参考】輸出や輸入時に適用される原産地規則の根拠となる条文

【関税法施行令第4条の2第4項】

 第一項第二号に規定する原産地とは、次の各号に掲げる物品の区分に応じ当該各号に規定する国又は地域(第三十六条の三第一項第二号、第三十六条の四第二号、第五十一条の四第一項第二号、第五十一条の十二第一項第二号及び第五十九条第一項第二号において「原産地」という。)をいう。
一  一の国又は地域において完全に生産された物品として財務省令で定める物品
二  一の国又は地域において、前号に掲げる物品以外の物品をその原料又は材料の全部又は一部としてこれに実質的な変更を加えるものとして財務省令で定める加工又は製造により生産された物品

【関税法施行規則第1条の5及び同第1条の6】

(完全に生産された物品の指定)
第一条の五  令第四条の二第四項第一号 (特例申告書の記載事項等)に規定する財務省令で定める物品は、次に掲げる物品とする。 一  一の国又は地域(その大陸棚を含む。)において採掘された鉱物性生産品 二  一の国又は地域において収穫された植物性生産品 三  一の国又は地域において生まれ、かつ、成育した動物(生きているものに限る。) 四  一の国又は地域において動物(生きているものに限る。)から得られた物品 五  一の国又は地域において狩猟又は漁ろうにより得られた物品 六  一の国又は地域の船舶により公海並びに本邦の排他的経済水域の海域及び外国の排他的経済水域の海域で採捕された水産物 七  一の国又は地域の船舶において前号に掲げる物品のみを原料又は材料として生産された物品 八  一の国又は地域の船舶その他の構造物により公海で採掘された鉱物性生産品(第一号に該当するものを除く。) 九  一の国又は地域において収集された使用済みの物品で原料又は材料の回収のみに適するもの 十  一の国又は地域において行なわれた製造の際に生じたくず 十一  一の国又は地域において前各号に掲げる物品のみを原料又は材料として生産された物品

(実質的な変更を加える加工又は製造の指定)
第一条の六  令第四条の二第四項第二号 (特例申告書の記載事項等)に規定する財務省令で定める加工又は製造は、物品の該当する関税定率法 (明治四十三年法律第五十四号)別表の項が当該物品のすべての原料又は材料(当該物品を生産した国又は地域が原産地とされる物品を除く。)の該当する同表の項と異なることとなる加工又は製造(税関長が指定する加工又は製造を含む。)とする。ただし、輸送又は保存のための乾燥、冷凍、塩水漬けその他これらに類する操作、単なる切断、選別、瓶、箱その他これらに類する包装容器に詰めること、改装、仕分け、製品又は包装にマークを付け又はラベルその他の表示を張り付け若しくは添付すること、非原産品(一の国又は地域において生産された第一条の五に掲げる物品及び第一条の六に規定する加工又は製造がされた物品以外の物品)の単なる混合、単なる部分品の組立て及びセットにすること並びにこれらからのみ成る操作及び露光していない平面状写真フィルムを巻くことを除く。

【関税法基本通達68-3-5】

(協定税率を適用する場合の原産地の認定基準)
68−3−5 協定税率を適用する場合における輸入物品の原産地の認定については、令第4条の2第4項、規則第1条の5及び規則第1条の6によるものとするが、これらの規定による用語の意義等については次による。
(1) 令第4条の2第4項各号に定める、「一の国又は地域」とは、外国貿易等に関する統計基本通達別紙第1(統計国名符号表)の国又は地域をいう。
(2) 物品の生産が二国以上にわたる場合は、令第4条の2第4項第2号及び規則第1条の6の規定を適用して原産地を決定するが、この場合、実質的な変更をもたらし、新しい特性を与える行為を行った最後の国を原産地とするものとする。
(3) 規則第1条の5第6号から第8号に規定する「一の国又は地域の船舶」とは、当該一の国又は地域の旗を掲げて航行する船舶とする。
(4) 規則第1条の6に規定する「税関長が指定する加工又は製造」とは、次に掲げる製造とするものとする。
(イ) 天然研磨材料について、その原石を粉砕し、かつ、粒度をそろえる加工
(ロ) 糖類、油脂、ろう又は化学品について、その用途に変更をもたらし、又はその用途を特定化するような精製
(ハ) 関税率表の第6部又は第7部の物品について、化学的変換を伴う製造
(ニ) 革、糸又は織物類について、染色、着色、シルケット加工、樹脂加工、型押しその他これらに類する加工
(ホ) 単糸からの撚ねん糸の製造
(ヘ) 関税率表の第68.12項又は第70.19項に属する物品について次に掲げる製造
@ 繊維からの糸の製造
A 糸からの織物の製造
B 織維、糸又は織物からの衣類その他の製品の製造
(ト) 関税率表の第71.01項から第71.04項までに属する加工してない物品からの当該各項に属する物品の製造
(チ) 合金にすること
(リ) 金属のくずから金属の塊の製造
(ヌ) 金属の板、シート又はストリップからの金属のはくの製造
(ル) 関税率表の第71類(貴金属に限る。)、第74類から第76頼まで又は第78類から第81頼までに属する物品(インゴット、棒、線その他同表の第72.03項、第72.05項から第72.17項まで、第72.28項又は第73.01項から第73.26項までに掲げる物品の形状のものに限る。)の製造(ただし、同表の第72.03項、第72.05項から第72.17項まで、第72.28項又は第73.01項から第73.26項までにおいて鉄鋼を当該製造の原料又は材料である金属に読み替えた場合において、当該製造前の物品と製造後の物品とが同一の項に属することとなる製造を除く。)
(ヲ) 関税率表第96.01項又は第96.02項に属する加工品からの当該加工品と同じ項に属する製品の製造
(5) 自国産以外の2種類以上の原料又は材料(以下「原材料」という。)を使用した製造において、当該原材料の中に当該製造後の物品に特性を与える重要な構成要素となるものとそうでないものとがある場合において、重要な構成要素となる原材料からみて、当該製造が規則第1条の6に規定する実質的な変更を加える加工又は製造(税関長が指定する加工又は製造を含む。)に該当するときは、当該製造は規則第1条の6に規定する実質的な変更を加える加工又は製造(税関長が指定する加工又は製造を含む。)とみなすものとする。

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