木材の熱伝導率は含水率と密度の影響を受ける

2022年9月21日更新

木材の熱伝導率を他の素材と比較すると、かなり低いことが分かりますが、この値は同じ木材でも密度と含水率によっても変動することが特徴的です。すなわち、木の種類(樹種)によって密度が異なりますが、この密度が小さいほど熱伝導率は小さくなります。反対に、水分を含んでいる割合である含水率が1%増加すると、熱伝導率が約1.3%増加します。

木材の熱伝導率は含水率と密度の影響を受ける|目次
  1. 含水率と密度によって変動
  2. 木材の熱伝導率と他の素材との比較

含水率と密度によって変動

木材は気乾材になると含水率は木の種類にかかわりなくほぼ一定の約15%程度になりますが、環境によってこれは常に変化しているため、熱伝導率も一定しているわけではないということになります。

また温度によっても影響し、常温の範囲では温度が高いほど木材の熱伝導率は高くなり、温度1℃あたり約0.5%大きくなっていきます。

木材は下図のように「実」だけでなく、水や空気で構成されていますので、これらが熱伝導率に影響するということになります。空気の熱伝導率は低いですが、水や木材はそれよりも高くこれらの組み合わせの影響を受けるということになります。

木材の熱伝導率に影響する要素

なお、木材の場合、熱が伝わるかどうかという温度変化の問題は単に熱伝導率だけではなく、比熱や密度の影響も受けます。

木材の温度の変化量を計算する場合は、熱拡散率を用いて計算することになります。

  • 熱拡散率=熱伝導率/(比熱×密度)

木材の熱伝導率と他の素材との比較

熱伝導率は熱の伝わり方を示す指標のひとつです。ある一定時間に一定の面積を伝わる熱量は、温度差に比例して増加します。反対に、板厚が厚くなれば減少します。温度の勾配によって生じる熱の移動のしやすさをみるための指標といえます。

熱伝導率の高い素材としては金属があり、中でも銀、金、銅がきわめて高く、アルミや鉄鋼がそれに続きます。これらと比較すると木材の熱伝導率は非常に低く、プラスチックに近いといえます。建材としてポピュラーなコンクリートやガラスと比較しても低い熱伝導率となります。

断熱や保温といった性能を検討する際には、熱伝導率のほか、比熱、熱容量についても見ていく必要があります。

木材でも、合板になると木質以外のものが入ってきますので、それによって熱伝導率や断熱性も変わります。例えば、シージングボードは、木材繊維を合成樹脂や接着剤と混ぜ固めたあと、板状にした表面にモルタルやアスファルトを塗布したものとなりますので、組織自体がある程度均一になるうえ、断熱効果のある樹脂類が入っているため、同じ比重の天然の木材とは異なる熱伝導率になっています。

木材の熱伝導率の比較
素材名 温度(℃) 熱伝導率
(kcal/m・h・℃)
木材(スギ、エゾマツ)比重0.30から0.45 20 0.08
木材(ヒノキ、ラワン)比重0.46から0.60 20 0.11
木材(ミズナラ、ブナ)比重0.61 20 0.14
合板(比重0.55) 20 0.11
シージングボード(比重0.3から0.4) 20 0.045
コルク 20 0.04
珪藻土 80 0.084
0 347
黄銅 20 52
ステンレス鋼 0 21.1
鋳鉄 20 45
アルミ 20 196
ガラス(パイレックス) 30から75 0.937
コンクリート 常温 0.860
耐火レンガ 200 0.77
アスベスト 20 0.134
合成ゴム 20 0.20
フェノール樹脂 20 0.20
ポリスチレン 常温 0.068から0.103
20 0.515
空気 20 0.022

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