木材の熱膨張率

2022年9月23日更新

木材の線膨張率は繊維方向(L)、半径方向(R)、接線方向(T)によって異なります。また体積膨張率については、この3方向の和をとると近似値になるとされます。

温度上昇に伴う含水率の変動、収縮のほうが影響が大きい

木材は含水率の変動による収縮や膨潤のほうが影響が大きいため、熱膨張については実務上検討の俎上にのることは稀です。温度や湿度によって木材の中に含まれる水分である含水率は変動します。熱膨張の影響を受けるような温度の変化よりも小さな温度変化で含水率のほうが動きますので、一般的には、それによる寸法変化のほうが影響が大きいということになります。

木材の繊維方向の熱膨張は、他の素材と比較しても常温の中では熱膨張の影響が少ない素材です。ただ繊維方向によって10倍近い違いがあり、特に接線方向の膨張率が高くなる傾向にあります。

もっとも低い繊維方向(T)の部位は3前後となり、20℃でのレンガ(3〜10)や磁器(2〜6)、大理石(3〜15)、ガラス(パイレックス、2.8)に匹敵する低さです。

熱が加わることで木材の含水率が変動しますので、それによる寸法変化を計算すれば、熱膨張の部分まで勘案せずとも値をあわせられるというのも他材と違う点です。

木材の線膨張率の一覧|繊維方向、半径方向、接線方向

下表が温度範囲−50℃から+50℃における木材の平均線膨張率となります(全乾状態)。実際には木材がこのように100℃も温度差がある環境で使用されることは考えにくく、仮にあったとしても、含水率のコントロールができていれば、影響は軽微に抑えることができるという点が他材と大きく異なります。また精密用途での使用がないという点も熱膨張率が気にされない理由の一つでもあります。

なお、下表のバルサ材についての平均線膨張率は0℃から50℃の範囲のものとなります。

木材の種類の平均線膨張率
樹種 全乾密度 平均線膨張率(×10-6/℃)
繊維方向(L) 半径方向(R) 接線方向(T)
ホワイトファー 0.40 3.34 21.8 32.6
シトカスプルース 0.42 3.15 23.8 32.3
ダグラスファー 0.51 3.16 27.9 42.7
バルサ 0.17 16.3 24.1
イエローポプラ 0.43 3.17 27.8 29.7
イエローバーチ 0.66 3.36 30.7 38.3
シュガーメープル 0.68 3.82 26.8 35.3

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