木材の含水率一覧と強度の関係

2022年9月18日更新

木材の水分含有率のことを含水率といいいますが、この割合の多い木材ほど水分を多く含んでいることを意味します。以下の一覧で示す通り乾燥前の場合は木材の種類、つまり樹種によっても含水率は異なりますが、木の部位、つまり心材か辺材かによっても違いがあります。

木材は含水率によって重量、寸法が変わってくるという特徴のある素材です。また強度も変化することが知られています。この水分の有無が木材利用の重要なキーとなります。以下にその関係や木材の種類による含水率の違いを見ていきます。

木材の含水率一覧

樹種(木の種類)によっても水を含む量は異なり、またそれは樹木の部位が心材なのか辺材なのかによっても変わります。下表は生材の状態の含水率を表わしたものです。

心材と辺材の違い

針葉樹はとくに辺材の含水率が心材に比べて高いことが分かります。広葉樹は木の種類にってこの傾向が異なるので一概にはいえませんが、辺材のほうが含水率が低いものもあります。

木材の含水率一覧(生材)
樹種 含水率(%)
辺材 心材
針葉樹 アカマツ 145 37
エゾマツ 169 41
エゾマツ 197 51
オウシュウトウヒ 130 55
グイマツ 104 57
カラマツ 83 41
スギ 159 55
ストローブマツ 195 110
トドマツ 212 76
トドマツ 179 59
ヒノキ 153 34
モミ 163 89
広葉樹 コナラ 75 67
シナノキ 92 108
トチノキ 123 166
ドロノキ 79 205
マカンバ 77 65
ミズナラ 79 72
ヤチダモ 53 71

生材、気乾材、全乾材の違い

伐採されて乾燥されていない状態の木材は生材(読み方:なまざい)、生材を大気中にしばらく放置すると、大気の温湿度に応じた一定の含水率に落ち着いてきますが、この状態を気乾材といいます。気乾材の含水率は、地域や季節にもよるため、全国平均で約15%とされます。これは、空気中の湿度と平衡状態になることを意味しています。

つまり、樹種によらず、一定期間乾燥させて水分が落ち着いてくると、どのような木材でもだいたい15%程度の含水率になるということです。乾燥方法には天然乾燥(AD材や天乾材と呼称されます)と人工乾燥(KD材や人乾材と呼称されます)があります。乾燥にかかる期間は木材の大きさもさることながら、樹木の個体差にもより、1〜3年程度のものから、1〜3か月程度かかるものまで幅が広いです。

乾燥器を用いて100℃〜105℃で重量変動がなくなるまで(水分があると木材の重さが変わるので)乾燥させた含水率0%の木材が全乾材となります。

なお、100%の湿度のなかに木材を放置しておくと、湿気を木材が吸い込んでいきますが、やがて一定以上は含水率が上がらなくなります。これを平衡含水率と言いますが、一般的な湿度では10〜15%程度で落ち着きます。

木に含まれる水分というのは、自由水と結合水があり、伐採後からそれぞれの木の内部状態のステージで下表のように変化していきます。これが含水率の変化として表れてきます。まず自由水が失われていき、次に結合水が減っていくという経過をたどります。

自由水は、細胞腔(針葉樹の場合は仮道管)の内にある水で普通の水と同様に流動し蒸発するものです。結合水は細胞壁中に含まれる水で強く木材と結合しています。こちらは木材を構成する分子と結合している水分のため、かなり性質の違う水分です。

木材の含水率、自由水、結合水の状態
木材の状態 水分の状態、含水率
飽水状態 自由水、結合水あり。最も水を含んだ状態。
生材状態 自由水減り出す、結合水あり。含水率は上表の通り、木材の種類による
繊維飽和点 自由水無くなる、結合水のみ。これより先、結合水が減り始めると木材強度が上がる。含水率は約30%
気乾状態 自由水無くなる、結合水が減り一定に落ち着く。含水率は約15%
全乾状態 自由水無くなる、ごく微量の結合水残し水分なくなる。含水率0%

含水率の計算式

含水率の計算方法や測定方法にはいくつか方法があり、最も信頼性が高いといわれているものが全乾法と呼ばれるものです。JIS規格でもこの測定方法と計算方法が規定されています。計算式は以下となります。

  • 含水率(%)=(水を含んでいる木材の重量)−(全乾状態の木材の重量)/全乾状態の木材の重量 ×100
木材の含水率の計算式

JIS規格の木材の試験方法で詳細が規定されており、含水率は0.5%まで求めることになっています。

全乾状態の木材とは、含水率0%の状態にした木材のことで、全乾材ともいいますが、換気の良い乾燥器のなかに温度100℃から105℃で継続乾燥させて、木材の重量が変わらなくなれば全乾状態に達した扱いとします。ただ木材の内部には若干の結合水が残るので、ほとんどのケースでは水分ゼロというわけではないのですが、便宜上、このように全乾状態は定義されています。

測定方法

実務では全乾法によることができない場合がほとんどですので(大掛かりな実験設備や研究用途でもない限り実施困難)、電気抵抗式含水率計、高周波式含水率計、赤外線水分計が使われることも多々あります。電気抵抗式のものだと、材温の影響を受け、高い含水率では精度が落ちるとされます。容量式のものだと、密度による補正が必要になります。

手軽さがメリットの高周波式の含水率計は木材の内部にある水分に応じて誘電率が下がる仕組みを応用したものです。非破壊で検査可能です。

電気抵抗式は、本来は電気を通さない絶縁の木材が水を含むと電気を通すようになる性質を応用したものです。木材に針を打ち込んでそこから電気を流し、電気抵抗から含水率を推定します。水が少なければ電気があまり流れないということになります。針を打ち込むため、部位を選ぶ測定法です。

赤外線水分計は、水の吸収波長の赤外線を木材に照射して、それが吸収される度合いから含まれる水分量を推定するという原理の計測方法です。木材表面の含水率を見ることができる手法です。

対象物の含水率が一定ではない場合は、平均含水率という表現が使われます。木材も部位によって水分が含まれる量が変わりますので、こうした水分傾斜を平たんにする必要がありますが、測定器による含水率はあくまで局所的なものになる点に留意が必要です。長さや大きさのある木材であっても、あくまで測定は点に対して行うので、測定時の水分のばらつきもあるということになります。

木材の水分と強度の関係

木材は繊維飽和点から含水率が低くなっていくと、強度は上がっていきます。含水率が1%変化すると、強度が何%変化するかを示したものが下表となります(無欠点材による試験)。

含水率1%の変化に伴う強度の変化
強度項目 変化(%)
曲げ強さ
曲げ比例限応力
縦圧縮強さ
縦圧縮比例限応力
横圧縮比例限応力 5.5
せん断強さ
硬さ 木口面:4
縦断面:2.5

繊維飽和点(約30%の含水率)以上の含水率がある状態では、含水率が変化しても強度に違いは見られません。

また、常温よりも低い温度域で使用する場合は、自由水を木材に含んでいる高含水率材のほうが曲げ強さが大きいことが知られています。

木材の繊維飽和点は約30%になりますので、含水率が約30%を超える場合は、強度にさして変わりはありませんが、30%を下回るほど、強度が上がっていくということになります。

木材に含まれる水分によって強度がなぜ変わるかについては、木の内部にある結合水の挙動によります。

結合水は、木材の細胞壁の中にある水分で、水が単に木材に吸着しているというのではなく、水素結合によってミクロフィブリル間隙等の二次結合間に取り込まれて木材実質の一部になっています。つまり結合水は自由水と違って、木材を構成する分子と結合しています。この木材の中の結合水が減り始めると、身が引きしまって収縮すると同時に強度が上がります。

これは結合水のみについていえるため、自由水が無くなって結合水が減り始めるステージである繊維飽和点より低い含水率のときにあてはまるということになります。

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