労働基準法における重量物の制限

2022年5月2日更新

労働基準法では作業者の安全を守る観点から下表の通り男女別・年齢別に扱うことができる重量物の制限を設けています。重量の制限はさらに断続作業と継続作業で差を設けています。具体的な条文としては、労働基準法 第62条(危険有害業務の就業制限)の部分で、年少者労働基準規則(年少則) 第7条、8条と女性労働基準規則(女性則)第2条に規定されています。半年に1回医師による腰痛の健康診断を実施することも通達で示されています。

労働基準法における重量物の制限
年齢 重量(上限)単位:kg
断続作業 継続作業作業
男性 女性 男性 女性
満16歳未満 15 kg 12 kg 10 kg 8 kg
満16歳以上満18歳未満 30 kg 25 kg 20 kg 15 kg
満18歳以上 規定なし。ただし通達で55 kg以下 30 kg 規定なし。ただし通達で体重の約40%以下 20 kg

上表の通り、満18歳以上の男性になると、上記法令では定めがなく、「職場における腰痛予防対策の推進について」という通達が出されているのみになります。この通達では作業者の体重に依存し、また上限重量がかなりの重さに設定されています。

大量に物品を扱うことで知られる自動車部品の業界では、自動車メーカーに対して荷姿の申請を事前に行い、承認を得た内容で梱包仕様書や梱包指示書を作成して現場に作業させるため、現状ここまでの重量の規定にしているメーカーはほとんどなく、男女問わず、一昔前でも1箱15キロが上限で現在は1箱12キロ以下になりつつあります。

1箱あたりに入る製品を増やして重量を上げていくと製品1個あたりにかかる輸送費が下がりますので、コスト低減にはなるのですが、一方でこれには限度というものがあり、作業者が扱えない重量や、フォークリフトのような重機でも運ぶことができる重量制限が機種ごとに設定されているので、それらを守って1箱の最大重量を決める必要があります。

小型の自動車部品でよく使われる通い箱であるTP332のサイズであれば、9まわしの5段積みが1パレットになるため、45箱となり、45箱×12キロであれば、540キロの正味重量となります。この重量なら重量制限の比較的低いリーチリフトでも扱える重量となります。

ただし手荷役でこの箱を1箱ずつ台車に移す、トラックへ積み込むというようなことをやってみればわかりますが、12キロでも相当の重さでこれを継続作業で何百と扱えば、労働基準法の規定がいかに過酷なレベルなものか痛感することになります。

箱への詰め込みから移動まですべて手作業での運搬がないという環境であれば、箱重量についてはさらに積載を上げ、輸送機器の重量上限や箱や荷材の耐久に注視すればよいということになりますが、人が運ぶことが想定されているのであれば、1箱への詰め込み以外の方法で積載効率や輸送効率の向上につながる設計を検討する必要があります。

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