物流におけるシャトル便とは

2022年4月6日更新

物流分野でのシャトル便とは、デポ等の物流拠点と工場の往復といった決まった区間を1日に何度も繰り返す形態のトラック便のことを意味しています。比較的短い距離を繰り返し往復する点は共通していますが、運行区間は工場間だったり、倉庫間だったり、工場と倉庫間であったりいろいろなパターンがありますが同一の区間を一定時間内で日に何度も往復する点に特徴があります。ミルクランを実施する場合の引き取り拠点までの輸送をシャトル便で行うということもよくあります。

定期便の一種だがチャーター便ではない

トラック輸送は工業分野でもDoor to doorの配送を可能にする陸送のかなめの一つですが、製造業が契約する陸送には車建て(トラック1台分の料金での支払い)と個建て(1箱いくらでの料金の支払い)という費用負担形態のほか、車建てには定期便、チャーター便(特便)、シャトル便等の運用形態があり、それぞれ個別の料金体系を持つことが多いです。

シャトル便はトラックの定期便とも似ていますが、こちらは定められた期間の契約で、定期的に運航する便であれば往復や行き来の回数、運行距離などにかかわりなく定期便と呼ばれるという違いあります。またチャーター便については、1回限りでトラックを借りきる契約のことを指す(1回限りのスポット契約。特便とも言います)という違いがあります。ただし、広い意味では、シャトル便も定期便の一種ということになります。

物流のシャトル便

シャトル便は製造業をはじめ、出荷拠点や倉庫拠点といった物流拠点をかまえて運用している会社の場合、頻繁に物品の入出庫を繰り返す区間で設定していることが多いです。物流会社もシャトル便専用の価格体系を設けて請け負っていることも多いです。

運用形態としては、トラック2台を交互に使っていくケースや、トラック複数台(同一会社のこともあれば、異なる運送会社のトラックを使う場合もあります)を常時往復させてダイヤを組んでいることもあります。頻度によって価格も変わってくるため、CRなどの物流費のコスト低減活動の際は、こうした頻度減・回数減が検討されることもあります。また、車建て契約の場合、そもそも自社から見た顧客の需要に応じて生産量や輸送量も変わり、トラックの運行数は変動する為、荷量にあわせて回数の見直しを定期的に行うこともあります。

シャトル便のメリット、デメリット

メリット

大量の物品を扱う業界の場合、例えばトラックを1日に1便にしてしまうと、1回に輸送数量が大幅に増え、台数を増やすとトラックターミナルのダイヤ上、トラックの停車時間が確保できないという問題があります。

また工場は生産設備でほぼ占有させておくことが効率的な生産、つまり1平米あたりの工場面積で生み出すことができる生産金額にも直結していくことになるため、なるべく在庫場所などの余分なスペースをなくしたいという考えで設計されています。しかし、トラック便の本数が1日に1回といった頻度の場合、1日分の生産した製品をすべて在庫しておくスペースが必要になります。自動車部品をはじめとする大量の荷量が時間単位で動いていく業界では、広大なスペースが必要となります。これが1日12便にして倉庫や物流拠点へ輸送できれば、24時間操業としても、2時間分の生産量だけの在庫場所確保で済みます。

高頻度の輸送契約にすることで、定期便よりも輸送費をおさえることができ、工場の在庫スペースも最小限にできるという点がメリットといえます。

シャトルは基本往復になるので、納入する際に通い箱等を使用する場合はトラックの荷量がほとんどないという状態を回避することができ、車建て契約の場合費用対効果のよい運送便の使い方が期待できます。

デメリット

突発的な荷量の増加には弱い仕組みで、もし定期運航しているシャトル便で荷物があふれてしまうとあわせてチャーター便や特便といったトラックを特別に手配する必要が出てきます。こうした便は定期便に比べて割高になるうえ、あまりに荷量が多く急な増加だと手配が間に合わないことがあります。

したがって、ある程度の荷量予測が可能な区間で輸送遅延が発生しにくいという条件がそろう必要があります。

シャトル便を例えば毎日8時、12時、16時、20時の4便走らせるとした場合、工場から何時の便に載せれば、客先へ納入するどの便に間に合うかという試算が可能になりますが、これはシャトル便が時間通りに運行し、積み残しが発生しないという前提のもとはじめて成り立ちます。荷量が増えたので、8時発の便の載らずに12時になり、物流拠点から客先への納入便に接続できなかった、というようなことになると用をなしません。

これはシャトル便に限った話ではなく、車建て契約の輸送便全般に言える話でもありますが、荷量を把握し積載率や積み残される率などを見ながらシャトル便の本数を調整する担当者が必要になります。荷量が安定している場合はいったん設定したダイヤ通りに運行してもらえれば特に問題はないのですが、荷量が極端に減って、ほとんど積載なしの状態でトラックが走っていたり、逆に毎回積み残しが発生しているほど荷量が多い場合の監視体制が要ります。

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