亜鉛合金の種類と特徴|亜鉛合金、ザマック金属の強度、融点、比重、成分

2013年8月31日更新

亜鉛合金は古くから用いられる合金の一つで、高い鋳造性や良好な機械的性質をもっており、アルミ合金に次ぐ使用量のある材料です。日本のJIS規格ではダイカスト用の亜鉛合金記号としてZDC1、ZDC2の二種が規定されており(現行の規格にはZDC3は無し)、それぞれASTM規格ではAC41A、AG40Aとなります。その他、Zamak2、 Zamak3、Zamak4、Zamak5、Zamak7といったザマック金属も亜鉛合金として広く用いられています。

亜鉛合金の工業利用の歴史としては、1929年にニュージャージージンク社によってZamak(ザマック)が開発されて以来となるため、実に80年以上の歴史があります。なお、欧州や米国では亜鉛合金といえばZamakもしくはMazak(1930年代にイギリスで開発)ですが、これは亜鉛のZink (zinc)、アルミのAluminium、マグネシウムのMagnesium、銅のKupfer(copper)を意味する頭文字から取られた品名です。

各国の規格による亜鉛合金の記号
JIS
JIS H 5301
FS
QQ-Z-363 B (1972)
ASTM B86 (1995) SAE
J 468 b (1983)
NF EN 1706 (1998) BS EN 1706 (1998) DIN EN 1706 (1998) ISO 301 (1981)
ZDC1 AC41A AC41A 925 Z-A4U1G B GD-ZnAl4Cu1 ZnAl4Cu1
ZDC2 AG40A AG40A 903 Z-A4G A GD-ZnAl4 ZnAl4

亜鉛合金の比重

亜鉛合金の比重は6.6〜6.7前後となります。亜鉛金属単体で7.13程度ですが、亜鉛合金にしても鉄の約7.8よりは若干軽いですが、チタンの約4.5、アルミの約2.7、マグネシウムの約1.74から比べると、重量のある部類なります。玩具、おもちゃなどに使われる場合は、光沢のあるめっきとあわせて見栄えもいかにも想像上の「合金」のような外観を出すことができます。

亜鉛合金の成分、材質

主要成分は亜鉛のほか、アルミニウム、銅、マグネシウムで構成されている合金です。なかでもアルミニウムが殊のほか重要な役割を担っており、この元素が添加されていることで機械的性質が改善されているのと、流動性もよくなっています。また、銅が添加されていることでも、機械的強度が上がっています。さらに、アルミと銅を添加した亜鉛合金に、マグネシウムを添加すると結晶粒界腐食や、時効性の寸法変化を防ぐ効果もあります。

なお、成分上、4種類の不純物、リチウム、ニッケル、シリコン、マンガンといった元素が一定以上含まれないように留意する必要があります。これらは特に寸法変化に悪影響を及ぼすため、亜鉛合金の強み、メリットの一つである寸法精度のよさが損なわれる危険性があります。特に、リチウムが混入すると、割れが発生して合金を崩壊させることがあります。

JISでは、亜鉛合金ダイカスト用のものとしては、不純物として、Pb、Cd、Snが一定以上含まれてはならないとの規定になっています。

亜鉛合金に添加されている合金元素には以下のようなものがあり、それぞれの役割が異なります。複数添加することで相乗効果を得たり、組み合わせて用いないと意味のないものもあります。

亜鉛合金に含まれる各元素の影響、役割
添加元素 亜鉛合金への影響
Al 強度、硬度、流動性を向上させる最重要の添加元素。ZDC1とZDC2ではともに4%前後含有される。4.5%を越えると衝撃強さが低下し、もろくなる。
Cu 機械的強度、硬度を向上。弱点となっていた耐食性も向上させる。多すぎると寸法の経年変化が起こりやすく、衝撃強さも低下する。
Mg アルミと銅を添加したものに対して添加すると、粒間腐食が抑えられる。規格以上に添加されると流動性、高温脆性、衝撃値の低下などの悪影響。
Pb、Sn、Cd 規格値以上これらの不純物が含まれると腐食によって材料として使えなくなる。
Fe 過剰添加によってFe-Al金属間化合物が晶出してスラッジが発生。材料内に硬質の異物が出現する「ハードスポット」の原因となる。

亜鉛合金の特徴と用途|耐衝撃性に優れた合金

亜鉛合金は、寸法精度を出しやすく、衝撃にも強い性質を持ち、振動を吸収する性能、いわゆる減衰能に長けた材料でもあるため、精密機器や携帯機器の部品、筐体、超合金を銘打った「おもちゃ(玩具)」、自動車のモール、時計のケース、ドアレバーなどのめっき部品、塗装部品などが知られます。めっき性もよく、光沢のついた電気めっきも容易に可能であるため、カラフルな光沢が必要な用途でも、手軽な素材として利用されています。

材料を薄くすることができる、いわゆる薄肉についても亜鉛合金は強く、複雑な形状を鋳造によって作ることにも適しているため、精密部品にも向いています。

ただし、耐食性には難があり、材料としてだいぶ改良されていますが、もともとの材料に含まれる不純物の量が規格値を超えてしまうと、経年劣化とともに粒間腐食などを引き起こすことが知られます。

亜鉛合金の強度

亜鉛合金が機械的強度に優れている点は前述しましたが、具体的には以下のZDC1とZDC2の規格値の通り、各々の引張強さは325MPa以上、285MPa以上となります。衝撃値が高めになっているため、耐衝撃性が高く、伸びの値(7%、10%)からもそれが示されています。硬度についても、ブリネル硬さで80〜90前後となります。圧縮強度については、ZDC1が600MPa前後、ZDC2が415MPa前後となります。

ZDC1とZDC2の違い

日本では使われている亜鉛合金の凡そ9割以上がZDC2となります。両者の大きな違いは、成分上の銅の量にあり、これによって機械的強度、特に硬度と引張強さに違いが出てきています。

ただし銅の量が多すぎると、経年劣化が激しくなるため、時間が経つにつれて、機械的な強度も低下していき、寸法も変化してしまうという難点があります。こうしたことから、銅の含有量が少ないZDC2(AG40A、ザマック3)のほうは日本ではよく使われています。

亜鉛合金の融点

ダイカストに用いられる汎用性の高い軽金属の合金の中では、亜鉛合金は低融点に相当し、その融点はおおよそ387℃となります。高融点金属ほど、ダイカストなどでは金型の寿命にも影響してきます。

亜鉛合金の融点|ダイカストに用いられる合金の融点一覧
合金の種類 融点
高融点合金 銅合金 黄銅で900℃程度
マグネシウム合金 595℃
アルミニウム合金 580℃
低融点合金 亜鉛合金 387℃
錫合金 296℃
鉛合金 272℃

「JIS H 5301 亜鉛合金ダイカスト」(最新:2009年改訂)に規定のある材料記号

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