繊維の種類と特徴|繊維の一覧と番手、強度、耐熱温度、物性比較まで

2021年1月6日更新

繊維は、一般的に衣服の材料と考えられていますが、工業材料としても非常に広範な分野で使われています。繊維を加工すると、糸になり、糸を加工すると布や織物となりますが、いずれも服飾分野だけに使われるものではなく、工業製品の多くもこれらなしでは成り立たない業界が多々あります。工業材料としては、繊維や糸を加えることで強度を上げる目的や、別の機能を持たせる目的もあり、材料そのものに添加する場合もあれば、糸や繊維そのものを製品に組み込む形で使うものもあります。もちろん、繊維や糸、布自体が製品としても流通しています。

繊維の種類は、大きくは「天然繊維」「化学繊維」に分けられますが、使用用途に応じてうまく使い分けられています。

後ほど繊維の分類と種類について幅広く見ていきますが、まずは天然繊維と化学繊維とは何がどのように違うのでしょうか。

天然繊維と化学繊維の違い

両者の違いは、出発原料がそもそも違うという点から、繊維そのものの形状や性質が異なるという点があげられます。繊維の性質は、繊維を構成する物質と形状によって変わります。さらにいえば、繊維は加工されて糸になり、糸は加工されて布になりますので、それぞれについても、糸の加工方法や布の加工方法によっても最終的な性質は異なってきます。

天然繊維と化学繊維の違い
天然繊維 化学繊維
原料は天然に存在するもの、天然高分子のみ。形状は不均一。繊維長は、絹以外は短繊維(ステープル)となる。断面形状はそれぞれが持って生まれたもの。 天然高分子のほか、石油、無機物、人工的に作られる高分子。形状は均一。繊維長は、自由自在。断面形状についてもさまざまな物が存在する。

天然繊維の特徴

採取される対象の違いから、植物繊維、動物繊維、鉱物繊維の三つがあります。我々の生活にもっとも馴染みがあるともいえる綿(コットン)も植物繊維のひとつです。天然繊維は、それぞれがもって生まれた固有の断面形状をもちます。また、これら天然繊維を糸にする製造工程も化学繊維とは異なります。

天然繊維のメリット

個別の繊維によってそのメリットは異なるため、天然繊維すべてに当てはまるわけではないですが、綿を見ればわかるとおり、吸水性に優れ、通気性、肌触りがよく、湿強度も大きいため、下着や肌着など直接肌に触れる衣服としては、化学繊維では達成し得ないものがあります。ただし、しわになりやすい、乾きにくいなどのデメリットもあります。服飾用などに使われる天然繊維の多くは、肌触りのよいものが多いといえます。

動物繊維は、特定の動物の毛を用いているため、寒冷地や極暑など過酷な環境でも体温をうまく調整して維持できるような機能を持ったものが多く、それを衣服に加工した場合、同様の効果が期待できます。

衣服に求められる機能として、「保温性」「通気性、透湿性」「風合い」がよく挙げられますが、こうした点からも天然繊維は優れていると言えます。

化学繊維の特徴

化学繊維は、化学的な方法を用いて人が人工的に作り出した繊維です。多様なものがありますが、主として、再生セルロース繊維、半合成繊維、合成繊維、高性能繊維、無機繊維の5種類があります。

もともとは絹に似た性質の繊維を人工的に作り出す試みから化学繊維開発の歴史はスタートしています。したがって、このタイプの繊維には、限られた資源でもある天然繊維に似せた性質のものを廉価で提供しようとするもの、天然繊維にはない性質を持たせた高機能なもの、天然繊維のよいところと、デメリットを補完する性質を併せ持つタイプのもの等、多くの種類が存在します。

最終的には製品となった際の市場価格と、求める性能とのバランスによって、よく出回っている繊維とそうではないものとに分かれますが、衣服などの分野では化学繊維と天然繊維のよいところを組み合わせる方法もよく使われています。

化学繊維のメリット

人の歴史において、もともとは天然繊維のみしかありませんでした。化学繊維はそのあとに出てきたものですが、上述のとおり、天然繊維にない性質を持たせたものがあります。実際には、これらと天然繊維とを組み合わせて相互補完的に使われることもありますが、工業製品として使う場合は、どうしても持たせる必要がある機能性・物性の部分、あるいは均一性の部分で、化学繊維のみしか使えない状況も多々あります。

繊維の製造工程は、化学繊維の場合にはいくつか存在しますが、天然繊維は植物にしろ動物にしろ持って生まれた繊維の断面形状をそれぞれが持っているのに対し、化学繊維はこの断面形状自体も変えることができます。またひとつの繊維を作り出す際に、異なる性質を持つ複数の繊維で紡糸する複合繊維と呼ばれるものもあります。

衣服として使う場合は、速乾性能や耐摩擦、強度などで天然繊維を上回るものがありますが、すべてにおいて天然繊維に優れているというわけでもないのが面白いところです。

繊維の特徴|細く長い、軽くて強い

繊維の中には前述したとおり、化学繊維があり、それらはプラスチック等にも使われる高分子で構成されていますが、出発材料がプラスチックと似たものや同じ化学式のものであったとしても、繊維になった場合には異なる性質を示すことがあります。

これは、繊維のもつ最大の特徴である「細くて長い、軽くて強い」に起因するものです。同じ材質であっても、その物質が「線」なのか「立体」なのかでも性質は変わります。膜が平面で二次元物体であり、球や立体が三次元物体であるのに対し、繊維は一次元物体という言い方もできます。このため、繊維は「長い割りには軽い」ということにもなります。

表面積を多く取れる繊維

細くて長い材料であるため、表面積を大きく取ることができます(これは粉についてもいえますが、粉体は表面積をもっとも大きくできるものの、粒子同士を適度に絡まらせることができないため、密度や結合力の調整が難しい問題があります)。表面積が大きいと、物体との接触効率がよくなります。フィルターなどを例に見るとわかりやすいです。

繊維の強度

繊維の強度はN/tex(cN/dtex)という単位で示します。一般的に、糸をイメージした場合、ロープなどに加工しない限りはあまり強度がないように見えます。

実際には、鉄鋼線であるピアノ線で0.3N/tex、グラスファイバーで0.9N/tex程度のため、合成繊維の平均的な強さである0.1N/tex、高強度繊維の4.0N/texと比較しても決して弱い材料ではないことがわかります。

強度とは単位面積あたりに材料が耐えることができる力であるため、強度があるものほど壊れるまでに必要な力が大きいということになり、これが強いほどに製品を小さく、軽くすることもできます。強度向上に繊維をうまく使うことで、製品重量自体をあまりあげることなく強度を上げるという方法もあります。

繊維の柔らかさ

引っ張りについては硬く、強い材料ということは述べましたが、一方で、繊維軸に対して垂直にかかる力に対しては曲がりやすいため、やわらかいという言い方ができます。

これはロープなどをイメージすればわかりやすいと思いますが、他の材料と比較した場合、引っ張る強さに比べて、これだけ柔らかくなる素材も珍しいといえます。

金属材料は、引張強度の高いものであれば、どの方向から力をかけようとも、変形させるにはそれなりの力が必要になります。繊維の場合、それがほとんどないと言えます。繊維が強くて柔らかい材料と言われる所以です。

繊維の伝達効率

繊維を、ファイバーという視点で見た場合は、ナノオーダーのサイズのものから、メートル単位のものまで非常に幅広いのも特徴です。

一方向だけに長いと信号やエネルギーの伝達効率もよいので、電線や光ファイバーはこの性質を利用したものとなります。熱伝導率についても同じことが言えます。

繊維は変形しやすく壊れにくい

繊維は糸に加工され、糸は布へ加工されていきます。この繊維から作られる布を、フィルムと比較すると、その性質の違いがよくわかります。布もフィルムも「面」を構成する二次元物体ですが、フィルムは溶かした材料を延ばして作られたものです。このため、湿気や空気を通しにくい特徴をもち、バリア性能に優れています。各種包装などにもよく使われます。一方、布は繊維の集合体のようなものであり、変形が容易で、壊れにくい、水分や空気を通して湿度、温度の調整がしやすいという特徴を持っています。このように、布とフィルムは似た形状ですが、構成内容の違いによって両極端の性質を持っています。蛇足ですが、両者の中間が紙といえます。

繊維の種類

天然繊維、化学繊維に分けることができると述べましたが、具体的に繊維にはどのような種類があるのでしょうか。以下に一覧にまとめてみました。

個々の繊維の特徴についてはそれぞれのページにて紹介していきます。

繊維の分類
大分類 中分類 小分類
天然繊維 植物繊維(セルロース繊維) 種子毛からの繊維:綿(コットン)、カポック、アクンド等
じん皮繊維:リネン(亜麻)、ラミー(苧麻)、ヘンプ(大麻)、ジュート(黄麻)、ケナフ等
葉脈繊維:マニラ麻、サイザル麻、アロエ等
動物繊維(たんぱく質繊維) 動物の毛からの繊維:アンゴラ、カシミヤ、ウール(羊毛)、ヤギ、ウサギ、モヘヤ、ラクダ、アルパカ等
絹繊維:蚕(カイコ)から取れる家蚕絹(かさんきぬ)、野蚕絹(やさんきぬ)
羽毛繊維:ダウン、フェザー、羽毛など
鉱物繊維 天然の鉱物から取れる繊維:石綿など
化学繊維 再生セルロース繊維 ビスコースレーヨン:レーヨン、ポリノジックなど
銅アンモニアレーヨン:キュプラ
精製セルロース:リオセル
半合成繊維 セルロース系:アセテート、トリアセテート
タンパク質系:プロミックス
合成繊維 ポリアミド系(PA):ナイロン、ナイロン6、ナイロン66など
ポリビニルアルコール系:ビニロン
ポリ塩化ビニリデン系:ビニリデン
ポリ塩化ビニル系:ポリ塩化ビニル
ポリエステル系:ポリエステル
ポリアクリロニトリル系:アクリル、アクリル系
ポリエチレン系:ポリエチレン
ポリプロピレン系:ポリプロピレン
ポリウレタン系:ポリウレタン
ポリクラール系:ポリクラール
ポリフルオロエチレン系:フッ素繊維
フェノール系:ノボロイド
ポリエーテルエステル系:ポリエーテルエステル系繊維
ポリ乳酸系:ポリ乳酸繊維
高性能繊維 芳香族ナイロン・ポリアミド系:アラミド繊維
全芳香族ポリエステル:ポリアリレート系繊維
超高分子量ポリエチレン:超高強力ポリエチレン
ポリオキシメチレン(POM):ポリアセタール
ポリイミド繊維
無機繊維 ガラス繊維:グラスファイバー
炭素繊維:カーボンファイバー
セラミック繊維
金属繊維:金糸、銀糸、スチール線、アモルファス金属繊維

繊維の一覧

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