プロミックス繊維の特徴|牛乳たんぱく質から作られた半合成繊維の取り扱い、洗い方まで

2020年7月27日更新

プロミックスは、半合成繊維に分類される繊維で、天然の高分子物質をもとに、化学物質を結合させて作られています。具体的には、ガゼインと呼ばれる牛乳のたんぱく質成分を溶解しアクリロニトリルを結合させて紡糸した繊維で、日本で開発されたものです。

プロミックス繊維の特徴と性質

JIS規格の定義では、たんぱく質を重量割合で30%以上60%未満含む繊維をプロミックスと定めています。

半合成繊維は、元になった天然の高分子物質の特徴と、結合させた化学物質の特徴の双方の性質をあわせもつ繊維です。アセテートもこの分類になります。

プロミックスの風合いや光沢は独特で、天然のたんぱく質に由来するだけあり、絹にも似たシルキーな印象を持ちます。ただし絹と比較すると、湿度や温度による黄変が起きにくいという性質があります。

繊維の構造

顕微鏡でこの繊維の側面外観を見ると、繊維軸方向に細い線条が走っています。断面を観察すると、周辺には不規則な凹凸のある楕円形や繭形をしています。

プロミックス繊維の用途

生産コストが高くなりがちなこともあり、用途としてはネクタイやスカーフといった絹が使われる服飾品や、高級な和服地、フォーマルドレス、ブラウス、ワンピースなど女性用の高級服飾品にも使われます。

プロミックスの製法

冒頭で述べた通り、牛乳のたんぱく質にアクリロニトリルを結合させたもので、一般的には以下のような製法となります。

まず、牛乳たんぱくを塩化亜鉛などで溶解します。そこにアクリロニトリルを加え、重合させます。グラフト重合物となったものに水等を加えて湿式紡糸を行い、洗浄、延伸、乾燥の工程を経て巻き取り、フィラメントとして仕上げるという流れになります。なお、短繊維であるステープルの形態ではなく、長繊維であるフィラメントの形式で流通していました。

たんぱく質を多く含むだけあって、たんぱく質の検出に用いられる化学反応であるキサントプロテイン反応が明確に出る唯一の繊維でもあります。

プロミックスのメリット、デメリット

以下に主に他の繊維と比較した場合のプロミックスのメリットやデメリットについて見ていきます。

プロミックス繊維のメリット

光沢の美しさのほか、絹のようなあたたかな感触や適度な吸湿性にも特徴があります。吸水速乾性があるとされ、べたつかない生地といわれます。また軽い繊維です。

染色性は良好で、幅広い染料の使用が可能です。

天然由来の成分を含みますがカビに対しても強く、絹と異なり虫にも強い性質があります。保湿作用に優れ肌がしっとりするとの見解もあります。耐薬品性にも優れるというメリットもあります。

プロミックス繊維のデメリット

一方、デメリットとしては火には弱く、近づけると収縮しながら炎を上げて燃えます。燃焼時の臭いは絹と似ており、毛髪が燃えるような臭いがします。灰は黒色のやや脆い灰となります。

約270℃で分解してしまうので、アイロンがけにも細心の注意が必要です。

また引張強度は決して弱いほうではないのですが、摩擦に対しては強くありません。

プロミックスの取り扱いや洗い方について

洗い方は絹に準じた方法やクリーニングに出す方法が一般的です。自分で洗う場合は、中性洗剤を使っての軽い手洗いとなります。主要成分が牛乳のたんぱく質であるため、タンパク質分解酵素が含む染み抜き剤などは使用できません。

同様にこれらにダメージを及ぼすタイプの洗剤も使用しないほうがよいでしょう。一般に、プロミックスは摩擦や熱に弱い繊維と言われています。取り扱う際は、特に熱を伴うアイロン掛け、摩擦を伴う洗濯については注意を払う必要があります。

プロミックスの歴史|たんぱく質を使った繊維

1969年から東洋紡で製造されシノン(Chinon)の商標名で上市されていました。2004年頃までは流通があったようですが2020年現在は製造中止となっています。

牛乳たんぱく由来のガゼインを繊維化したものとしては、他にイタリアのラニタール(メリノバ)やイギリスのフィブロレインがありますが、いずれもシルキーな風合いというよりは、羊毛の代替品として開発・使用されています。日本ではあまり馴染みがありませんが、こうした再生たんぱく繊維の総称として、アズロン繊維(Azlon)という名称が使われることもあります。

プロミックスは繊維関係の教科書の多くに記載されていますが、残念ながらこうした事情から現在は入手が困難で、逆にこのプロミックス繊維を使った服飾品、製品というのは過去に作られたものが主流になっています。絹の価格下落となると、その代替品とみられがちなプロミックスも、生産コストがどれくらい下がるかという視点で見られるようになり、今に至ります。

プロミックスの性能|物理的性質と化学的性質

次に物理的性質や、化学的性質について見ていきます。

プロミックス繊維の比重

プロミックスの比重は1.22となります。水には浮きませんが、同じ半合成繊維のアセテートよりも軽く、比較されることの多い絹の1.33〜1.45と比べても軽いです。化学繊維でこれよりも軽い繊維となると、ナイロンやアクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン(スパンデックス)といった種類となります。

プロミックスの公定水分率

繊維は、プラスチック等の塊と異なり、きわめて細長い特殊な形状をしていることから表面積も多く、取引の段階で重量をはかる際、すでに水分を吸ってしまっています。このため、繊維によってどのくらいを水分量として見るか繊維ごとに定められています。

衣服、布、ロープ等の吸水性は繊維が糸に加工され、糸が布やロープ等に加工されるため、形状なども深くかかわりがありますが、公定水分率も繊維自体のもつ吸水性能を見るひとつのパラメータということもできます。

プロミックスの水分率(%)
公定水分率 5.0
標準状態(20℃、65%RH) 4.5から5.5
その他の状態
20℃、20%RH:
20℃、95%RH:
20%RH:2.0から4.0
95%RH:8.0から9.0

プロミックスの耐熱性

プロミックスの持つ耐熱温度、どのくらいまでの熱に溶けないか、軟化しないか、外気に野ざらしにした場合の耐候性について下表にまとめました。

プロミックスの耐熱温度
耐熱性、耐熱温度 軟化点
溶融点 約270℃で分解してしまう。収縮しながら燃焼。
耐候性 屋外曝露でもほとんど強度は低下しない

プロミックスの引張強度

どのくらいの力まで引っ張っても千切れることがないかを示す引張強度については、繊維の場合、乾燥した状態と湿った状態とでは性能が異なります。

乾湿強力比は、75〜90%となります。引掛強さ(cN/dtex)は3.5から5.3、結節強さ(cN/dtex)は1.8から2.6、初期引張抵抗度(見掛ヤング率)は35から79(cN/dtex)、400から1000(kg/mm2)となります。

プロミックスの引張強さ|湿強度、乾強度、伸び率
繊維の種類 引張強さ(cN/dtex) 伸び率(%)
乾燥(標準時) 湿潤 乾燥(標準時) 湿潤
プロミックス(フィラメント) 3.1から4.0 2.8から3.7 15から25 15から25

プロミックスの化学薬品への耐性|耐薬品性と特殊溶剤

特殊溶剤は、この繊維を溶解させる特殊な溶剤が何かを示しています。

繊維自体を溶かす作用をもつ薬品が何かを下表にまとめました。苛性ソーダは水酸化ナトリウムであり、強アルカリの代表的なものとなります。塩酸、硫酸、蟻酸、酢酸などいずれも酸性となります。

プロミックスの耐薬品性
苛性ソーダ(5%、煮沸) 不溶
塩酸(20%、室温) 不溶、強度はほとんど低下しない
硫酸(70%、室温) 不溶
ギ酸(80%、室温) 不溶
氷酢酸(煮沸) 不溶
特殊溶剤 一般溶剤には溶解しない。熱ジメチルホルムアミド、熱ジメチルスルホキサイド、熱エチレンカーボネート、熱ロダン塩溶液に膨潤する。

繊維の種類と特徴

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