絹の繊維の特徴|絹の耐熱性、引張強度、成分、比重、変色、黄ばみ等シルクの特性とメリット、デメリットについて

2016年1月3日更新

絹は天然繊維のうち、動物繊維(たんぱく質繊維)に分類される繊維で、カイコから採取される歴史の古い繊維のひとつです。古くから高級品として扱われ、化学繊維もこの絹を人工的に作り出す試みがひとつの契機になっているものもあります。

絹の成分は、タンパク質であり、フィブロインと呼ばれるコアをにかわ質のセリシンの層にくるまれた形をしています。カイコ(蚕)は産業用に品種改良の末、吐糸能力に優れた家蚕と野生の野蚕に二種があり、一般には前者から産出されますが、野蚕についても希少な絹として流通していることがあります。

生糸を糸に加工していく精練の工程ではセリシンが除去されることもあり、繊維の断面構造が三角形に近いものになっていきます。

絹の性質と特徴

絹の糸や布をすりあわせると、キュッといった独特の「絹なり(絹鳴り)」と呼ばれる現象が発生することがあります。昨今は光沢のみで本物の絹を見分けることが難しいため、天然と人工の絹を見分けるひとつの方法としてこの絹鳴りを使うことがありますが、なかにはこの絹鳴りが発生しないものもあります。

燃やすと髪の毛のような匂いがするため、これがもっとも確実な見分け方のひとつですが、非破壊でしかも目視でとなると、業界関係者でないと難しいかもしれません。

類稀な高級感や軽さ、滑らかな肌触りなどと引き換えに、摩擦や日光に弱い性質を持つため、取り扱いには手を焼く素材のひとつです。

絹繊維の構造

二本の繊維となるフィブロインの外側をにかわ質のセリシンが覆う構造をしています。このため、繊維の断面は楕円形、あるいは三角形となっています。表面は電子顕微鏡で見てもきわめてなめらかで、とげとげしい部分や鋭利な部分、節などがまったくありません。天然繊維は、いずれも短繊維の形でとられるため、それを紡績によって「糸」に加工していくものですが、絹だけは唯一、一本の単繊維で構成される長繊維(フィラメント糸)の形をとることができます。絹も短繊維をよって糸にする紡績糸も存在しますが、若干価格が安くなります。

絹繊維の長さ、太さを表す単位

絹は、化学繊維と同様に一本の繊維から構成されている長繊維(フィラメント糸)であるため、単位としては恒長式繊度のデニールを用います。

標準長9000メートルで標準重量1グラムある繊維を、1Dと表記します。2グラムあるものなら2Dとなります。

絹繊維の用途

その繊細な風合いや、独特の高級感をもつ光沢などから高級な衣料品に使われています。衣料品のうち、シャツやブラウスなどをはじめ、ネクタイや着物にも多用されます。伝統的な楽器の弦の材料として使われたり、画材として使われたりすることもあります。保湿性を活かした「化粧品」として絹の成分を含んだ製品も市場には出てきています。また、天然のタンパク質からできた糸であることから、医療用の縫合糸として使われることもあります。

絹のメリット、デメリット

絹は古くから交易品として歴史の表舞台でも活躍してきた高級品です。現在もシルク製品は各国・各地方で特産品として流通しています。工業用途としては稀で、主として消費財としての利用が大多数を占めます。

絹繊維のメリット

保湿性、吸湿性、通気性にすぐれています。また染色性もよいため、美しい色に染まります。肌触りがとても滑らかで、やわらかく、重量も軽いですが、獣毛に比べると強度があります。その高級感は独特なものがあり、他の繊維では代替が困難ですが、光沢や風合いについては化学繊維でも見分けがつかないようなものは存在します。

絹繊維のデメリット

日光に弱いため、耐久性・耐候性に欠けます。またタンパク質を成分としているため、熱に弱い、黄ばみやすい、変色しやすい、虫に食われやすいといったデメリットもあります。また高価で、手入れや管理、洗濯に非常に手間がかかることも難点と言えます。

絹、シルク製品の洗濯方法、洗い方

一般にはクリーニング店に依頼することが多いですが、自宅で行う方もいます。洗濯機では洗濯できないことが多いため、個別に手洗いとなります。タンパク質を主成分としているため、髪を洗うように手入れするのが基本となりますが、シルク専用の中性洗剤や香料が入っていないシャンプーなどで洗浄されます。

熱に弱いため、水かぬるま湯をもちいて行われますが、化学物質を嫌う素材であり、柔軟剤や漂白剤も使うことができません。また、乾燥機は使えず、日光にも弱いため、陰干しにより乾燥させます。

天然繊維の中では、耐熱温度がもっとも低いため、アイロンをする場合、当て布が必須となり、低温で湿った状態で行う必要があります。

絹の性能

次に絹繊維の物理的性質や、化学的性質について見ていきます。

絹繊維の比重

軽いことで定評のあるシルク製品ですが、水に浮くほど軽くはありません。比重は1.33となり、天然繊維としてはウール等と並んでもっとも軽い部類です。

絹の公定水分率

繊維は、プラスチック等の塊と異なり、きわめて細長い特殊な形状をしていることから表面積も多く、取引の段階で重量をはかる際、すでに水分を吸ってしまっています。このため、繊維によってどのくらいを水分量として見るか繊維ごとに定められています。

衣服、布、ロープ等の吸水性は繊維が糸に加工され、糸が布やロープ等に加工されるため、形状なども深くかかわりがありますが、公定水分率も繊維自体のもつ吸水性能を見るひとつのパラメータということもできます。

絹は生糸の状態では11%が公定水分率となります。綿よりは高いですが、麻や毛ほどではありません。吸水性よりも、「保湿」能力に着目される繊維でもあるため、化粧品に使われることがあります。

絹の耐熱性

天然繊維の中ではもっとも熱に弱いといえます。

絹の持つ耐熱温度、どのくらいまでの熱に溶けないか、軟化しないか、外気に野ざらしにした場合の耐候性について下表にまとめました。

成分がタンパク質であるため、熱による変色や変質には注意を要します。

絹の耐熱温度
耐熱性、耐熱温度 軟化点 軟化、溶融は観察されない。
溶融点 溶融点は見られないものの、120℃前後で黄変。150℃で分解。
耐候性 日光に弱い。外気への長期曝露で強度低下が著しい

絹の引張強度

どのくらいの力まで引っ張っても千切れることがないかを示す引張強度については、繊維の場合、乾燥した状態と湿った状態とでは性能が異なります。

歴史の古い天然繊維であるため、当時は強い素材ではありましたが、強度が求められる用途には不向きです。また濡れると強度が低下します。この辺は綿や麻とは逆となります。

絹の引張強さ|湿強度、乾強度、伸び率
繊維の種類 引張強さ(cN/dtex) 伸び率(%)
乾燥 湿潤 乾燥
2.6から3.5 1.9から2.5 15から25

絹の化学薬品への耐性|耐薬品性と特殊溶剤

特殊溶剤は、この繊維を溶解させる特殊な溶剤が何かを示しています。

繊維自体を溶かす作用をもつ薬品が何かを下表にまとめました。苛性ソーダは水酸化ナトリウムであり、強アルカリの代表的なものとなります。塩酸、硫酸、蟻酸、酢酸などいずれも酸性となります。

タンパク質であるため、薬品類は極力避けるべきで、種々の化学物質ともあまり相性が良くありません。迷った場合は、髪につけたらどうなるか、という点で注意しておくとよいかもしれません。

絹の耐薬品性
苛性ソーダ(5%、煮沸) 溶ける
塩酸(20%、室温) 溶けない
硫酸(70%、室温) 溶ける
ギ酸(80%、室温) 溶けない
氷酢酸(煮沸) 溶けない
特殊溶剤 銅アンモニア

繊維の種類と特徴

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