スーパー繊維の種類と比較|最強の繊維とは

2020年12月30日更新

スーパー繊維とは、従来の常識では考えられないほどの強度と弾性率を持つ繊維のことで、その開発において日本は世界のトップレベルにあるといわれています。通常の繊維とは一線を画す性能ゆえ、用途も通常の衣服ではなく特殊なものが多く、スポーツ用品や航空・宇宙、自動車をはじめとする輸送機器や土木・建築、医療などの分野で軽量かつ高強度や特殊性能が求められる環境での使用が拡がっています。歴史のあるものだとアラミド繊維をはじめ、PBO繊維、炭素繊維、超高分子量ポリエチレン繊維などがスーパー繊維に該当します。

スーパー繊維の定義と分類

定義上は、約2GPa以上の引張強度を持ち(この時点で強度に比較的優れている一般的な繊維の3〜4倍もの強度があります)、弾性率が約50GPa以上の繊維のことを呼びます。2GPaといえば、1mm2あたりで約200kgの重量に耐えられることになります。なお弾性率は変形のしにくさを表す物性値となります。

スーパー繊維は大きく分けると、有機繊維と無機繊維に分類されます。化学繊維の一種となる合成繊維と同じく、高分子を材料とした繊維であるため、分類上は合成繊維になりますが、その特徴は、ずば抜けた強度だけにとどまらず、耐熱性や耐火性・防火性・難燃性を持つものや耐疲労性をもつもの、衝撃吸収性能をもつもの、耐薬品性、耐摩耗性を備えたもの、低熱膨張、高熱伝導といった特徴を持つものもあります。

単独の繊維や糸としての利用だけでなく、他の素材と組み合わせたり、フィラーとして添加したり等補強材としても使われます。例えば、高圧容器の周囲をスーパー繊維の糸でまいて耐圧をさらに高めたり、金属ワイヤーと組み合わせて使うことで破断強度をさらに高めたり、樹脂・プラスチックの中にフィラーとして混ぜて材料の強度を高めたりといった使い方です。

高強度の金属材料と比較されることもありますが、繊維であるため、非常に軽いうえ、錆の問題とも無縁です。ただ高機能と引き換えに価格が高いため、採用する際にはコストと相談が必要な点が難点とも言えます。またあくまで繊維の形状をとっているため、この部分についても用途を選ぶことがあります。

スーパー繊維の種類と特徴、名称の一覧

下表にスーパー繊維に分類されることの多い主要な繊維とその特徴を一覧にまとめました。

最強の繊維は何か

引張強度や弾性率の面から見た場合、最強の繊維となるのは、PAN系炭素繊維です。炭素繊維のうち、高強度タイプとなる東レのトレカ1100は、引張強度にして7GPa、引張弾性率は324GPaにも及びます。また耐熱性の面でもきわめて高い性能を持ち、不活性雰囲気であれば3000℃近くまで使用に耐えうる性能を持ちます。密度を1.79 g/cm3とした場合、7GPaは39.1 cN/dtexに相当します。汎用繊維で強度が強いとされるナイロン(鋼鉄の5倍)でも0.65Gpaとなります。

スーパー繊維の中でも有機繊維に絞ってみた場合、PBO繊維に分類される東洋紡のZylon(ザイロン)が最も強度の優れた繊維となります。引張強度5.8GPaとなります。高弾性率を求めるのであれば、ピッチ系炭素繊維の935GPaが最も高い値となります。

スーパー繊維の種類と特徴、名称の一覧
スーパー繊維の名称 種類 特徴 用途 代表的な商品名
パラ系アラミド繊維 有機繊維 引張強度や弾性率など機械的強度に優れる。 引張強度3.4GPa、弾性率96.6GPa(Kevlar 129、高強度タイプ)。引張強度3.2GPaから3.5GPa、弾性率65から85GPa(テクノーラ)いずれも分解温度は500℃。200℃でも59〜75%の強度保持。 防弾チョッキ、防刃手袋、タイヤコード、コンクリート補強材、自動車(ブレーキパッド、ベルト)、光ファイバーケーブルの補強材、航空機部材 ケブラー(東レ・デュポン)、テクノーラ(帝人)
メタ系アラミド繊維 有機繊維 ポリエステルと同程度の性能だが、難燃性、耐薬品性に優れる。自己消化性性能をもつため、高温でも性能を長時間維持できる。260℃で65%の強度を保持。400℃で分解。絶縁性を持つ。引張強度は0.51GPaから0.86GPa。 消防服や防火服、耐熱フィルター、耐熱ベルト、電気絶縁、材、抄紙用フエルト、複写機クリーナー等 コーネックス(帝人)
超高分子量ポリエチレン繊維(高性能PE繊維) 有機繊維 通常のポリエチレンの分子量が数万〜20万程度に比し100万以上の分子量を持つ。比重は0.97で水にも浮く。衝撃吸収性、耐摩耗性、耐薬品性に優れる。強度は3.5GPa以上、弾性率は123GPa以上(ダイニーマ)。ダイニーマは温度を下げると延びる特徴を持つ。強度:2.6GPa 弾性率 117GPa (Spectra 900)。絶縁性を持つ。 釣り糸、漁網、船舶用のロープ、防護手袋、登山用品 ダイニーマ(東洋紡)、スぺクトラ(ハネウェル)
ポリアリレート繊維 有機繊維 優れた耐酸性を持つ。融点は400℃以上。引張強度は2.9〜4.8GPa、弾性率は50〜120GPa。パラ系アラミドに匹敵する強度。高強度、高弾性率、耐熱性、耐酸性、低伸度、低クリープ性、低吸湿性(ポリエステル系ならではの特徴)、振動減衰性を持つ。火星探査機のエアバッグにも採用。 ロープ、漁網、光ファイバー補強材、スポーツ・レジャー用品、電材、防護用品全般、成型品、機能紙、飛行船の膜材 ベクトラン(クラレ)
超高強力PVA繊維 有機繊維 引張強度2〜2.6GPa、弾性率39〜41GPa。高強力を求められる特殊なセメント補強材、高強力紡績糸や織物、安全具などにも使われる。ビニロンよりも高強力の繊維となるのは、繊維断面が真円に近い均一な繊維構造の繊維が得られるため。 コンクリート補強材、プラスチック補強材、タイヤコード、ベルト、ロープ クラロンK-II(クラレ)
PBO繊維 有機繊維 ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維(ポリベンゾアゾール繊維)。有機繊維の中で最強とも言われる繊維。引張強度5.8GPa 弾性率180GPa(Zylon AS)。融点・分解点も650℃と高温。ただし400℃の環境では強度は14〜18%程度まで落ちる。200℃で75%〜85%の強度保持。LOI値が68もあり、燃えない繊維。絶縁性を持つ。低クリープ性、低吸湿性も持つ。 防弾チョッキ類、防護材、ベルト、ロープ、セイルクロス、各種補強材、耐熱クッション材、気球膜材、人工衛星部材 ザイロン(東洋紡)
PPS繊維 有機繊維 ポリフェニレンサルファイド繊維。融点が285℃と高いうえ、長期の高熱環境に耐える。150〜190℃の高温環境での耐薬品性もよい。メタ系アラミド繊維よりさらに燃えにくい。ただし、厳密にはスーパー繊維の定義には入らない。0.54GPaから0.66GPaの引張強度で、弾性率も3〜8GPa。絶縁性がある。 成形用途(ガラス繊維との混合)、フィルター、抄紙用キャンパス、焼却設備でのバグフィルター、電気絶縁料 トルコン(東レ)、プロコン(東洋紡)
ポリイミド繊維 有機繊維 メタ系アラミド繊維に似るが、耐熱性・耐薬品性に優れる。LOI値はメタ系アラミドよりも高い38。融点がなく、500℃までは分解しない。260℃程度では機械的性質が変わらない。 ごみ焼却場のバグフィルター、防火服、耐熱服、航空・宇宙部材。強度は0.47GPa、弾性率も4GPaとなるため、スーパー繊維としては分類されないこともある。 P84(インスペック・ファイバーズ社)
PAN系炭素繊維 無機繊維 軽くて強く硬いことが最大の特徴。高強度タイプだと、引張強度にして7GPa、引張弾性率は324GPa。導電性:8〜20Ωm。高強度、高弾性率、難燃性、耐熱性に優れる。炭素繊維のうち世界の9割はこのPAN系。高性能のレギュラートウタイプと汎用グレードのラージトウタイプがある。耐熱性については最高使用温度は3000℃といわれ、融点・分解点自体が3650℃ときわめて高い。炭素由来の素材であるため、高温の空気中では酸化が進んで重量が減少するが、高弾性率タイプの炭素繊維だと約0.1%程度の減少となる。 スポーツ・レジャー用品、航空・宇宙部材、機械部品、高圧容器の補強材、X線機器 トレカ(東レ)
ピッチ系炭素繊維 無機繊維 異方性タイプと等方性タイプがある。導電性:4〜200Ωm。引張強度は1から3.7GPa、弾性率335〜935GPa。スーパー繊維の中で最も高い弾性率を持つ。 コンクリート補強材、スポーツ・レジャー用品、アスベスト代替、機械部品、航空機材 ダイアリード(三菱レイヨン)
ガラス繊維 無機繊維 強度は3.4から4.6GPa、弾性率は73から84GPa。単独で使用されることはあまりなく、樹脂と混ぜて補強材としての利用が多い。 プラスチックの補強材 Eガラス(日東紡)
ボロン繊維 無機繊維 強度は3.4GPa、弾性率は392GPa(AVCO)。ボロン繊維は高強度・高弾性だが、圧縮強度は引張強度の2倍という他の繊維にはない特性を持つ。 軍用機やスペースシャトル等 AVCO(TEXTRON社の子会社)
炭化ケイ素繊維 無機繊維 強度は2.9GPa、弾性率は206GPa(Nicalon 200)。 セラミック材料として優れた強度と弾性率を持ち、耐熱性に優れており、大気中における耐酸化性、化学的安定性にも優れた先端材料。 航空機のエンジン部材 ニカロン(NGSアドバンストファイバー)
      

繊維の種類と特徴

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