高速度工具鋼鋼材(SKH材、ハイス鋼)の用途、機械的性質、成分の一覧

2010年8月14日更新

別名ハイス、ハイス鋼(ハイスコー)と呼ばれる機械加工用の工具鋼材です。タングステン系とモリブデン系の2種類があります。JIS規格では以下の15種類について規定があります。耐摩耗性の高い鋼種になればなるほど加工するのは難しくなります。

代表的な材料としては、切削性がよく、高速重切削、難切削材用工具として用いられるSKH3、4(W系にCoを4.5〜11%添加してある)をはじめ、これにVを添加したSKH10は高難削材用工具、モリブデン系としては、衝撃のかかる高硬度材切削用工具用にVを2.3〜4.5%と多く含むSKH52、SKH53、SKH54、Coを4.5〜11%含むSKH55−57などがあります。

タングステン系 Wを11.5〜19%含み、硬く、耐摩耗性が大きい 切削工具 SKH2, SKH3, SKH4, SKH10
モリブデン系 Moを3.2〜10%含み、粘さがあり、靭性に優れる ドリル等の工具、切削、各種工具 SKH50, SKH51, SKH52, SKH53, SKH54, SKH55, SKH56, SKH57, SKH58, SKH59
粉末、冶金で製造したモリブデン系 Moを4.7〜5.30%含み、硬度、じん性、耐摩耗性に優れる 切削工具、各種工具 SKH40

ハイス鋼は切断用工具や刃物等にもよく使われ、加工する機械や再研磨などにより砥ぎなおす機会も多い材料です。この材料の研削や研磨はほとんどの場合、CBNホイールが用いられます。研削砥石による加工では、WA系のものが使われます。なお、加工のなかには、砥石の目を意図的に早期損耗させて面粗度を確保するという考えもあり、粉末ハイスなどをダイヤモンドホイールで加工してしまう場合もありますが、やはり損耗面や最終的な精度面でもCBNのほうが優れた結果が期待できます。

研削のしやすさで見ると、ハイスは全般的に研削性は悪い材料で、特にバナジウムを含むVハイスは研削するのにも難儀します。

「JIS G 4403:2006 高速度工具鋼鋼材」に規定のある材料記号

高速度工具鋼鋼材(SKH材)の材料記号の変遷:JISの新旧対照表
1950年 1953年 1956年 1968年 1983年 2000年
SKH2 SKH2 SKH2 SKH2 SKH2 SKH2
SKH3 SKH3 SKH3 SKH3 SKH3 SKH3
SKH4A SKH4A SKH4A SKH4A SKH4 SKH4
SKH4B SKH4B SKH4B SKH4B 廃止 -
SKH5 SKH5 SKH5 SKH5 廃止 -
SKH6 SKH6 SKH6 廃止 - SKH40
- - SKH8 廃止 - SKH50
- - SKH9 SKH9 SKH51 SKH51
SKH7 SKH7 - SKH10 SKH10 SKH10
SKH1 - - SKH52 SKH52 SKH52
- - - SKH53 SKH53 SKH53
- - - SKH54 SKH54 SKH54
- - - SKH55 SKH55 SKH55
- - - SKH56 SKH56 SKH56
- - - SKH57 SKH57 SKH57
- - - - SKH58 SKH58
- - - - SKH59 SKH59

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