自動車部品の供給年限の制度

2024年5月20日更新

自動車部品の供給年限は、カーメーカーから部品メーカーに開示される補用品の「生産年限制度」と「一括生産制度」の2つによって決められており、量産での車両生産が終了してから年数が経過して一定の需要数に落ち込むと補用品やサービスパーツ自体の供給が終了する仕組みになっています。

自動車の部品は、量産されているときから修理用の場合は補用品や補給品として注文が入る場合もありますが、量産が終了すると補用・補給だけの注文に変わります。少ないものであれば、数年に数個という注文もあれば、10年に1回というものすらあります。一方で、補用品でも毎月定期的に数十個から数千個受注するものもあります。適用される車がどのようなものか、車が使用されている国や地域、取引の形態、その車の使われ方にも影響します。

新車販売が難しく中古車や修理が盛んな地域で流通量の多い車種・車型であれば、補用品の注文が多くなります。また量産時にKD等で海外へ供給されているものやTier1を通じて販売されているものも、ある日突然受注が来るというものになりがちです。

供給年限を決める2つの制度

自動車メーカーごとに制度の名称が異なりますが、仕組み自体はほぼ同じものです。自動車部品の供給終了には大きく以下の2つの系統があります。

生産年限制度

量産が打ち切りになると、補用品としての供給のみになり、これは旧型補給とも呼ばれます。この旧型補給自体が終了することを「製造廃止」「製廃」とも言いますが、これが可能となる条件を提示したものがこの生産年限制度です。各社各様の基準ですが、ベースは同じで、量産打ち切りからの「経過年数」と年間の「需要数・注文数」の実績から判定がされます。

一括生産制度

これは、量産が終了してから一定年数経過し、需要も落ち着いてきたころに、自動車メーカーが一括して部品を発注し(last buy:いわゆる最終注文)、それ以降は部品メーカーの供給義務がなくなるというものです。品質上、長期間の保管に適さないものは対象外になることが多いです。また国によって供給年限が法令で定められている場合や、旧車のように長期間の保有が前提となる車種に使われる場合、適用されません。部品メーカーから申請できる制度を持つ自動車メーカーとそうではないメーカーとがあります。

一括生産の場合は一括で作ったものを部品メーカー側で在庫し続けるパターンと、自動車メーカー側で在庫するパターンとに分かれます。

なぜこの制度があるのか

自動車を長く乗り続けるためには修理・補修用の部品がいつまでも供給されることが前提となりますが、部品メーカーの視点で見ると、量産が終わった部品は採算が取れなくなる為、無期限の供給は事業に影響が出てきます。金型や設備の保有・保全から人員の確保、製造指示書や図面類などの帳票の維持管理、その部品を作るために必要になる部材の調達等、量産では気にもしていなかったコストが重くのしかかってきます。

車の量産はおおむね2〜3年といわれており、中にはロングランのものもありますが、この前提で考えると、補用品や補給品といわれる補修用途の部品を供給する期間のほうがはるかに長くなります。継続的に自動車メーカーに供給を行っている部品メーカーであれば、量産が3年で終わると補給のみになる、という製品が毎年一定数発生することになります。対して、補用品が供給年限を迎えて終了となるのは10数年、なかには20年経過しても供給継続というものもあります。

こうなると、容易に想像がつく通り、補用品が増えるスピードのほうが終了するスピードよりも速くなります。

自動車部品の需要曲線

諸外国では供給年限を法令で定めている場合もありますが、日本の場合は法令ではなく各自動車メーカーが定めたルールのもとに運用がなされています。

量産での車の生産が終わった後も、補修用途で一定期間部品の供給が行われ、部品メーカーの供給義務もありますが、それを決めるのは自動車メーカーであり、突き詰めていくと需要数がカギになるので、その車に乗り続けるユーザー数によって決まるということになります。

自動車部品メーカーは、製造廃止か、一括生産かの指示があるまでは部品の供給義務が継続しますので、設備や型治具の維持コスト等の負担がのしかかることになるため、カーメーカーによっては部品メーカーからも申請ができる制度を設けているところもあります。

自動車部品の供給年限の制度

以下自動車メーカー別の制度の一例をご紹介します。ただこれらは同じメーカーでも時代の変化や環境の変化に応じて常に変わります。

生産年限や一括生産制度で供給義務がなくなった部品については、自動車部品メーカーはそれに使用する専用の金型や治工具類、設備を廃棄し、空いた場所にあらたな製品を作る設備投資ができるようになります。

ただし、これら制度によって供給年限がなくなっても、再生産制度という形で自動車メーカーから再度生産の依頼がくることもあります。この場合は自動車メーカー側の負担で金型・治工具等を準備することになります。

メーカー 制度 補用品になってからの経過年 受注実績
トヨタ 生産年限制度 11年以上 直近3年間の平均受注0個
13年以上 直近3年間の平均受注0個
16年以上 直近3年間の平均受注10個以下
21年以上 直近3年間の平均受注40個以下
一括生産制度 5年以上 年10個以下(直近2年平均)
15年以上 年120個以下(直近2年平均)
日産 8年製廃 8年以上15年未満経過 50個以下(過去4年間の合計数量)
15年製廃 15年以上経過 月間平均受注数10個未満
ホンダ 供給年限(廃止) 16年以上20年未満 2年間の受注数が10個以下
20年以上 2年間の受注数が240個以下
一括生産 15年以上20年未満 2年間の受注数が180個以下
三菱 永年計画申請(廃止) 10年以上20年未満 直近3年間の合計が0個
一括永年申請(一括生産) 13年以上20年未満 直近2年間の合計が20個以下
マツダ 最終生産 一般部品:旧型になって7年以上経過 過去5年間の受注実績をもとに以下計算式。
(生涯必要数−在庫数)≦ 経済的生産量
シャシー部品:旧型になって8年以上経過
エンジン部品:旧型になって9年以上経過
調達打切 一般部品:旧型になって7年以上経過 過去5年間の受注実績をもとに以下計算式。
生涯必要数 ≦ マツダ在庫数
シャシー部品:旧型になって8年以上経過
エンジン部品:旧型になって9年以上経過
いすゞ 繰上生産(廃止) 一般車型(商用車、RV):12年以上経過 直近3年の受注平均が年間10個未満
一般車型(トラック、バス、特殊車):15年以上経過 直近3年の受注平均が年間10個未満
政策車型(大型路線バス):18年以上経過 直近3年の受注平均が年間10個未満
政策車型(防衛省向け、消防車専用部品):20年以上経過 直近3年の受注平均が年間10個未満
繰上生産(一括生産) 一般車型(トラック、バス、特殊車):12年以上経過 直近3年の受注平均が年間10個未満
政策車型(大型路線バス、防衛省向け、消防車専用部品):15年以上経過 直近3年の受注平均が年間10個未満
日野 生産打切制度 10年以上経過 直近3年合計が0個
20年以上経過 受注数不問だが、一定数量の需要が継続している場合は継続生産
一括生産制度 10年以上15年未満 直近3年平均が年間5個以下
15年以上20年未満 直近3年平均が年間10個以下
ダイハツ 生産年限 9年以上経過 直近3年間の受注が0
15年以上経過 直近三年間の年平均受注数が10個以下
21年以上経過 直近三年間の年平均受注数が40個以下
一括生産 5年以上経過 直近2年または3年の年平均受注数が10個以下
15年以上経過 直近2年または3年の年平均受注数が120個未満
スズキ 型・治工具廃却申請 6年以上 直近3年間で年0個
富士重(スバル) 生産中止 10年以上経過 直近7年間で受注がないこと
15年以上経過 直近3年間で受注がないこと
一括生産(一括購入) 7年以上経過 直近3年間で年平均受注5個未満
15年以上経過 直近3年間で年平均受注100個未満
三菱ふそう 永年計画申請(廃止) 12年以上経過 直近3年間の合計が0個
一括永年申請(一括生産) 12年以上経過 直近2年間の合計が20個以下
日産ディーゼル 7年製造廃止部品 7年以上経過 直近3年間の受注がないこと
15年製造廃止部品 15年以上経過 量産ラインでの生産終了して15年経過したものは原則製造廃止
一括生産 7年一括生産部品 過去3年間の年平均受注数が4個以下
15年一括生産部品 過去3年間の年平均受注数が4個以下

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