アメリカの25年ルールにおける補修部品

2022年3月6日更新

アメリカにある25年ルールというのは、25年規制とも言われますが、自動車が登録されてから25年以上経過すると、輸入車に通常課せられている様々な規制(衝突安全性等の連邦安全基準、排ガス等の環境規制も含む)の基準を満たさない車でも輸入できるようになる、というルールです。

根拠法は、Imported Vehicle Safety Compliance Act of 1988(通称、輸入車セーフティコンプライアンス法)となりますが、複雑な法解釈に基づいて行う必要があるケースもあり、その難度に応じて輸入時にかかるコストは上下します。

アメリカの25年ルールにおける補修部品|目次
  1. クラシックカーになると得られる特典
  2. 25年ルールの対象車種の補修部品

クラシックカーになると得られる特典

25年経過しているようなクラシックカーであれば、通常北米地域での公道での走行ができません。また安全基準が今の基準で満たされていないもの、左ハンドルの米国での右ハンドル車、そもそもこうした基準をクリアできていないので輸入できないことになっている車等これらすべてが「輸入可能」になります。また関税や諸税についても減免されるという特例まであり、欧州や米国では日本のように古い車になるほど維持にかかる費用が跳ね上がっていく制度とは対照的な様相を呈しています。

ただ、これだけでは古い車にも価値を見出し大切に長く乗っていくという文化に連動した制度の一つであり、「クラシックカー」に対する優遇措置の一つとしてあまり大きな注目を集めることも無いのですが、近年、旧車のスポーツカーを中心に愛好家が高値で購入することもあり、25年経過した中古の名車がスポーツカーを中心に高騰する傾向が出てきています。

これは輸入車セーフティコンプライアンス法の制定当時は欧州のスポーツカーをはじめとする名車が主な対象となっていたのですが、ここ最近は日本のスポーツカー等に高値が付くため、本来米国では走ることができないために日本国内の愛好家たちの間で流通していたものが、米国に出て行ってしまい、国内が品薄になるという事態になっている車種もあります。米国の富裕層を中心とした愛好家が日本の旧車を輸入する動きは一部で新たなトレンドとなりつつあります。

ここ直近までで25年ルールの対象となる、あるいはなったことで価格高騰が進むのではと危惧される国産車種には例えば以下のようなものがあります。

  • トヨタ 80スープラ
  • トヨタ・センチュリーV12(2代目)
  • トヨタMR2(SW20)
  • トヨタアルテッツァ XE10型
  • トヨタ・アリスト(2代目)1997年8月
  • 日産スカイラインGT-R R32型
  • 日産スカイラインGT-R R33型
  • 日産スカイラインGT-R R34型
  • 日産シルビアSR20エンジン搭載
  • 三菱ランサーエボリューションY(+海外で手に入りにくいVI未満のランサーエボリューション)
  • 三菱パジェロ・エボリューション
  • スバルインプレッサWRX STI
  • ホンダ・シビック・タイプR(EK9)
  • マツダRX-7(FD3S)

過去の車であるため、台数に限りがあり、今後減っていくことはあっても増えることがない、という特性を持つ車です。少ない車種をめぐって値段が吊り上がっていくという日本のファンにとっては有り難くない事象が起きているという状況です。一方、ディーラー等の中古車市場や部品市場では別の意味での需要掘り起こしに向け各社が動いているという状況です。

自動車メーカーの正規の販路での輸出入ではないため、グレーマーケット、いわゆる灰色市場の一つに分類されますが、その市場規模が大きくなってきているということでもあります。特にこうした旧車は数が限られているため、車両の価格が高騰するだけでなく、その維持・メンテナンスの部品需要も出てきます。

25年ルールの対象車種の補修部品

自動車メーカーによっては純正部品の入手が困難になった往年の名車の純正部品の復刻に向けて動き出す例も出てきています。トヨタのGRヘリテージパーツプロジェクトで、スープラや2000GT、ランドクルーザー等の過去の名車の補給部品・補修部品を供給できる体制を構築しつつあります。これは他のメーカーでも同じような動きが出てきています。

中古車市場のうち、グレーマーケットに相当する部分ではあるため、すべてのメーカーや人気車種でこのような動きがとられているわけではありませんが、部品需要とも連動しつつあります。とはいえ、純正部品メーカーの多くは供給年限が終了しており、金型や設備を廃却していれば復刻は新規に部品を立ち上げるのと変わらない事態となるため、純正以外の部品で代替できるようにする方法も取られます。

自動車部品メーカーから見た場合、補修部品や補給部品の供給義務というのは、一定年数を経過したあと販売数が年間いくつ以下になるといった条件を満たすと順次、自動車メーカーから製造廃止の通知や永年計画といったものが出され、部品の供給義務がなくなります。

純正部品をつくる部品メーカーにとっては、いかに部品に高い値段がついたとしても、その部品を製造するのに必要な設備や金型・治工具の維持、製造するたびにかかるコスト、間接部門の管理コストを勘案すると、わずかな数量のオーダーがたまに入るという状況は赤字を作り出すことに変わりなく、とにかくはやく補修部品・補給部品の供給義務から解放されることがコスト削減や赤字圧縮のカギになるという側面を持ちます。

自動車部品は大量に販売されるという前提でコスト設計されますので、量産が終わり、補修用途だけになるとほとんどの部品やメーカーでは採算が合わなくなってきます。このため、製造廃止の制度を各自動車メーカーは設けているわけですが、中には特例で25年以上供給しているものもあります。筆者が目にしたことがあるものでは、量産立ち上げから起算すると40年以上も供給している部品もあります。

つまるところ、部品の供給を終えてよいかどうかという決定権は原則自動車メーカー側にあるため、必要に応じて部品の供給年限をのばす、あるいは製造廃止とともにまとめて部品を大量発注する(経年劣化しない部材を使った部品に限られますが)といった方法が取られることになります。

こうした事情から市場に存在している台数が多かったり、大切にしているユーザーが一定数ある車種についてはカーメーカー側が容易に部品メーカーに対して製造廃止という扱いにはせず、補修部品としての注文ができる状態で残しているものもあります。

部品の製造が完全に終了しており金型等がないような場合、仮にどうしても純正部品が必要な場合は、試作型等を作って対応する部品メーカーもあります。量産ではないので、数個程度作ることができればそれでよいという条件であれば、製造したもののスペックをすべて計測して図面と同じかどうか品質確認する試作品のようにして出荷するという方法もあるためです。

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