旧型補給品とは何か

2021年10月31日更新

旧型補給品とはトヨタ用語のひとつで、量産が終了した後の補修用部品、補給専用部品のことを意味しています。補修用部品は補給品や補用品、あるいはサービスパーツとも呼ばれますが、これらは自動車が量産されている間にも修理・交換の需要はあるので、量産立ち上げとともに補給品として発注できるよう部品登録されます。

この量産期間中をトヨタでは号口期間と呼ぶため、この間に発注・供給される補給品のことを「号口補給」と呼ぶこともあります。

自動車の補給部品には号口補給と旧型補給

号口補給が終わると、旧型補給での発注がはじまる、ということになります。つまり補給には量産中に発注があるものと、量産が終了してからの2種類あるということになります。号口補給中は、それこそ量産車両のために大量に生産していますので、サプライヤーの生産能力や供給面ではあまり心配はなく、補給部品として発注窓口や納入場所が異なったり、梱包方法が異なったりといったこまごました違いがあるだけとなります。

ただ旧型補給となると、例えば月間数万個の供給を行っていた製品が、月間で数個になってしまうこともあり、特別な管理体制が必要となります。自動車部品は品種にもよりますが大量に売って稼ぐタイプのもので、一つ当たりの粗利は他業種に比べても決して高いほうではなく、注文が少ないと生産コストに見合わないものも多数あります。自動車メーカー各社の定める補給品の価格には基準があり、なかには量産とあまり変わらず、作るだけ赤字になってしまうものもあります。

コスト高で悩みの種となる旧型補給

したがってサプライヤー目線ではこの旧型補給がいかに早く終了し、供給しなくてよい状態になるかというのは大きな関心事となります。品種によっては、設備・金型・ジグの置き場もかなり使いますので、年間1個しか作らないのにこうしたものを一式すべて製品ごとに残しておかないといけないという事態になります。置き場が確保できないという問題や、保管コストや管理コストがかさむ問題、生産効率が悪くなる問題があります。

旧型補給品に対する供給年限、いつまで自動車部品を供給しないといけないのかという問題は、自動車部品サプライヤーの頭を長年悩ませてきた問題の一つです。

いつまで供給が必要か

法令上は日本には自動車部品の供給年限は設定されていません。したがって、自動車メーカーごとに基準が決められてます。諸外国へも出荷されている場合は、各国で量産終了後も供給すべき年限が法令で決められていることがあり、その場合はその基準も上乗せされます。

自動車メーカーによっても異なりますが、例えばトヨタ車であれば、旧型補給の発注となってから何年経過しており、その期間中に受注が何個あったか、によって生産年限つまり供給しなければならない年限が変わってきます。

例外条件はあるものの、例えば、旧型補給になって7年間経過し、直近の2年はまったく補給部品の注文がない、という場合はそこで補給品の供給がなくなる可能性があります。この基準は経過年が増えると変わっていきます。例えば、13年以上経過なら直近2年で平均受注10個/年以下などといった具合です。

一括生産による買い上げ制度

一方で、一括生産という制度も設けてあり、こちらは一定の年限を経過して受注数が一定以下の補給部品については、自動車メーカー側で一括で買取を行い、それ以降はサプライヤーの供給義務をなくす、というものです。品質上長期保管しても品質劣化しないタイプの製品という条件付きで、海外向けで現地法令で供給終えて問題ない事や特殊車両に搭載されていない等の条件を満たす必要がありますが、画期的な制度の一つとも言えます。

補給部品は増え続けるもの

自動車部品メーカー、サプライヤーにとって補給事業を黒字化するというのはなかなか難しい部分があり、長く事業継続しており新規受注を取り続けているところであれば、補給品が誕生するペースと、補給品の供給義務が終わるペースに大きな違いが出てしまうため、旧型補給は増加の一途をたどります。

というのも、一般に4年前後でモデルチェンジすることを考えると(実際には売れ行きの問題でこれ以上あるいはこれ以下になるケースも多々ありますが)、仮に4年で量産が終わり旧型補給化したとしても、そこから7年、13年、21年経過してはじめて補給品の供給義務がなくなるのであれば、補給専用品がラインナップとして継続して増え続けていくことになります。

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