自動車の部品はどこで作られているのか

2021年12月10日更新

自動車の部品はそのほとんどが自動車部品メーカーで作られています。生産場所となる工場は、自動車メーカーの海外進出に合わせて、日本だけでなく世界中にあります。金額で見ると、後で詳しく記載しますが、国内で約16.9兆円、海外で約16.7兆円という規模になります。

部品メーカーの分類

一部の部品は自動車メーカーでも作られますが、一台の自動車に使う部品の数は3万点前後にもなり(自動車のエレクトロニクス化で電装部品は増加しています)、それぞれの部品に固有の技術力が必要になりますので、部品ごとに専門メーカーがあります。

さらに、このメーカーごとに序列があり、大きなところはティア1と呼び、自動車メーカーと直接取引しますが、自動車部品メーカーに納入する部品メーカーも多数存在します。

また自動車にとってコア(もっとも重要な部位)ともいえるボディやエンジン、パワートレインなどの部品は、それぞれの自動車メーカーの傘下にあるグループ会社や子会社(系列とも呼ばれます。自動車メーカーの名前をつけて、トヨタ系列、ホンダ系列等といった使い方をされます)で作っていることも多いです。

したがって、自動車メーカーと直接取引するメーカーかどうかという違いのほか、自動車メーカーの傘下にある部品メーカーと、独立系の部品メーカーがあるということになります。

大きな部品メーカーになると、自動車メーカーに対して、多数の部品を組み合わせた機能面でまとまりのある「かたまり」(モジュールと言います)で提案をすることがあります。例えば、ドライブシャフトは自動車のエンジンで作られた力を車輪に伝える機能を持つ部分ですが、この部分は多数の部品から構成されています。これに使われる個々の部品を自動車メーカーが個別に購入して組み立てるのではなく、ドライブシャフトとして他の部品を組み合わせて完成品にしたものを自動車メーカーに納入するという形です。

自動車メーカーの視点で見た場合、モジュールは最終的に4〜5程度になることが多く、車は大きくみると、4〜5のモジュールを組み合わせて作られるということになります。自動車部品を供給する側の視点では、もう少し小さい単位のモジュールでの納入となります。

自動車部品は冒頭で述べた通り、1台に多数の種類が使われるだけでなく、車種や車型といった車のモデルの違いでも違う部品が使われることが多いです。そうなると、同じ機能をもつ自動車部品であっても、それこそ数千〜数万種類も存在することになりますので、とても一つの会社で作れる種類・量ではありません。

したがって自動車部品の中でも分業が進んでおり、自動車メーカーと直接する大手部品メーカーをティア1と呼び、そのティア1へ納入する部品メーカーをティア2と呼びます。このように、自動車部品の供給はピラミッド型の階層構造になっています。

自動車部品は世界のどこで作られている?

日系の自動車メーカーが工場を持っている国やその周辺地域には、そこに何らかの自動車部品メーカーが存在します。日本自動車部品工業会(JAPIA)が毎年統計を発表しており、これをもとに傾向を見ていくと、日系の自動車部品メーカーの製造や生産する機能を持っている海外拠点(海外工場)は、下表の通り(2020年統計)です。

なお、日本の部品メーカーの販売会社や設計、管理などを行う海外法人も含めると、海外にある日本の部品メーカーの会社は2696社にもなり、売上高でみると海外分で合計16.7兆円になります。2020年度の日本国内での自動車部品出荷金額は、16.9兆円ですから、JAPIA加盟企業で回答のあった企業の統計ということを差し引いても、半分近くは海外工場で作っているということになります。これが部品メーカーによっては8割、9割が海外工場ということもあり得ます。

下表に、海外の国別に、日本の自動車メーカーと部品メーカーの生産ができる会社の数をまとめました。自動車がよく売れる地域にたくさんの部品メーカーが集まっていることが分かりますが、地域によっては自動車メーカーがないのに部品メーカーがあったり、その反対もあります。これは自動車メーカーの工場のタイプと、立地条件によっても変わってきます。

自動車工場は、近くに部品メーカーがなくてもその部品すべてを日本や諸外国から送り込んで車を作ることもできます。もちろん、現地で部品を購入できたほうが安くなりますので、そうした方法を模索しますが、なかには難しい国や地域もあります。こうした場合、自動車工場は2種類の形態があり、ボルトを締めるなどの比較的簡単な組み立てだけで車を作る工場(SKD)と、複雑な工程をもって一から車を作る工場(CKD)とに分かれます。

部品メーカーも商売ですから、利益になるのであれば自動車メーカーの近くに工場を作りますが、場合によっては複数の自動車メーカーに供給するのに都合のよい国や地域を選び、そこに生産機能を集約することもあります。

たいていは自動車メーカーのほうから、「近くに工場を作るなら製品を買ってくれる」というような話があるため、それにこたえる形で海外の工場を作る形になりますが、上記の事情もあって、自動車メーカーと部品メーカーの双方が必ずしも同じ国にあるわけではないということになります。

日系自動車部品メーカーと自動車メーカーの海外工場の数(海外法人数)
地域・国名 日系自動車部品メーカー 日系自動車メーカ−
北米合計 402 28
カナダ 23 5
アメリカ 255 14
メキシコ 124 9
エルサルバドル 1 0
ニカラグア 1 0
コロンビア 2 1
ベネズエラ 0 1
ブラジル 61 7
ペルー 0 0
パラグアイ 2 0
ウルグアイ 2 0
アルゼンチン 5 1
ロシア 13 6
欧州合計 221 9
イギリス 40 3
スウェーデン 1 0
リトアニア 1 0
オランダ 1 0
ウクライナ 2 0
ポーランド 20 0
スロバキア 5 0
チェコ 29 1
ベルギー 1 0
ドイツ 24 0
ルクセンブルク 0 0
オーストリア 1 0
ハンガリー 16 1
モルドバ 1 0
ルーマニア 10 0
セルビア 1 0
ブルガリア 2 0
モンテネグロ 1 0
イタリア 9 0
スペイン 16 1
ポルトガル 4 2
フランス 23 1
トルコ 12 4
アルジェリア 0 2
チュニジア 3 0
モロッコ 11 1
ナイジェリア 0 2
エジプト 1 5
ケニア 0 3
南アフリカ 7 5
サウジアラビア 0 1
中国 525 19
香港 2 0
台湾 42 7
韓国 43 0
ASEAN合計 575 46
タイ 256 15
ミャンマー 2 3
シンガポール 3 0
インドネシア 162 15
ラオス 2 0
ベトナム 56 7
カンボジア 7 0
フィリピン 48 6
インド 117 11
バングラデシュ 0 3
パキスタン 0 5
オーストラリア 0 0
ニュージーランド 0 0

現地調達の実態

統計からは、こうした日系の自動車部品メーカーの海外工場の納入先(販売先)は、8割近くが現地の自動車メーカーというデータが出ています。つまり販売先となるお客さんがいるところに部品工場を作っているということです。

一方で、自動車部品メーカーの顧客は自動車メーカーと部品メーカーということになるため、日系自動車メーカー以外の顧客もいます。欧州に日系自動車メーカーが少ないものの、部品メーカーが進出しているのは、日系以外の大手自動車メーカーが多数存在していることとも関係しています。

またこうした日系の海外の部品工場にしても、部品の生産に使う材料や原料についても7〜8割は現地調達を行っています。逆にいうと、3割前後は現地で材料が手に入らないので、日本や他の国からの輸入に頼っているということにはなります。海外進出した多くの日本の部品メーカーがいまだに海外の工場に一定量の部材の輸出を行っているのは、主に以下のような理由からです。一言で言ってしまえば、品質とコスト、技術力の問題です。

  • 現地メーカーから購入すると品質が維持できない。
  • お客様の要求にこたえられる材料が現地で入手できない。
  • コストと品質を両立できるメーカーがない。
  • 材料費が高騰する。
  • 労働力が十分確保できず調達が安定しない。
  • 現地での供給契約の慣習が特殊。

部品を作るのに必要な別の部品、材料、原料というのは見掛け上スペックが同じでも、きちんと品質管理されたものを使わないと性能が変わってしまうことがあります。また工業製品は繊細なものが多く、きちんと品質管理されていて同じスペックが検査結果で出ていても製造しているメーカーが変わると、それを使って作った製品の性能も変わってしまうことがあります。

こうしたことから、よくよく見てみると、「現地調達」といっても、原料・材料メーカー−部品メーカー−自動車メーカーのつながりは、結局日本での生産とほぼ変わっていないこともあります。違いは、原材料や部品メーカーが自動車メーカーの立地にあわせて海外法人となっているというところだけです。

自動車部品の生産場所はどのように決められる?

自動車メーカーが部品の購入を決める場合は、通常コンペ方式がとられます。つまり、その部品を作ることができるメーカーに一斉に見積もり依頼を出し、その各メーカーが自社製品のアピールや提案を行い、価格と性能の比較検討の上採用が決められるという流れです。

このため、部品メーカーは新たな設備投資を行わずともすでに自社のどこかの海外工場の設備が使えるような場合、競争に勝つため、そこで生産する前提での価格やより安く作れる国の工場を前提にした価格を出すこともあります。この場合は、自動車部品メーカー側からの提案で生産場所が決まる形です。

一方で、自動車部品メーカー側で複数の工場で作ることができる場合で特に日本の工場でも作れるという場合は、自動車メーカー側のほうから、日本国内で納入した場合の価格と、海外の現地工場から直接客先の海外工場へ納入した場合の価格を比較検討したいという打診がくることもあります。これはいわゆる、パススルーとKDのどちらが安いかを比較したいということになり、自動車メーカー側の意向で生産場所が決まる形になるパターンです。

自動車を海外工場で生産している場合、自動車メーカーはなるべく現地工場から部品を調達しようとします。これはコストを下げたいという目的のほか、日々の注文や納入形態の影響もあります。自動車の生産は、毎日分単位・秒単位で製造スケジュールが決まっているものもあり、部品メーカーに対しては、必要な部品を何時までに納入してもらうという厳密な納入スケジュールのもとに自動車の生産計画は成り立っています。

というのも、使用する部品の数や大きさもあるため、適当に使用する部品を購入してしまうと倉庫がパンクしてしまいます。その時間に使う分だけを納入してもらい、できた自動車はすぐに出荷していく、という形にしないと工場の面積がいくらあっても足りなくなります。

こうしたことから1日に何度も納入する多回納入という形式が取られますので、自動車の海外工場は最寄の部品工場へ発注したいということになります。自動車の海外工場が輸入に頼る場合、調達方法はおおむね以下の3つになります。

  • 1.自社の日本法人から送ってもらう(KD)
  • 2.自社が直接海外の部品メーカーから輸入する
  • 3.自社が取引のある現地部品メーカーや商社を通じて輸入されたものを購入する(パススルー)

自動車には多種多様な部品が使われるため、それを支えるサプライチェーン網が不可欠になります。それ自体は他の業種でも共通しているのですが、その数と数量が多いうえ、納入に特殊な条件がつくので、このように自動車メーカーの海外進出にあわせて部品メーカーも世界各地に展開するようになったという背景があります。

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