SN材の特徴と規格、成分など|建築構造用圧延鋼材の種類

2013年10月7日更新

SN材は、JISでは5種類が規定されており、建築物、建造物の構造材料としての使用が想定されている為、耐震性や溶接性についての指標が組み込まれており、破壊されるまでの変形能力、炭素当量、溶接割れ感受性、耐衝撃性を見るためのパラメータが細かく設定されています。以前はSS材に建材としての耐震性を見るためのパラメータが組み込まれていましたが、建造物用としてのSN材が登場すると、そうしたパラメータはSS材から除外されています。

SN材は鋼板、鋼帯、形鋼、平鋼の4パターン形状
SN材の種類 厚み、寸法の範囲
SN400A 6mm以上100mm以下
SN400B 6mm以上100mm以下
SN400C 16mm以上100mm以下
SN490B 6mm以上100mm以下
SN490C 16mm以上100mm以下

建築用途では、SS材、SN材、SM材などが使われ、これらが併用されることもありますが、SN材はこの中でも耐震・溶接についての規定と、寸法精度が高くなっているため、建材として優れた性質をもつ規格材となっています。ちなみに、SN材の鋼板やH形鋼におけるマイナス側の許容差は、すべての寸法でSS材等よりも厳しい0.3mmと設定されています。

溶接性については、これに大きく影響する炭素当量のほか、溶接割れ感受性、成分としては不純物元素であるリン、硫黄の量を低く規定してあり、鉄骨造建築物などで使われている一般的な溶接で、溶接欠陥の発生を防止できるような規格構成になっています。

SN400にはA種、B種、C種の三種類、SN490にはB種、C種の二種類が規定されており、材料記号の末尾にUTがついているのは(SN400B-UTなど)、超音波探傷試験を行った鋼板、平鋼を意味しています。B種、C種は、ガイドライン鋼材と呼ばれる耐震建築溶接構造用鋼材の元ともなっているもので、これがSN材の主要材となります。

SN材の場合、末尾についているA、B、Cの記号は使用される部位(用途)を示しています。Aは溶接の無い補助用のもの、補助部材として使われることが想定された鋼種で、Bは主要構造部材や溶接のある構造部材として、Cは溶接だけでなく、厚さ方向特性も要求される部材に使われることが想定されています。

成分については、炭素量のほか、鋼材の強度面に影響するPやSの値が低くコントロールされています。また、厚さによって炭素量の規定が異なるという特徴があります。

SN材に規定されている溶接性を見るためのパラメータ

これら末尾にBかCの記号がついているものは、溶接を伴う主要部材への使用が想定されている為、炭素当量についての規定があります。また溶接割れ感受性組成についても規定されています。

炭素当量と溶接割れ感受性組成の計算式
炭素当量(%) C+Mn/6+Si/24+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14
溶接割れ感受性組成(%) C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B

但し、熱加工制御を行った鋼材についてはこれらは適用されません。

炭素当量と溶接割れ感受性組成
鋼材の種類 溶接割れ感受性組成 厚さ
40mm以下 40mmを超え100mm以下
SN400B 0.26以下 0.36以下 0.36以下
SN400C
SN490B 0.29以下 0.44以下 0.46以下
SN490C

熱加工制御を行った場合についての炭素当量、溶接割れ感受性組成についてはSN490BとSN490Cについてのみ規定されています。

SN490Bの炭素当量と溶接割れ感受性組成
鋼材の種類 厚さ 炭素当量 溶接割れ感受性組成
SN490B 50mm以下 0.38以下 0.24以下
50mmを超え100mm以下 0.40以下 0.26以下
SN490Cの炭素当量と溶接割れ感受性組成
鋼材の種類 厚さ 炭素当量 溶接割れ感受性組成
SN490C 50mm以下 0.38以下 0.24以下
50mmを超え100mm以下 0.40以下 0.26以下

SS400とSN400の違い

SN材は建築用の構造材ですが、SS400に代表される一般用構造材のSS材も建材用途としてよく使われます。

SS400とSN400の違いとしては、SS400は一般構造材としての利用が想定されており、溶接性を見るための炭素当量や、炭素含有量についての規定がありません。SS400の成分規定は、リンと硫黄のみとなります。このため、主要構造部材として使うには不安が残ります。

SN400は補助材として使われることが想定されている弱めのSN400Aであっても、鋼材の性能を大きく左右する炭素量の上限が設定されており、また板厚の公差(許容差)についても規格上に規定されているため、建築などの安全性や精度の求められる用途に向いています。

元来、建築の基準では降伏比が一定以上にならないよう、つまり低降伏比についての基準が設けられていますが、これは降伏比が一定以上にならないようにすると、地震などが起きた際に、鋼材が折れる前に変形する為、ある程度のエネルギー吸収が可能となり、想定外の破損や崩壊の危険性が減少するからにほかなりません。

SN材の末尾にCとついているC種には耐ラメラテア性能と呼ばれる、いわゆる厚さ方向の特性があります。B種と比べて単に成分上の違いだけでなく、厳格な製造管理が求められる鋼材です。このタイプのSN材は、厚さ方向における割れの起きる可能性はB種よりも低くなります。

ラメラテアとは鋼材同士を溶接した箇所、T継手や十字継手などの箇所で、板厚方向に引張応力がかかった際に、板の表面に平行な「亀裂」が入ってしまう現象です。板厚方向に引っ張る力がかかる用途では、この現象の発生により構造物の崩壊にもつながります。大型の部材でこうした力がかかるものについては、耐ラメラテア性能を持つ鋼材を用いる必要があります。

SN材の熱処理記号

SN400Bなどの末尾についている、TやTMCといった記号には以下のような熱処理を意味しています。

SN材の熱処理記号
N 鋼材に焼きならしを行った場合
T 鋼材に焼戻しを行った場合
TMC 鋼材に熱加工制御を行った場合

「JIS G 3136 建築構造用圧延鋼材」に規定のある材料記号

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