耐熱鋼、SCHの種類と成分、機械的性質、耐熱温度|耐熱鋳物のJISとISO対照表

2013年7月1日更新

SCHではじまる記号は、耐熱鋼の鋳造品であることを示す材料記号です。高温環境では、常温で強度のある材料も大幅に物性が低下したり、もろくなったりします。様々な工業材料の中でも金属はセラミックスほどではないにしろ比較的熱には強い材料と言えますが、それでも600℃を超える温度になると使うことができる鋼材は限られてきます。

耐熱鋼はその名のとおり、こうした高温下で使われることが想定された材料で、JISで規格にもなっています。この規格は、耐熱鋼と耐熱合金の鋳物材料について規定したものです。

実用上は、JISに存在しない各メーカー独自の耐熱鋼もあり、用途によっては活躍しています。耐熱鋼の名称がつくものは、通常、650℃以上の環境下で使われます。熱に強い部類である鉄鋼材料の中でも、ステンレス鋼が概ね480℃以下で使われることを考えると、それよりもさらに耐熱性に特化した鋼材であると言えます。こうした特性を引き出すため、耐熱鋼の成分やステンレスよりもクロムやニッケルといった成分が多く、炭素含有比率も高めになっています。

ただ、耐熱鋼もどのような温度であっても万能というわけではなく、高温での強度の低下や脆化(もろくなる)の度合いが比較的緩やかであるということであって、劣化や強度低下が起きないわけではありません。それでも繰り返しの加熱に耐えられる温度が他の鋼材に比べると高いといえます。高いものでは1100℃以下であれば耐熱性を発揮し続けるもの、1000℃以下のもの、750℃以下のもの等いずれも高温での使用が想定されています。

鋳鋼品であるSCH材が通常の耐熱鋼と違う点といえば、そのすべてのグレードで少量のモリブデンが成分上あってもよいというもので、この元素は高温での金属結晶粒の粗大化を防ぐ効果を持つほか、高温での軟化抵抗に寄与します。

耐熱鋼、耐熱合金におけるJIS、ISO、ASTMの鋼種の対応表
JISにおける耐熱鋼 ISOにおける耐熱鋼 ASTMにおける耐熱鋼
SCH1 - -
SCH1X GX40CrSi13 -
SCH2 - HC
SCH2X1 GX40CrSi24 HC
SCH2X2 GX40CrSi28 HC
SCH3 - -
SCH4 GX30CrSi7 -
SCH5 GX40CrSi17 -
SCH6 GX130CrSi29 -
SCH11 - HD
SCH11X GX40CrNiSi27-4 HD
SCH12 - HF
SCH12X GX40CrNiSi22-10 HF
SCH13 - HH
SCH13A - HHtypeII
SCH13X GX40CrNiSi25-12 HHtypeII
SCH15 - HT
SCH15X GX40NiCrSi35-17 HT
SCH16 - HT30
SCH17 - HE
SCH18 - HI
SCH19 - HN
SCH20 - HU
SCH20X GX40NiCrSi38-19 HU
SCH20XNb GX40NiCrSiNb38-19 -
SCH21 - HK30
SCH22 - HK40
SCH22X GX40CrNiSi25-20 HK40
SCH23 - HL
SCH24 - HP
SCH24X GX40NiCrSi35-26 HP
SCH24XNb GX40NiCrSiNb35-26 HP
SCH31 GX25CrNiSi8-9 -
SCH32 GX25CrNiSi20-14 -
SCH33 GX40CrNiSiNb24-24 -
SCH34 GX10NiCrNb31-20 CT15C
SCH41 GX40NiCrCo20-20-20 -
SCH42 GX45NiCrWSi48-28-5 -
SCH43 GX10NiCrNb50-50 50Cr-50Ni-Nb
SCH44 GX50NiCrSi52-19 -
SCH45 GX50NiCr65-15 HX
SCH46 GX45NiCrCoWSi35-25-15-5 -
SCH47 GX30CoCr50-28 -

「JIS G 5122 耐熱鋼及び耐熱合金鋳造品」に規定のある材料記号

スポンサーリンク

>このページ「耐熱鋼、SCHの種類と成分、機械的性質、耐熱温度|耐熱鋳物のJISとISO対照表」の先頭へ

加工材料の性質と特徴(目次)へ戻る

耐熱鋼、SCHの種類と成分、機械的性質、耐熱温度|耐熱鋳物のJISとISO対照表の関連記事とリンク

耐熱鋼、SUHの種類と用途、成分、耐熱温度など
金属の低温脆性
高温高圧用鋳鋼品|SCPH材の特性、成分、材質、比重、機械的性質の規格
SCS(ステンレス鋳鋼品)の種類と材質、成分、規格
アルミニウム合金鋳物の種類の一覧
アルミダイカスト(ADC材)の成分と種類、特徴|材質、比重、機械的性質など
銅合金鋳物、鋳造品の用途、成分、種類、記号について
鍛造と鋳造の違い
鋳造と鍛造の使い分け
炭素鋼鋳鋼品(SC材)の用途、機械的性質、成分の一覧
鋼、鉄、鋳鉄はそれぞれ何が違うか
鉄鋼、鉄、炭素鋼、ステンレス、鋳鉄、超硬の熱膨張係数
金属の熱伝導率の一覧表
鉄鋼材料、鉄、炭素鋼、工具鋼の比重
鉄鋼、炭素鋼、鋳鉄、純鉄、ステンレスの熱伝導率
鉄鋼、鉄、炭素鋼、ステンレス、ハイスの比熱
鉄鋼、鉄、炭素鋼、ステンレスの電気抵抗
金属単体の比重、密度の一覧表
金属の融点、沸点の一覧表
金属の熱伝導率の一覧表
金属材料の硬度の一覧と比較
鉄鋼材料の種類
炭素鋼と合金鋼の違いと使い分け
合金元素の果たす役割
鉄鋼、炭素鋼、合金鋼の焼入れ深さ
焼入れ性とは

砥石からはじまり、工業技術や工具、材料等の情報を掲載しています。製造、生産技術、設備技術、金型技術、試作、実験、製品開発、設計、環境管理、安全、品質管理、営業、貿易、購買調達、資材、生産管理、物流、経理など製造業に関わりのあるさまざまな仕事や調べものの一助になれば幸いです。

このサイトについて

研削・研磨に関わる情報から、被削材となる鉄鋼やセラミックス、樹脂に至るまで主として製造業における各分野の職種で必要とされる情報を集め、提供しています。「専門的でわかりにくい」といわれる砥石や工業の世界。わかりやすく役に立つ情報掲載を心がけています。砥石選びや研削研磨でお困りのときに役立てていただければ幸いですが、工業系の分野で「こんな情報がほしい」などのリクエストがありましたら検討致しますのでご連絡ください。toishi.info@管理人

ダイヤモンド砥石のリンク集

研磨や研削だけでなく、製造業やものづくりに広く関わりのあるリンクを集めています。工業分野で必要とされる加工技術や材料に関する知識、事業運営に必要な知識には驚くほど共通項があります。研削・切削液、研削盤、砥石メーカー各社のサイトから工業分野や消費財ごとのメーカーをリンクしてまとめています。

研磨、研削、砥石リンク集