自動車部品の廃棄方法

2022年5月2日更新

自動車部品の多くは金属(鉄鋼、アルミ合金等)、樹脂(プラスチック、ゴム)が材料のものが多く、その廃棄方法は材質と大きさによって異なりますが、共通しているのはほとんどが家庭ごみとしては出すことができない産業廃棄物になるという点です。サスペンション、マフラーや内装部品、シート等をはじめ、ライトバルブ、点火プラグ、冷却水、ブレーキパッド、油、不凍液、バッテリー等を自分で交換される方もいるかと思いますが、以下に自動車部品の廃棄について詳細を見ていきます。

少量のねじやボルトであれば自治体によっては不燃ごみで出せる場合や、掌サイズのマフラーハンガー(ゴムのみで製造)を可燃ごみに出せる場合、プラスチック部品を資源ごみで出せる場合もありますが(粗大ごみにならない範囲のサイズ)、自動車部品というカテゴリーで受け付けできないとはっきり明記している自治体もあります。この場合は材質や大きさを問わず、自動車の部品は引き取りできないということになりますので捨てられません。家庭ごみとして出せるかは事前にウェブサイトや自治体へ問い合わせて確認しておく必要があります。

製造元ではどうやって廃棄しているか

自動車部品工場で不良品や膠着品、売れずに余剰品となった部品を廃棄するというケースは実はかなり多く、規模にもよりますがリサイクルや廃棄窓口を担う専門の部署を設けている自動車部品メーカーが多いです。

こうした場合、自動車部品メーカーは複数の産業廃棄物業者と契約しており、材質や荷量によって依頼する業者を分けています。

部品がリサイクル可能な有価物であった場合は、分別して産廃業者へ引き渡す形になります。これは業者で買い取りが可能なので、廃棄する際にいくばくか費用を回収することができます。通常この買い取りレートは、材料市況の影響を受け、例えば鉄ならばキロ当たりいくら、という換算表に基づき、支払が行われます。そうではないもの、逆に回収費用がかかるものについてはキロあたりや1台あたりで産業廃棄物処理業者へ支払います。

したがって、工場内やそれに類する設備に捨てるものを集め、材質別にわけてコンテナ等に入れて置き、引き渡します。難しいのはほとんどの部品は単一の材質ではないという点で、各都道府県別の産廃業者によってもどこまでが有価物として引き取り可能か基準が異なる場合があります。例えば鉄とゴムの組み合わせはOKという場合とNGという場合等です。エンジンマウント等の防振系・NVH系の部品は金属部品とゴムや樹脂の複合材料のものが多いのが特徴です。

箱に入ってしまっているものは箱から出して製品だけの状態にするのでかなり人手が必要です。いったん回収用の鉄コンテナや鉄箱に移してしまえば大型のリフトで丸ごと移動させられますが、そこに入れるまでは人の目で見て分別が必要となるため、廃棄量の多い工場ではなかなか骨の折れる作業となります。

なお、社内的にはいかなる事由でも自社の部品在庫を廃棄するというのは自社の資産を処分することと同義なので、稟議書や伺書といった社内決裁を通してから捨てる必要があります。

なぜ部品を捨てることになるのか

製造元である部品メーカーでなぜ自動車部品を捨てるのかについて少し背景を見ていきます。

自動車メーカーと自動車部品メーカーとの間は、通常EDIやかんばんといった方法での注文情報のやり取りがなされ、1日分必要な分だけを発注されるケースと、1週間分発注されるケース等メーカーや部品の種類でも異なります。ただし、この注文を受けてから部品を作ったのではとても納期に間に合いませんので、注文とは別に自動車メーカーから提供されている内示情報に基づいてある程度の準備を事前にしている部品メーカーが多いです。

そうなると、内示と確定の発注情報に差異が出ることがあり、その差が出た時から注文が急減し、いつまでも残って打ち切り時に膠着在庫となるという場合があります。

また自動車業界の場合、量産中は非常に大量の部品の注文があるため、常時生産と出荷があるのが自動車部品の取引形態の特徴ですが、量産が終わると補修部品や補給部品のみの注文となり、月に数万個の注文があったものが、数個になってしまうということもあります。量産が終了することを正式に通達する打ち切り情報は正確なものもありますが、自動車メーカーによっては通知タイミングが遅く、すでに部品メーカーが材料や部品を準備していることがあります。この差異によっても部品の膠着は発生します。

こうして一定期間流動しなかった在庫や販売見込みがなくなってしまった在庫は、倉庫の場所を浪費して新しい部品の置き場を奪うとともに、保管費だけかかってしまうので、不動在庫となったものは積極的に廃棄していく必要があります。

上記事情から製造元である自動車部品メーカーでも捨てる機会が多いという背景があり、産業廃棄物処理業者でも自動車部品の廃棄や回収を多数手がけている、ということになります。

廃棄証明を求められることがある

業務用として自動車部品を廃棄する場合、その損害をどこにも請求できずに自社で被る必要がある場合と、自動車メーカーへの申請によって費用回収ができる場合とがあります。

これは上述の膠着した理由によります。量産での車両生産の打ち切り直前に突発的に注文がキャンセルになったり、直前の内示に比べて注文が大きく下がって大量に部品が余るようなケースでは、自動車メーカー側で部品メーカーの補償申請内容によっては手当てを行うことがあります。

部品の生産は材料の生産からさかのぼっていくとかなりのリードタイムが掛かるものもあり、これは一社だけの話というのではなく各部品業界としてそのくらいのリードタイムがないと慣習上製造自体ができないという目安のようなものが品目ごとに存在します。

それに則ってどこまで膠着した部品費用を補償するかというのは自動車メーカーの方針次第のところはありますが、慣習上3か月分の内示を三発内示という形で自動車メーカーから提供を受けるので、その範囲内ということが大半ですが、補償するかどうかは各メーカーごとに違い、その基準も公にはしていません。

こうした制度のなかで自動車メーカーから膠着した自動車部品の補償を受けることが可能になった場合、部品の廃棄証明書や廃却証明書といったものを求められます。その部品を廃棄するわけですから、本当に廃棄したのかどうか、勝手に再利用されていないか、あるはずのないものを補償名目で申請していないかの確認が必要というわけです。場合によっては自動車メーカー側から現物確認を行うこともあります。

自動車部品の廃棄時にはこの証明書を産業廃棄物業者に確認・押印してもらうことが多々あり、その際は重量の計量を行って証明書に記載することもあります。

有価物としてリサイクルの際に部品メーカーへ費用還元がある場合はその分の費用は差し引かれて自動車メーカーから支払いが行われることになります。

自分で廃棄するには

一方で、自動車部品の製造元のような産業廃棄物業者と常時やり取りのない環境の場合、特に個人でパーツを取り替えたりした場合、古い部品をどのように捨てればよいかについて述べていきます。

冒頭で述べた通り、自動車部品は家庭ごみではなく、産業廃棄物に分類されるので、ほとんどの自治体は普通のゴミとして出すことができません。材質や大きさによって例外的に可とされた場合は、自治体の定めた方法と収集方法に従い、所定の場所へゴミ出しして置く形になります。

まず、自動車部品を個人で廃棄する方法としては以下の方法を検討することになります。

  • 中古部品として転売できないか検討する
  • 産業廃棄物処理業者や廃品回収業者に自ら持ち込む
  • 購入した自動車販売店やパーツ量販店に問い合わせて引き取り可能か確認し持ち込む
  • カーショップやガソリンスタンドで引き取りできるか確認し持ち込む
  • 新しい部品へ交換を依頼した際、古い部品の廃棄を依頼する

大半は自動車部品を以下のような場所に持ち込んで引き取ってもらうという形になり、その際こちらから引き取り費用を支払う場合と、逆に買い取ってもらえる場合とがあります。

  • 産業廃棄物・廃品回収業者(持ち込み可のところ)
  • 自動車販売店(自車を購入したところ)
  • バッテリー販売店
  • カーパーツ・カー用品店
  • ガソリンスタンド(普段、車検・整備等で付き合いがあると聞きやすい)
  • 自動車整備工場(普段、車検等で付き合いがあると聞きやすい)

中古部品として転売できないか検討する

状態の良いものや希少なもの、流通量の多いものはそこそこの値段で取引されていることもあり、処分を早くしたいのであれば価格を下げて売り切ってしまうという方法もあります。そもそも廃棄する必要が無くなるので最も経済的でエコでもあります。

自分では不要と思っていても、意外に必要としている人はいたり、タダ同然の価格にすると輸送費だけで購入してもよいという人が現れることもあります。有価物として買い取りできないものであれば、捨てる際の廃棄費用を考えれば、これでもお得かもしれません。

産業廃棄物処理業者や廃品回収業者に自ら持ち込む

この方法が王道ともいえる方法です。鉄鋼系のパーツであれば、鉄くずの廃品回収を請け負っているところへ内容を伝えて持ち込みの査定をしてもらえるか確認して持ち込むのが確実です。キロあたりの金額で買取価格は提示されており、計量してそれに基づき支払われます。金属相場が高い時には買取も高額になります。

マフラー、アルミホイール、スチールホイール、サスペンション、ボディーパーツ等金属主体の部品は今も車のなかでは主要部品といえます。使われている材質によって買取価格も異なります。アルミや銅であれば、鉄よりも高額買取になり、レアメタルが使われている場合も同様です。

自動車部品の廃棄時の引き取り依頼候補
自動車部品の種別 候補
エンジン 金属メイン。産業廃棄物処理業者、廃品回収業者
エンジンマウント等 金属とゴムの複合ですが、金属の廃品回収業者で引き取りできる場合も。
ボデー 産業廃棄物処理業者、廃品回収業者
トランスミッション 産業廃棄物処理業者、廃品回収業者
サスペンション 産業廃棄物処理業者、廃品回収業者
マフラー 産業廃棄物処理業者、廃品回収業者
ホイール 産業廃棄物処理業者、廃品回収業者
ボルト・ナット類 産業廃棄物処理業者、廃品回収業者、少量の場合家庭ごみで可能なことも。自治体へ確認必要。
 

金属と樹脂などの複合部品の場合は、逆に費用をとられることもありますが、持ち込みの場合は金額を確認して納得できなければ持ち帰ればよいので気楽です。

不用品回収業者を家に呼ぶと、悪質なケースでは高額の回収費用を要求されたり、他の必要品まで回収する、回収したものを不法投棄するという事件が報道されたことがあったかと思いますが、なんでも引き取るという業者や便利屋的な業者への依頼には注意が必要で、依頼先についてよく知らないという場合は避けたほうが無難です。呼んでしまうと見積もりだけで費用をとる、と後から言い出すトラブルもあるので自宅に引き取り依頼する場合は条件をよくよく詰めてから依頼するとよいでしょう。

購入した自動車販売店やパーツ量販店に問い合わせて引き取り可能か確認し持ち込む

自動車を新車・中古で購入した先が近くにあるならばそうした販売チャネルに相談する方法や、バッテリーの場合は専門の販売店や購入先に相談するのも一つの方法です。取り換えの際に古いものを引き取ってもらうという場合は無償でやってくれることが多いのですが、不要パーツだけの引き取りの場合、費用を支払って処分を依頼する形になります。

ただ持ち込みになるので、価格設定は自宅への回収業者よりは安いといえます。普段やり取りのあるところがあればそこへ相談するのがよいでしょう。取引がある顧客という場合、廃部品や廃油の引き取りで優遇した扱いをしてもらえることもあります。

自動車部品の廃棄時の引き取り依頼候補
自動車部品の種別 候補
タイヤ 自動車販売店、タイヤ専門店、カーパーツの専門店・量販店、ガソリンスタンド、自動車整備工場
ワイパーゴム タイヤに準じるが、自治体によっては家庭ゴミで出せる場合もある。
バッテリー バッテリー販売店、金属等の廃品回収業者
樹脂・プラスチック製のパーツ(内装、バンパー、エアロパーツ、テール等) 傷んでなければ転売できる場合も。自動車部品NGの指定が自治体にない場合、砕いて家庭ごみという方法もあるが、廃品回収業者等に持ち込みが原則。
廃油、エンジンオイル、不凍液等 廃油処理業者、自動車整備工場、引き取り可のカー用品店、ガソリンスタンド。廃油処理キットで処理して可燃ごみにできる場合もある。液の種類によって処理方法が異なるので注意。

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